2023年2月5日、午後2時より、東京都新宿区の早稲田大学小野記念講堂にて、「立憲デモクラシー講座V 第1回 緊急企画『戦後』の現在 ―安保関連3文書を読む」が開催された。
石田淳・東京大学大学院教授、加藤陽子・東京大学大学院教授、蟻川恒正・日本大学大学院教授の3名が講演を行い、その後、立憲デモクラシーの会共同代表の山口二郎・法政大学教授を司会として、登壇者3名による座談会が行われた。
この「立憲デモクラシー講座」は、コロナ禍のため、2020年2月以来、約3年ぶりの開催となった。
登壇者3名の講演タイトルは次のとおり。
石田淳教授「周辺国の関心事項という観点から『日本の「戦後」の現在』を考える」
加藤陽子教授「戦前期『帝国国防方針』3文書の内容から、今を照射する」
蟻川恒正教授「失われた10年―道理が引っ込む時勢を愕(おどろ)く―」
各講演の内容については、全編動画を御覧いただきたい。
座談会で山口教授は、石田教授に「抑止力」について、次のように質問した。
山口教授「まず、石田先生のお話ですけども、政府の説明では『抑止力』という言葉がキーワードになっているんですけど、日本がどんどん軍拡と言うか、防衛力増強をして、たくさんのミサイルとかジェット機とかを買うと、それに比例して抑止力って強まるんですか?
あるいは、日本がそうやってその軍備を増強すると、例えば、中国だとか、想定される敵国が、手出しするとひどい目にあうから、怖いなとか思って、抑止の効果というか、ある種自制心を働かせてくれるのか、というその抑止力の概念について、ちょっと、もう少し詳しくお話しいただけますか?」
石田教授「『抑止』という概念は、『反撃の威嚇によって攻撃を自制させる政策』というふうに定義するのが標準的な定義でありますが、『反撃の威嚇をする』と言った時の反撃というのは、攻撃が前提なんですけれども、反撃に使える能力というのは反撃にだけしか使えないのではないので、こちらがその反撃に使える能力を何のために備えたのかという、その意図の問題ですね。
その意図が明確に相手に伝わっていない限り、つまり、攻撃をしなくても、その能力を例えば先制攻撃のために使用する。先制攻撃自体はしないとしても、反撃のための能力というものを、先制攻撃のために使わないとしてもですね、その攻撃の威嚇によって何らかの譲歩というものを引き出す。
例えば『大量兵器計画を放棄しなければ、武力の行使も辞さない』というような形で、何らかのその大量破壊兵器計画の放棄を迫るとかですね。
そういったような目的のために使用するのではないかというように考えれば、それを防ぐために、軍備を備えるということになるので、結局のところ安全を確保することはできないという、それは『安全保障のジレンマ』というように言うわけなんですけれども、それは、我々の間では、かなり広く受け入れられている有力説と言うか、もう、ほぼ通説だと思います」
詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。