岸田文雄総理が、2024年4月10日に米国でバイデン大統領と日米首脳会談を行い、その後に出された共同声明に「米軍と自衛隊の相互運用性強化のため、それぞれの指揮・統制枠組みを向上させること」が明記された。
- 日米首脳会談(外務省、2024年4月10日)
今後、自衛隊と在日米軍が部隊運用レベルで連携し、米軍の指揮下で、「日米一体化」を進めていくことになる。
2024年4月16日には、自衛隊の陸海空の各部隊を一元的に指揮する統合作戦司令部の創設を柱とした、防衛省設置法などの改正案が、衆議院で可決された。
- 「統合司令部」法案が衆院通過 陸上風車規制は審議入り(日本経済新聞、2024年4月16日)
在日米軍は、司令部(横田)に陸海空3軍と海兵隊などを横断した統合任務部隊を設け、自衛隊との連携を強めるために、司令官の階級を中将から大将に格上げすることも報じられている。
- 在日米軍司令官「大将」格上げへ 部隊指揮も検討、自衛隊と連携(東京新聞、2024年4月5日)
自衛隊の統合作戦指令部は、在日米軍の統合任務部隊の指揮統制下に入り、事実上の 下部組織となることが懸念されている。
はじめに~岸田訪米を「国賓待遇」とヨイショする大手メディアの馬鹿さ加減!!「赤絨毯」と「儀仗隊」との引き換えに「グローバル・パートナー」なる嘘くさい美名のもと、「自衛隊を米軍の一部隊にする」との売国的な約束を、主権者たる日本国民を置き去りにして、米国議会で勝手に約束!(日刊IWJガイド、2024年4月16日)
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2024年4月19日、立憲デモクラシーの会が衆議院第2議員会館で記者会見を行い、自衛隊と米軍の「統合」(一体化)を、「日本の安全保障の体を成していない」と批判する声明を発表した。
- PDFファイル『自衛隊と米軍の「統合」に関する声明』(立憲デモクラシーの会、2024年4月19日)
上智大学の中野晃一教授は、「米軍と一体化すればするほど、日本を守れるという根拠がどこにあるのか、ということが、リスクも含めてまったく議論になっていない」と批判し、次のように述べた。
「米軍がいれば安心だったり、米国が日本と同盟していれば安心だと、これまではやや漠然と信じられてきたと思うんですが、本当にそうなのか。ちょっと考えてみれば、そんなはずがあるはずはない。
米国は米国のために安全保障をやっているのであって、日本のためにやるわけでは、最終的にはない。
一体化して、日本の安全保障にかなうのかどうか、という主体的な判断ができないという状態になれば、それは日本にとって、むしろリスクが高まっていくということ。
この可能性が議論されないのは、なぜなのか」。
IWJは、4月16日の上川陽子外務大臣記者会見で、「自衛隊の指揮権を米軍にゆだねることは、国家主権の放棄ではないのか?」と質問したが、上川大臣は「2015年に策定した『日米ガイドライン』にも、自衛隊及び米軍の活動は、おのおのの指揮系統を通じて行動すること、また、おのおのの憲法及びその時々において適用のある国内法令、並びに、国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われることが、明記されている」とのべ、「自衛隊の統合作戦司令部が、米軍の指揮統制下に入るということはございません」と断言した。
IWJ記者は、立憲デモクラシーの会の記者会見で、上川外務大臣の答弁や林芳正官房長官の「自衛隊の統合作戦司令部が米軍の指揮統制下に入ることはない」との記者会見での答弁をあげ、「そもそも議論をする気のない人たちを相手に、今後どう対応すればいいのか?」と質問した。
これに対して中野教授は、次のように語った。
「岸田総理も、『我が国の平和主義はいささかも変わるものではない』『専守防衛も変わらない」と言うわけですね。
ただ、実際には次々と例外を作って、もはや原則が意味をなさない、憲法がないかのように振る舞っているという現実がある。
今、林官房長官、上川外務大臣のことをあげていましたが、私が自衛隊関係者と話した時も、非常に強い剣幕で、『一体化など進んでいない』ということを、特に論理的なバックアップもないのに、とにかく言うんですね。たぶん、これは政府の方針として、米側と合意していることに対して、口裏合わせではないけど…。
要は、お互い司令部を統合すると。日本の場合は、これまで自衛隊の陸海空がそれぞれに統制機能を持っていたものを、統合する。
米国に関しても、太平洋で遠くにあったものを、日本を中心としたところで、例えば台湾海峡有事というシナリオにあわせて、統合的な判断ができるようにする。
それをぴっちりとつなぎあわせて、あうんの呼吸で、すべてのレベルで、『あ、同じ考えだったね』という形で、指揮統制していこうという、たぶんそういうストーリーになっているんだと思うんですね。
ただ、NATOや在韓米軍なんかもそうですけど、実際に米軍のような、中国も足元に及ばないような軍事超大国が、日本の判断をいちいち待って、あるいは日本が『ここはちょっと国内的に整合性があわない』となった時に、『そうか、やめておこう』と、米軍自体が動かなくなるなどということが、あり得るのか。普通に考えたら、そういうことがないようにするために、軍事超大国になったわけです。
もうひとつは、(軍事超大国の米国に)抱きついていれば、日本がピンチになったら必ず助けに来てくれるだろうというのは、非常に甘いというか、米国の世論や政治システムをあまりにも理解していない。
トランプが勝つか勝たないかはあまり関係がなく、ミニトランプみたいなのが、議会やあちこちの州にいっぱいいて、米国の世論はどんどん内向きになっているし、他国のために若い米兵が棺に入って帰ってくるということは、かなりやりづらくなっている。
しかし、権益を守りたいということで、友好国や有志国、オーカスだ、ファイブアイズだと、なんだかんだいろんな仕組みを作って、統合抑止という形で、下請けさせようという方針を決めて、やっているわけです。
その現実を考えた時に、『対等な日米関係に、これで近づく』なんてことは、言葉は悪いですけど、『馬鹿も休み休み言え』というか、あまりにも平和ボケしている。
こういうことを直視できないで、何を見てやっているのか、真面目にやっているのか、というレベルだと思いますね」。
また、国際基督教大学名誉教授の千葉眞氏は、IWJ記者の質問に対し、「今の自民党は、不都合なことを全部、内輪で解決し、内輪で決定する、そういう体質になっているんじゃないか」と述べた。
さらに千葉氏は、「膨大な債務超過を抱える米国にとって、岸田総理の大芝居(議会演説)は、財政のマイナスを補う『朝貢外交』をさせられる、第一幕だったのではないか」との見方を示した。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。