裁判での国の責任逃れのための姑息な主張!「セクハラ対策の責任者は、現場の班長でなく隊長!」「しかし隊長は現場にいないので知らなかった!」「だから国に賠償責任はない!」そんな理屈が通るのか!?~3.25 現役自衛官セクハラ国賠訴訟 第6回期日後「裁判の報告集会」 2024.3.25

記事公開日:2024.3.26取材地: テキスト動画
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(取材・文、木原匡康・IWJ編集部、文責・岩上安身)

 航空自衛隊の現役女性自衛官(以下、原告)が、ベテラン隊員からのセクハラに関して国を訴えた、国家賠償請求訴訟の第6回裁判期日が、2024年3月25日に東京地裁で行われた。

 同日、その報告会が、千代田区の専修大学で開催され、原告本人と支援する弁護士らが出席した。主催は現役自衛官セクハラ国賠訴訟の支援 クローバーの会。

 支援の会によれば、原告は2010年の自衛隊入隊後、着任した那覇基地で、ベテラン隊員Aから「お前、本当はチンコ付いてるだろ」「Tシャツを着てるとちゃんとオッパイがついているが、上着を着ると、お前、リバーシブルだよ」「セックスしなきゃだめだぞ」「やらないと乾くぞ」等々の性的発言に悩まされ続けた。

 交際相手がいるとわかると、「お前、○○(交際相手の名前)とやってんのか?」と言われたり、業務の問題で原告に非がないにもかかわらず、立腹したAが「○○とやりまくって業務を疎かにするんじゃねえよ」等と、繰り返し怒鳴ったという。

 原告は、自衛隊組織内でセクハラを申し出たが、Aからの謝罪や、異動し隔離する等の対策は行われず、隊長からは「加害者にも家庭がある」、セクハラ相談員からも「我慢するしかない」と言われて、体調を崩した。

 さらに、原告への相談もないままに、原告は実名、Aは匿名で、被害事実が記載されない不適切なハラスメント研修が実施され、原告は他の隊員から厄介者扱いを受けるようになった。

 たまりかねた原告が、Aの責任を問い、那覇地裁に提訴したが、「仮に違法であったとしても、公務員個人である被告が不法行為責任を負うことはない」と、請求棄却された。

 一方、Aが「セクハラは事実無根」と損害賠償請求した反訴に対しては、「違法なセクハラ発言に当たると判断される可能性は十分にある」として、請求棄却された。

 なお、原告からのセクハラの申し出は一蹴した自衛隊内の法務班は、Aに肩入れし、そのアドバイスによって、隊員15名が「セクハラはなかった」という陳述書を提出している。

 その後も原告は、河野(元)統合幕僚長など、様々なところに相談したが、抜本的解決はなされず、逆に、裁判で組織の文書を提出したとして警務隊に告訴されたり、昇進や給与面などでも不利益を受けた。

 こうした経緯を踏まえ、原告は、「(自衛隊の)組織が被害者回復や不利益防止措置を取らなかった」として、国の「安全配慮義務違反」を主張し、2023年2月、東京地裁に国家損害賠償訴訟を起こした。

 この裁判で、国は加害隊員によるセクハラをほぼ認める一方で、分離措置・加害者処罰により、安全配慮義務は果たしているとして、請求棄却を求めている。

 報告会で説明を行った、原告側弁護団の田渕大輔弁護士によれば、今回「被告(国)は、事実関係でがっぷり四つで争っているわけではなく」、「(安全配慮義務違反に関する)責任を負う『履行補助者』の範囲を非常に限定することで、自分たちは損害賠償責任を負わないという、逃げの主張をしてきている」という。

 「国という抽象的組織」に代わって、「安全配慮義務」遂行のために実際に動く人間が「履行補助者」である。

 田渕弁護士によれば、原告側は「現場の責任者として、隊員のそばで執務する班長が『履行補助者』だ」と主張している。

 これに対して国は、「『履行補助者』は法令上の指揮監督権限を持つ人だから、班長ではなく、隊長だ」と反論している。

 ところが、「隊長は日常的に隊員のそばにはいないので、『隊長は知らなかった。だからしようがない』」と、国は弁解しているというのである。

 責任回避のみが目的の、驚くべき主張としか言いようがない。

※本編にアーカイブ動画はございません。

  • 日時 2024年3月25日(月)14:30~15:30
  • 場所 専修大学神田キャンパス7号館 3階 731教室(東京都千代田区)
  • 主催 現役自衛官セクハラ国賠訴訟の支援 クローバーの会(詳細Xでの告知

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