2021年12月22日午前11時頃より、東京・千代田区の東京弁護士会にて、飯舘村原発被害者訴訟弁護団の主催により、「飯舘村原発被害者訴訟(謝れ!償(まや)え!かえせふるさと飯舘村)」の第2回口頭弁論期日後の報告集会が行われた。
この訴訟は、福島県相馬郡飯舘村の住人13世帯31名(11月29日に1世帯2名が追加提訴)が、「国による避難指示の遅れで被ばくし、その後の避難で生活基盤も失った」として、国と東京電力ホールディングス株式会社を被告として、慰謝料など計約2億700万円の賠償を求める損害賠償請求訴訟である。
このたびの報告集会では、ドキュメンタリー映画「奪われた村 避難5年目の飯舘村民(※)」の監督であり、震災直後から現在まで飯舘村の取材を続けているフォトジャーナリストの豊田直巳(とよだなおみ)氏による飯舘村レクチャーが行われた。
レクチャーは、豊田氏が撮影した写真を観ながら、それに豊田氏が注釈をつける形で進んだ。冒頭、豊田氏は次のようにレクチャーの意図を語った。
「この間、飯舘村だけでなく、避難指示の解除が次々にされていて、そういう所に入れるようになったので取材している。飯舘村が、福島全体の中でどういう位置にあるのか、実際、どんな感じなのかについても知ってもらったほうが、そういう側面もあったほうがいいのかと思った」。
豊富な写真を使った豊田氏のレクチャーが進むにつれ、一つのキーワードが浮かび上がってきた。そのキーワードとは、政府と東電が流布している「安全神話」である。
たとえば、2018年5月3日と4日に、2008年以来、原発事故の影響で中断されていた飯舘村飯樋の大雷(だいらい)神社例大祭が10年ぶりに行われた際、大手メディアの報道で使用された写真では、周囲に積み上げられたフレコンバッグが写っていなかった。しかし、豊田氏の写真を見ると、そこには壁のように積み重ねられたフレコンバッグがある。
また、同例大祭では、武者装束などで人々が練り歩くのが恒例となっている。だが、練り歩きに参加した人々の大半は、練り歩きが終われば、それぞれの避難先に帰っていく人々であった。
大手メディアの報道ではそういった背景情報に一切触れないため、あたかも飯舘村に従来の日常が取り戻されつつあり、復興が着実に進んでいるかのような印象が醸成される。
メディアはある象徴的なイベントをピンポイントで切り取り、「点」としての取材を行いがちだが、豊田氏はこの飯舘村の10年間を「線」として取材してきた。10年間じっと見続けることでしか見えないものがある。
豊田氏によるレクチャー終了後、集会参加者との質疑応答が行われた。
豊田氏によるレクチャー、そして参加者との質疑応答の詳細については、ぜひ、全編動画にて御覧下さい。