「『壁を作らない』ということが、私は一番大事で、『どう乗り越えるか』とか、『どうぶち破るか』じゃなくて、最初から壁を作らないってことが一番いいんじゃないかなと思います」加藤庸子医師~4.6 女性医師デー・第2回記念イベント 2025.4.6

記事公開日:2025.5.6取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

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 2025年4月6日午後1時30分より、東京都千代田区の主婦会館プラザエフにて、公益社団法人日本女医会の主催により、女性医師デー・第2回記念イベント講演会「女性医師に壁はあるのか?」が開催された。

 岡山大学泌尿器科の小林知子医師、ばんたね病院脳神経外科の加藤庸子医師が、それぞれの立場から登壇し、講演を行なった。

 日本女医会は、2022年4月に創立120周年を迎え、女性医師のさらなる活躍を支援する目的で、日本で初めて医師国家資格を取得した女性、荻野吟子の誕生日である4月4日を「日本女性医師デー」として、日本記念日協会に登録・認定した。

 IWJは、2024年4月7日に開催された、記念すべき第1回目のイベントを取材している。

 イベント冒頭、公益社団法人・日本女医会会長の前田佳子氏があいさつの中で、「『女性医師デー』をきっかけに、これまで以上に、女性医師の活躍を応援して欲しい」と自身の思いを述べた。

 小林医師は、「女性医師に壁はあるのか~健やかなキャリア形成を目指して」と題して講演を行なった。

 小林医師は、時に「記憶がないくらい忙しかった」という、自身の医師としての半生を振り返りつつ、「女性医師の壁の大部分は、社会に起因する」と述べ、日常生活において、女性医師に強いられがちな、性別役割分担意識や、男性優位、そしてライフワークバランスなどの通念について解説した。

 その上で、小林医師は、そうした通念が女性医師にもたらすものとして、「インポスター症候群(周囲から高い評価を受けているにもかかわらず、自分自身を過小評価し、自己不信感や不安を抱えてしまう心理状態)」を紹介した。

 小林医師は、女性医師がインポスター症候群のような苦境から脱するためには、「一人で抱え込まずに共有すること」、「必要なときには手をつなぐこと」、そして「後輩の背中を押してあげること」が重要だとし、最後に、漫画「ルパン三世」の峰不二子の以下の言葉を、会場の参加者と共有した。

 「つまずいて転んだのは、誰かのせいかもしれない。けど、立ち上がらないのは誰のせいでもないわ」。

 続いて、加藤庸子医師が、「脳神経外科医を目指してきて 女性医師に壁はあるのか」と題した講演を行なった。

 加藤医師は、「超高齢化」や「人口の減少」など、現在の日本社会が抱える問題、自身のこれまでの仕事のこと、恩師のこと、あるいは外科手術の技術的進歩といった非常にテクニカルなテーマについて、縦横無尽に語り、講演の後段で、「脳神経外科」の現状と将来について、次のように述べた。

加藤医師「手術計画や、術中ナビゲーションとか、術後のモニタリングとか、リハビリテーションまで、AIが入ってきています。

 だから、時間が短くても、ちゃんとした治療ができるということで、これは、『働き方改革』の追い風、女性にとっても、恐らく、男性にとってもいいかな、というふうに思いますけどね。

 ロボット手術ですよね。AR(『Augmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ)』『拡張現実』)とか、あるいはVR(『Virtual Reality(ヴァーチャル・リアリティ)』『仮想現実』)ですね。それから、遺伝子・分子データにもとづいた個別化医療。これも、どこでもやっているかと思いますけども。

 ただ、課題としては、倫理的な問題とか、いろいろと課題もまだ残されています。これは外科ですから、今、外科にも医学生が入らないですね。もう、そんな割に合わないような科には入りたくない。お金はもらえないし、訴訟と背中合わせだと。

 ただし、海外と比べると、この日本の外科の治療成績がとてもいいです。すばらしく、例えば臓器移植の定着率ですね、これは恐らく世界一だと思います。

 それから、女性患者への安心感とか、コミュニケーション能力とかですね、協調性とか、多様性の尊重ですね。それから、柔軟な勤務体系の導入ですね。(中略)

 外科の将来ということになりますと、今お話ししたように、今、AIがかなりのエリアを占めてくるということで、それで精度が上がりますし、チーム医療の強化、個別化医療で、患者ごとの最適化の治療ですね。多職種連携。

 そして、もう、治療から予防ですね。病気じゃなくて、未病のうちに見つけるという、検診でしょうか。検診が、今非常に大事かなというふうに思います。

 まあ、そういうふうに変わってきているかなと思います。外科の未来は、技術の支援とともに、多様性を取り入れることで、先ほどお話ししたようなことですよね」

 加藤医師は、イベントのタイトル「女性医師に壁はあるのか?」について、講演の後段で次のように、自身の心構え、考えを述べた。

加藤医師「『壁を作らない』ということが、私は一番大事で、『どう乗り越えるか』とか、『どうぶち破るか』じゃなくて、最初から壁を作らないことが、一番いいんじゃないかなって思います。(中略)

 どんな仕事をしているにしても、絶対的な自信を持つということは、これは医者としての大きな自信につながります。そこが崩れると、『自分はいったい何をやってんだろう』ということになっちゃうんですよね。

 ただ、そういう風になってきちゃうと、心が揺らいで、『男女の差』だとか、あるいは『ジェンダー・ギャップ』とか、いろんなこと考えるようにきっとなって、『なんで私は昇進できないんだろう』とか、そんなことはどうでもいい話で…。

 自分のやってることに、絶大なる自信を持って、皆さんに奉仕できる、そういうものを持ってほしいと思うんですね」

 講演の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2025年4月6日(日)13:30~16:00
  • 場所 主婦会館プラザエフ 3F ソレイユ(東京都千代田区)
  • 主催 日本女医会(詳細

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