能登半島地震により、改めて福島原発事故の教訓無視との批判が広がる中、2024年2月11日に東京都渋谷区で「大手法律事務所に支配される最高裁!東電刑事裁判で改めて問われる司法の独立」東京集会が開催された。
集会では、ジャーナリストの後藤秀典氏が、「裁判所・東電・巨大事務所のつながりと原発裁判」と題した講演で、原発事故裁判での東電経営陣や国に対する免責判決の背景に存在する、法曹界と国、電力会社の癒着を指摘した。
福島原発事故の責任をめぐっては、東京電力元経営陣3名が業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電刑事裁判で、2023年1月、東京高裁が、全員無罪とした一審判決を是認する判決を下した。その後上告され、最高裁に係属中(裁判所で訴訟の取扱中)である。
なお、この判決は、ほぼ同じ証拠と争点で、旧経営陣らの過失責任を認めた民事訴訟の判決とは、正反対の結論だった。
- ほぼ同じ証拠と争点なのに…旧東電経営陣の責任を問う訴訟の判決が民事と刑事で正反対になった背景(東京新聞、2023年1月19日)
後藤氏は「クローズアップ現代」「BS1スペシャル」など報道・ドキュメンタリー番組を製作、「分断の果てに “原発事故避難者” は問いかける」で貧困ジャーナリズム賞を受賞しており、近著に『東京電力の変節――最高裁・司法エリートとの 癒着と原発被災者攻撃』(旬報社、2023年8月)がある。
後藤氏は講演冒頭で、この著書を評した評論家・佐高信氏の言葉「巨人阪神戦で審判が巨人のユニフォームを着ているような話だが、経産省の官僚や裁判官がみな東電のユニフォームを着ているのである」(日刊ゲンダイ、2023年10月29日)を紹介した。
後藤氏は、まさにこの言葉通りの、たとえば最高裁判事や原子力規制庁職員が東電側代理人の巨大法律事務所に天下りしたり、逆に巨大法律事務所の弁護士が最高裁判事となるなど、きわめて密接な相互関係の数々を紹介。判決内容など含めて、実名入りで詳しく解説していった。それらを見れば、こうした法曹界と原発業界の癒着ともいえる相互関係が、原発関係の裁判に、まったく影響も与えないとは考えにくいだろう。
後半で登壇した、福島原発訴訟弁護団の代表で、東電刑事裁判被害者代理人の河合弘之弁護士は、後藤氏が暴露した法曹界の癒着の実態に「暗澹たる思いだ」と述懐した。
自らも企業案件を扱う河合氏は、自分たちが多数の反原発裁判を起こしたこと自体が、巨大弁護士事務所に対して、電力会社が潤沢な資金を投入する原発裁判という「儲かる巨大マーケット」への参入機会を与え、裁判官囲い込みなどの癒着を招いたという、皮肉な構造を指摘。その上で、癒着が疑われる裁判官等に対しては、「違法でない限り、(名指しで批判など)強く圧力をかけて攻撃をすべきだ」と訴えた。
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