米ダルトン・インベストメンツ(以下、ダルトン)から16日付で、株主総会で提案するフジ・メディア・ホールディングス(以下、フジ・メディアHD)の社外取締役候補の1人として名前に上がった、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長が、17日午後1時30分から記者会見を行いました。
北尾氏は、第3者委員会の報告書を読んで、「つくづく、僕は『堀江君に悪いことをしたな』と。僕の当時の20年前の(日枝フジテレビを擁護した)判断は、珍しく外れていた」と後悔の言葉を口にし、「日枝体制のもとで(経営)理念が消失した」と、強く日枝氏を非難。40年間不動の日枝体制を支えた「3000億円持合(株式)」を「ぶっ潰さないかん、日本のために」と怒り心頭でした。
冒頭、北尾氏は、急遽会見を開催した経緯と目的について、多くのメディアから取材要請が相次ぎ、自宅前に記者が集まるなど混乱が生じていたためと説明しました。
北尾氏「今日は、突然こういうカンファレンスを設けることにしたんですけど、まああんまりそのつもりもなかったんですけども。
あまりにも多くの方、メディアの方を中心に、インタビューの時間を取ってくれと(要望があった)。そして、家の前には、大体2人か3人か、いつも、いろんなところの記者さんがおられると。
これ、いつまでもご迷惑かけておくのも、あるいはこっちも迷惑かかるのかなと思って、じゃあもうまとめて、今現在の状況についてお話ししようと」。
以下、ほぼ40分に渡った北尾氏の会見での発言の主要論点を抜粋でお送りします。
・SBIグループのメディア戦略とフジテレビ問題
・ライブドア問題を振り返る
・オールドメディアへの信頼度低下、新しいメディア環境の誕生
・メディア・IT・金融の融合が進んでいる
・AIによる信頼性向上と偽情報対策
・フジ・メディアHDに対する提言 3つの改革「意識改革、人事・組織改革、ビジネスモデル改革」
・不動産部門を切り離し、メディアコンテンツ事業の割合を増やす
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<SBIグループのメディア戦略とフジテレビ問題>
北尾氏は、フジテレビ問題を契機に急にメディアに関わろうとしているのではなく、SBIグループでも、メディア事業への関与は以前から戦略的に進めていた、と説明しました。
北尾氏「私は、『メディアとIT企業の融合』を我がグループの大戦略として行っていくんだというお話をさせていただいている。それぐらい金融にとっても、ITにとっても、メディアというものが大事なものになってきていると。
そういう中で、奇しくも、今回、フジの問題が出てきて。
私としては、一応、中間報告書を見て、第三者委員会のですね、そしてもう、いや、もう少し動くかなと。これではフジメディアグループはガタガタになるだろうなと。
何とかしないといけないと。我々の事業と関連づけるということも考えていこうというようなことで」。
<ライブドア問題を振り返る>
北尾氏は、20年前のライブドア事件で、フジテレビの「ホワイトナイト」を果たした経験を振り返り、現在の状況と比較しました。
北尾氏「考えてみれば、20年前の私が、(フジテレビの)ホワイトナイトになった。
その時、対象は堀江(貴文)さんだったわけですけど。片方に村上(世彰)さん、僕、その奥にフジの当時の社長日枝(久)さんが、その奥におられるという状況だったわけですけれども。
そういう状況がまた、村上さんも随分(株式を)買われて、5%以上、3月末の時点でお持ちになり、さらにそこから買い進められているということですから、今12%近くお待ちになっているわけですね。
そして、堀江さんはネットでいろいろ発言されててと。
たまたま宇宙の打ち上げロケットの打ち上げで、ホリエモンさんとは、『日経新聞』に言わせれば『歴史的和解』ということで、私も和解をしておりました(※)。
そして、あの第三者委員会の報告書で、つくづく、僕は『堀江君に悪いことをしたな』と。僕の当時の20年前の(日枝フジテレビを擁護した)判断は、珍しく外れていた、と。
そういう中で、いよいよ本格的に動くことを決意したんです。
冒頭申し上げましたように、この激変するメディアの立ち位置の中で、新たなメディア環境が当然誕生している。そのメディア環境の中で、金融事業とITとを一体化させていくというのが、僕の構想だったんですね」。
(※)北尾吉孝SBIホールディングス会長兼社長と堀江貴文氏(インターステラテクノロジズ(株)創業者)は、過去に、フジテレビを傘下としたニッポン放送株の買収を巡って対立した経緯があったが、近年は宇宙事業を通じて協働する機会が増えている。具体的には、SBIが堀江氏らが創業したロケット開発ベンチャー、インターステラテクノロジズに出資。過去の対立を乗り越え、宇宙事業における連携を模索と伝えられる。
<オールドメディアへの信頼度低下、新しいメディア環境の誕生>
北尾氏は、2024年の大統領選挙で、新しいメディア環境が誕生し、いわゆる『オールドメディア』が後退し、マスメディアに対する信頼度が低下している、メディアのあり方の変化を指摘しました。
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北尾氏「例えば、この間、アメリカでの大統領選挙がね、『ウォール・ストリート・ジャーナル』によりますと、『新しいメディア環境が誕生し、政治的言論を支配していたテレビネットワークや新聞などの従来の報道機関の影響力が縮小』。さらに、『トランプ氏は、18から29歳の男性有権者の56%の支持を獲得した』とかですね。
あるいは日本でも、兵庫県知事の選挙や動画サイト(の影響)が30%。新聞テレビのそれぞれ24%を上回っていると。
いかに、こういう選挙世論の形成においてもSNSが大事になって、ソーシャルメディアというものが大事になってきたのかを物語っているわけですね。
これは、インターネットメディアには、主たる情報源としての地位を既に確立する、手軽にできるとか、情報源として欠かせないとか、情報の量が多い、情報に役立つ。圧倒的にテレビなんかを抜いて1位になった。
これね、ネットがもちろんまだちょっと信頼面では、新聞テレビの後塵を拝するという状況になってるけども、これは向上させればいいわけで、様々なAIのテクノロジーを使って、十分に向上できるというふうに思ってます。
あるいは、『マスメディアに対する信頼度は低下傾向』と。これを見ますと、この1年間におけるメディアの信頼が変化したか尋ねたところ、高くなったのは、インターネットは5.3%、一方低くなったのは民放テレビが13.9%、雑誌が12.4%と。
信頼度は、先ほどのデータでは、まだこっちの旧メディアの方が勝ってるっていうことだったんだけど、どんどんそれが落ちてきてる。
なぜかというと、偏った報道や既得権益の主張、権益の主張どおりの報道、こういうものに対して、一般の視聴者は、ヘッズアップ(警戒状態)なんです。そういう状況なんですね」。
北尾氏は、インターネットが、若者だけではなく、どんどん、「高齢者にも浸透している」と述べ、メディアの平均利用時間を見ると、インターネットメディアの平均利用時間が圧倒的に多くなっている、と付け加えました。
北尾氏「日本の総人口に近づくインターネットメディアの利用者数SNS利用者数は、2023年1億580万から28年には1億1360万人に増加すると言われてるわけですね。
10%以上の利用率(を誇る)のは、『LINE』(74.7%)や『YouTube』(65.4%)、『X』(55.9%)、旧『Twitter』ですね。それから『インスタグラム』(54.5%)等々、どんどん新しいものが出てきてるわけで」。
<メディア・IT・金融の融合が進んでいる>
続いて、北尾氏は、「アメリカで急速にメディア・IT・金融の融合が進んでいると、述べました。
北尾氏「アメリカで急速に進んでいるのは、今まではメディアとITだけの世界だと。僕も、初めはそういうふうに認識してた。しかし、それが大きく変わる。
いよいよ金融というものとも結びつくようになってきたと。それはメディア側の潮流、金融側の潮流、これがシェイクハンズできるような体制になってきたということですね。
デジタル金融とAI技術が、メディアと金融の接着剤としての役割を果たすようになってきている」。
北尾氏は、トランプ大統領が自らSNSメディア企業を立ち上げ、ファイナンシャルの領域にも利用していることや、イーロン・マスク氏が『X』を使ってトランプを支援したり、AI・金融を組み込んで、決済サービスの国境を越える「スーパーアプリ化」を進めていることをあげて、「僕も、早くうちもそれを作らないかんということで、躍起になって」いると述べました。
北尾氏は、メディア、IT、金融の三位一体モデルが新たな潮流になっていると、指摘しました。
<AIによる信頼性向上と偽情報対策>
北尾氏は、インターネット上の情報の信頼性を高めるために、偽情報の問題があるが、SNSとAIの統合によって、リアルタイムで話題になっている最新情報を取り上げたり、フェイク情報に引っかからないような仕組みを作っていくことができるだろう、と指摘しました。
北尾氏「御覧いただいたように、(インターネット上には)偽情報が結構あると。これをやっぱりAIを巧みに使って、フェイクに引っかからないような情報を提供するような仕組みを作らないかん。
(通常の)AI検索ではアクセスが難しい、(SNS上の)投稿からも、最新情報を収集できる」。
<フジ・メディアHDに対する提言 3つの改革>
北尾氏は、最後にフジ・メディアHDに対する提言として、意識改革、人事・組織改革、ビジネスモデル改革という「3つの改革が必要」だと訴えました。
北尾氏は、「この提言について、さっきもダルトンさん、ローゼンバーグと電話で話したんだけど」と、ダルトン側の合意を得ていることを明らかにした上で、3つの改革について説明しました。
北尾氏「そういったメディアの環境の激変の中で、これを踏まえたフジメディアホールディングの改革に向けた私の提言を。(中略)
これは、3つの改革が必要だと。これは私の経験にもとづいたもので。
例えば新生銀行をどうやって短期間で活性化していくかとか、そして、公的資金の3500億を返すか。もう1000億返しましたけれども、後の(残りの分も)できるだけ早く返すつもりです。まあ、20年に渡って1銭も返せなかった全債権、それを私は『やる』と言って、やってきた。
このフジについても、同じことです。私は、これで十分に立ち直ることができると。
まず、そのために一番大事なのは『意識改革』です。
この会社の再生とか。私ども地方銀行にも随分お金を入れて、潰れかけの地方銀行、随分再生してきた。一番大事なのは『経営理念』、そしてその理念をベースにした『ビジョン』、これがないといかん」。
北尾氏は、「経営学の父」ピーター・ドラッカーの言葉を引いて、日枝体制のもとで理念が消失した、「価値、使命、ビジョンの確立こそ最も重要である」と指摘しました。
北尾氏「ここで、価値とか使命とかというものが、日枝(体制の)40年以上にわたる政権の中で『消失している』と言わざるを得ない。
だから、価値、使命、ビジョンの確立こそ最も重要である。
FMH(フジ・メディア・ホールディングス)にとっても、正しい倫理的な価値観をベースにした、新たな企業文化を創造すること。これがまず必須だというふうに私は思ってます」。
続いて、北尾氏は、人事・組織改革に言及し、第3者委員会調査報告書が発表される前に、「FMHが発表した役員体制では不十分」だと指摘しました。「茂木(友三郎 キッコーマン取締役名誉会長取締役会議長)さんや塩谷(能成 東宝代表取締役会長)さん、斉藤(清人 文化放送代表取締役社長)氏ら、『オールドボーイズクラブ』」が残っていては、「何も変わりません」と指摘しました。
北尾氏は、ダルトンが6月の株主総会で提案すると発表した12名の取締役候補について、まだダルトン側に「十分な私自身の考え方を話していない」と断りつつ、ダルトン側から「取締役候補になってくれということで、私もそれについて応諾をしました」と候補になった経緯を説明しました。
ダルトンが提案した12名(※)は、まだ今後動く可能性があるようです。
北尾氏「これ(人事)を変えなきゃ、誰も変革が起きるとは思わない。
私も、ここの株主になってる企業のトップと、何人か会いました。みんなそう言ってる。だから、この新しい役員候補を発表しても、スポンサーが戻りますという人、ほとんどいないわけです。
これ、スポンサーが戻らなきゃ、どうにもならんでしょと。
だから、世の中の人が、いや、大きな変革があるというような期待感が持てるようにしないと、スポンサーシップもついてこないし、他の株主さんも投票の時に、賛意を表明しますとか、そういうことにはならないと思います」。
北尾氏は、あの第3者委員会の報告書を読んだら、フジ・メディア・ホールディングスが発表した新体制に賛成する企業はいないだろう、第3者委員会に指摘された人物が経営陣に残るのは理解できない、「その会社の経営者の見識が問われますよ」と批判しました。
北尾氏は、中居正広氏による性暴力事件に深く関与した、フジテレビ編成局の人事についても、疑問を呈しました。
北尾氏「組織改革、これも相当やらないかなというふうに印象を持ってます。
何であそこ(フジテレビ)は、編成局、制作編成をほとんど重視して、人もそこの人が社長に上がると、ずっとやってきたかと。本当にこの編成という重要な仕事をやれるに足る人格、知識、教養、そういうものを身につけた人がやっているのか。これも吟味しないといけないと思う。
もっと編成と制作のバランスが取れた体制へ回帰が必要かなという気がしてます」。
<不動産部門を切り離し、メディアコンテンツ事業の割合を増やす>
北尾氏は、フジメディアHDの営業利益に占めるメディアコンテンツ事業の割合が、動産その他に比べて少なすぎる、と指摘し、不動産部門との「分割」をすべきだと主張しました。
北尾氏「営業利益に占めるメディアコンテンツ事業の割合なんですけども、メディアコンテンツの割合が、不動産その他に比べてフジメディアは少ないんです。
本業なんだ? と。なんで本業重視で、本業の方が上回る体制作れないの? と。(中略)
やっぱり、メディアコンテンツ事業の利益(が、全体の利益)のほとんどを占める体制に持ってこないといけない。
不動産に依存して、そこから利益を得るような、これは放送法のもとで認められた公的な放送機関として、僕は間違いだと思う。不動産というのは分けないか。これはまさに、ダルトンさんも言われている」。
北尾氏は「3000億円ともいわれる持合(株式)」によって、40年間不動の体制が作られた、「こういう持ち合いっていうのは、ぶっ潰さないかん、日本のために」「こんなことをしていたら経営がまともにならない」と、持合株式の解消を強く訴えました。