2023年9月30日、来る10月12日の宗教法人審議会で、旧統一教会の解散命令請求が採択の見込みと報じられた。
同じ30日、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の東京集会が、東京都千代田区内で開催された。全国弁連は1987年の結成以来、旧統一教会による被害の救済・抑止に向け、被害の深刻さや悪質な手口を訴え、政府の対策と解散命令請求を求めてきた団体である。
非会員版:(日刊IWJガイド、2023.10.3号)
会員版:(日刊IWJガイド、2023.10.3号)
集会は、最近の統一教会の動きや元二世信者の方の生々しい体験談をはじめ、鈴木エイト氏や有田芳生氏などジャーナリスト、弁護士や研究者、宗教家による報告など、極めて多様な内容で構成された。集会終了後には全国弁連の「声明(旧統一教会の解散命令請求を目前に控えて)」が記者発表され、全体で6時間以上に及んだ。
冒頭挨拶で代表世話人の山口広弁護士は、解散命令請求への動きを評価し、請求先の東京地裁が、統一教会の悪質な霊感商法を的確に認定するよう要請。併せて、次の3点を訴えた。
第1に、統一教会の資産の韓国への流出や隠匿で、被害者救済が不可能になるのを防止する「特別措置法」の成立。第2に、統一教会分派や離脱者による、より悪質な資金集め活動の警察や行政による監視等。第3に、最大の被害者である信者やその子ども達の救済、社会復帰の方途を探ることである。
続く「基調報告」で、渡辺博弁護士が、最近の統一教会の動きについて報告。統一教会は、解散命令請求を逃れるため100億円を用意、クレームを出す信者との和解に30億円支払ったという。
しかし全国弁連の集団交渉には、古いものは相手にしないと拒否、残り70億円は韓国に送金を企図しているという。また、統一教会総裁の韓鶴子(ハン・ハクチャ)氏の、「岸田文雄総理を韓国に連れてきて、統一教会の『教育』を受けさせよ」との説教や、傘下機関メンバーの裁判事例などが報告された。
「二世問題について」と題したコーナーでは、「こども大綱」など政府の対応状況の不備を、久保内浩嗣弁護士が報告。
続いて、元二世信者のYさんが、匿名で体験談を語ったが、涙とともに言葉が詰まる場面もある、聞く者も胸の痛む内容だった。
次いで、「統一教会の実態」に関する報告が続いた。
韓国のジャーナリスト、ソ・ドヨブ氏は、日韓の統一教会の内部事情を報告した。韓鶴子総裁が、日本の二世信者6000名を集めた集会(韓国の二世4000名も参加)で「君たちは日本を救う特攻隊だ」と語ったことや、「韓総裁は、鄭元周秘書室長のかかし(操り人形)にすぎない」との指摘、統一教会が資金難で、米国や韓国に所有する学校や教会等の不動産を売却しているなど、極めて詳細な報告がなされた。
元信者のT・I氏は、かつて信者獲得や資金集めで重要な役割を果たした自らの実体験を報告した。
ジャーナリストの鈴木エイト氏は、広範囲の取材で得た、統一教会の勧誘活動や、自民党等の政治家との関係、韓国での活動実態などを紹介した。
「統一教会の主張に関して」と題したコーナーでは、まず、櫻井義秀北海道大学教授が自著『統一教会: 性・カネ・恨から実像に迫る』(2023年3月、中公新書)への統一教会からの反論について紹介し、持論を述べる講演をした。
続いて、塚田穂高上越教育大学准教授が、 鈴木エイト氏、藤倉善郎氏との共著『だから知ってほしい「宗教2世」問題』(2023年9月、筑摩書房)の内容を紹介した。
さらに、吉田正穂弁護士は、統一教会のコンプライアンス宣言(2009年)以降も、多数の被害が明白な集計を報告。中川亮弁護士が、コンプライアンス宣言後の被害の実例を報告した。
また、飯田正剛弁護士が、紀藤正樹弁護士など全国弁連の弁護士への「スラップ訴訟」について報告し、紀藤弁護士本人も登壇。ジャーナリストの有田芳生氏が、自身に対する訴訟について報告。
山口貴士弁護士が、石垣のりこ参議院議員(実質的には二世の小川さゆりさん)を対象としたスラップ訴訟を報告し、川井康雄弁護士が、自身に対する損害賠償訴訟を報告した。
終盤では「各地の活動報告」として、全国統一教会被害対策弁護団団長の村越進弁護士が挨拶。曹洞宗龍潭寺住職の別府良孝氏が、日本の宗教界の統一教会への加担について報告した。さらに郷路征記弁護士が、活動報告をし、全国弁連の代表世話人の河田英正弁護士が、閉会挨拶を行った。
集会終了後に、同じ会場で記者会見として、「弁連声明(旧統一教会の解散命令請求を目前に控えて)」の発表と被害集計の報告が行われた。
「弁連声明」では、(1)旧統一教会に対して、被害者への謝罪と損害賠償等を、(2)裁判所と政府に対して、解散命令請求の迅速な審理を、(3)政府と各政党に対して、財産保全の特別措置法の今臨時国会中の成立を、それぞれ求めた。
全国弁連東京集会のハイライト動画は、下記を御覧いただきたい。
また、本集会の登壇者への岩上安身によるインタビューや、統一教会問題に関する記事は、以下で御覧いただきたい。
- 「文鮮明の生まれたメシアの国である韓国を蹂躙した罪をつぐなうのは日本人、特に日本女性が負うべき罪」~岩上安身によるインタビュー第1088回 ゲスト 『となりのカルト』著者 榊あまね氏 2022.8.9