2020年8月19日(水)、午後4時15分より、千代田区永田町の参議院議員会館にて、原発ゼロの会第241回会合が開催された。このたびの会合では、福島県飯舘村で覆土無し除染土壌での食用作物の試験栽培を行うことになった決定プロセスについて、龍谷大学政策学部教授・大島堅一氏、そして、環境省と農水省の担当官らが参加し、ヒアリング形式で行われた。
冒頭、原発ゼロの会の事務局長である立憲民主党・阿部知子衆議院議員が、「私たちは、(この問題について)8月のNHK報道で知るところとなった。飯舘村で覆土をしない汚染土壌での食用作物の試験栽培を行うんだということが報道されて、それはどういうことだろうということで、今日、話をうかがう」と会合の目的を説明した。
続けて、阿部議員は、「この問題は原子力市民委員会の大島(堅一)さんが、情報公開を求めてわかったということなので、報道される以前に大島さんの情報公開請求の経緯とそこからわかったこと、ということで、お話をしてもらう」と会合の流れを説明した。
龍谷大学政策学部教授で原子力市民委員会の座長を務める大島堅一氏の「覆土無し食用作物栽培開始をめぐって」と題された報告はZoomで行われ、公開文書の内容について、問題点と現時点での評価を報告した。
大島氏から提示された疑問点は4つ。
1つは、「覆土なし除染土での食用作物の試験栽培をして欲しいという要望を地元で受けた」という内容の小泉環境大臣の記者会見での発言について、この「地元の要望」とは何か?という点。
2つ目は、地元の要望があれば、非公開で事を進めてもいいのか?(環境省は、2020年8月7日のNHKの報道までの約半年間、覆土無しで、除染土壌で食用作物の試験栽培を開始したことを公表しなかった)という点。
3つ目は、小泉環境大臣は、覆土無し食用作物栽培をいつ知ったのか?という点。
そして、4つ目が「手引き(福島県内における除染等の措置に伴い生じた土壌の再生利用の手引き)」の及ぼす範囲は何か? である。
阿部議員より、「そもそも、この覆土無しの作物栽培を『いつ』、『どこで』、『だれ』が決めたのか?」という質問も追加された。
上記の疑問点について、環境省の大野皓史参事官補佐がそれぞれに回答をした。しかし、大野参事補佐官はほぼすべての点について、「ご飯論法」で応じ、物事の核心をずらす、不誠実な説明を繰り返すばかりであった。
大野参事官補佐の誠実さのかけらもない回答に対し、会合参加者から鋭い批判と質問が投げかけられた。
立憲民主党の山崎誠・衆議院議員からは次のような質問が行われた。
「基本的な質問ですが、今話しを聞いているとつまり、覆土をするのが大前提で、方針はそれで決まっているという前提で、なんで、覆土なしの何を確認したくて、覆土なしをやろうとしているのか?
だって覆土ありを前提にしているのであれば、それで、覆土がない状態が起こることを防ぐのが大前提じゃないですか? どう考えてもおかしいですよ。
だから、覆土がもし剥がれてしまったりしたときには、もう農作物作るのを停止しなさいと、そういう手引なわけでしょ? 作っちゃいけないわけじゃないですか。覆土のない状態で。
それをなぜ覆土が剥がれた状態で何を試したいのですか?覆土なしでも農業をやってしまうケースを想定しているのですか?それを認めるのですか?そこすごくおかしいと思います。だから、我々が心配しているのは方針変えて、覆土なしの農作物を作ることを認めるんじゃないのか。そのための準備作業として、今試験をやろうとしているのではないか? というふうに考えているんですよ。
それを今のご説明だと、基本方針は変えない、変えない、と言う。ちょっとすごく矛盾してますよ。どうすんですか? 覆土なしを、認めないという前提で、覆土のない農作物を作る理由は何ですか?」
ジャーナリストの青木美希氏からはさらに鋭い質問が投げかけられた。
「NHKさんの報道でですね、『収穫した後、含まれる放射性物質の濃度を調べ、専門家による会議にかけても安全だと評価されれば、除染で出た土をそのまま、野菜の栽培に使うことも検討するということです』というふうに出されています。この報道は間違いですか?」
青木氏は、加えて、「環境省は、『福島第1原発事故に伴う除染作業で出た土の再生利用に向けた省令改正』をこの『覆土無し食用作物栽培』問題のために先送りしている」とし、省令改正のスケジュール感についても質した。
山崎議員と青木氏からの問題の核心を突いた質問に対する大野参事官補佐の回答は、まさに「打てど響かず」であった。何のために、何をするためにわざわざ会合に出席したのだろうか?
このたびの会合に限らず、官僚たちの答弁は、ほぼすべて「ご飯論法」だと言っても過言ではないと思う。質問に真正面から答えず、質問の論点をずらして逃げる卑怯な論法だ。
環境省の今後の動向には最高度の警戒が必要である。