関東大震災での日本の官憲や民衆による朝鮮人虐殺から100年にあわせて制作された、韓国のドキュメンタリー映画『1923 関東大虐殺』の特別試写と、製作者によるトークディスカッションが、2024年5月13日、東京・参議院議員会館で行われた。
主催は映画を製作した韓国のドキュメンタリー映像制作会社、INDECOM。IWJでは、試写会前後の出演者等の挨拶とトークディスカッションを収録した。
映画は、日韓での膨大な取材と、日本や米国等で発掘した多数の歴史的資料で構成。各地で虐殺の実態を追及する市民団体や研究者、鳩山由紀夫元総理等の政治家、犠牲者の親族等の証言、防衛省等が保管する政府文書、事件を伝える当時の米欧の新聞記事等を織り交ぜながら、事件の実相に迫っていく。
数えきれないほどの情報が幾重にも積み重ねられ、見る者は否応なく、当時起こった恐るべき出来事に直面していくことになる。
映画には、IWJが提供した、朝鮮人虐殺事件はじめ朝鮮問題の研究で知られる山田昭次立教大学名誉教授の映像も、重要なパーツとして使用されている。映画は、今後上映が進められていくとのことなので、ぜひ御覧いただきたい。
試写会に先立ち、以下の映画の出演者等が、映画の内容に直結する挨拶を行った。
立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員、社民党党首の福島瑞穂参議院議員、関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会代表の山本すみ子氏、一般社団法人ほうせんかの西崎雅夫氏、有田芳生元参議院議員、日朝協会埼玉県連合会会長の関原正裕氏。
続いて、映画を製作したキム・テヨン監督、チェ・ギュソク共同監督、米国等での資料発掘を担ったリー・ジンヒ教授(米イースタン・イリノイ大学史学科)が紹介され、代表してキム監督が挨拶を行った。
試写会後には、上記の映画製作者に、日本でのプロデューサー役を務めたチョウ・ファヘン氏とファン・ヨンスン氏が加わった5人によるトークディスカッションが行われた。
キム監督は「初めて日本に取材に来た時、感動した。日本の市民の方々が、同じ民族でもない、朝鮮の民族のために、44年前から、深い思いを持って、追悼していただいたことに、とても驚きがあった」と思いを語った。
そして、「取材を進めていくほど、皆さんへの尊敬の気持ちが深くなって、現場で涙を流したこともたくさんある」と語り、頬をぬぐった。
前日、山田昭次立教大名誉教授に、映画完成の報告に訪れたというプロデューサーのチョウ氏は、「歴史から学ぶとは、そこから教訓をもらうということ」「我々がこれから真実を共有し、学びながら話し合いをすることで、日韓関係は、もっと前に進められる」という山田氏の言葉を紹介した。
続いて、聴衆との質疑応答が行われ、「100年経っても、日本政府の態度はあまり変わらない。映画で日本人に何を伝えたいのか?」等の興味深い質問が出された。
そして、虐殺現場を英国海軍の軍人が撮影したとされる写真についてなど、製作の過程で初めて明らかになった事実が語られた。
詳しくは、挨拶とトークを収録した全編動画を御覧いただきたい。