2021年2月19日、東京電力福島第1原発事故にともない、福島県から千葉県に避難した住民らが国と東電に対して損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高等裁判所は、国と東電双方に賠償を命じた。千葉訴訟の1審で千葉地方裁判所は、国の責任を否定しており、今回は「逆転勝訴」となった。
判決直前の東京高裁前集会でマイクを握った住民側の福武公子・弁護団長は、「2019年6月、高裁の裁判官3名が飯館村や浪江町を訪れ、イノシシなどで荒らされた家屋の中に入り、自身の目で見、肌で感じて、空気を吸った」「今日は、その裁判官の感性に期待している」と述べた。
判決で東京高裁の白井幸夫裁判長は、2002年に国の地震調査研究推進本部が巨大津波を発生させる地震の可能性を指摘した「長期評価」について、「相応の科学的信頼性のある知見」と指摘。「長期評価の見解にもとづけば、国は15メートル以上の津波の危険性を認識できた」とした。
その上で、「対策が講じられれば、津波の影響は相当程度軽減され、事故と同様の全電源喪失には至らなかった」と結論付けた。
また、「国は当該発電所の設計津波の設定について、土木学会による『津波評価技術』を採用しているが、同等の科学的知見である、国の地震調査研究推進本部による『長期評価』を判断の基礎としないことは著しく合理性を欠く」として、「国は東電に対し技術基準適合命令を発しなかった規制権限不行使は違法で、結果生じた損害を賠償する義務を負う」と認め、東電と同等の責任があり、東電と連帯して賠償を行うべきであるとの判決を下した。