衆院選の争点「改憲」! 改憲勢力が改憲発議可能な3分の2議席を確保するか!? 総理となった岸田氏は「緊急事態条項」について「嘘」をついたのか!? 自民党の政調会長となった高市氏は、改憲4項目に加え、自由と人権を保障する憲法各条の制約を無視! 2021.10.27

記事公開日:2021.10.27 テキスト
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(文・六反田千絵 文責・岩上安身)

 2021年10月31日に投開票日が迫る衆議院総選挙の争点として、コロナ対策や貧困対策等が重要なのは言うまでもないが、それ以上に注目されるのは憲法改正の問題だ。

 この稿をアップする10月27日現在の見通しでは、自民・公明・維新ら改憲勢力が有利な情勢で、衆議院過半数233議席を超え、改憲発議可能な3分の2となる310議席を超えるのではないか、という情報も入ってきている。

 すべては、全有権者が31日当日にどの候補者、どの政党に一票を投じるのか、という点にかかっている。危機感をもって投票に行くのか、あきらめてしまうのか。有権者一人一人の判断と行動にかかっている。

 IWJが繰り返し訴えてきたように、自民党が目指す、改憲により「緊急事態条項」が導入されれば、ナチスと変わらない独裁内閣が実現し、どんな無茶な国民への「命令」だろうと、法律と同じ効力をもつ「政令」として出せるようになる。

 自民党と他の改憲勢力は、米国の意向に沿って「日本を戦争できる国にする」ため改憲を進めようとしている。総選挙で、改憲勢力を3分の2以下に抑えて改憲を阻止できるのかが、日本の命運を決する。

 そうした意味で、9月29日の自民党総裁選で表明された、各候補の改憲への取り組み方針は、この直後に総理・総裁に選出された岸田文雄氏や、岸田政権で自民党の政務調査会長に任命された高市早苗氏など、自民党各層の主張を確認するうえで、注目に値する。

 自民党の党是が改憲である以上、自民党総裁候補者が改憲を表明するのは当然だが、問題はその内容と姿勢である。緊急事態条項を含む自民党改憲たたき台素案4項目を掲げて、安倍・菅政権と同じように強硬な姿勢でのぞむのかどうか。

 総理となった岸田氏はこの時、「緊急事態条項」について、「戦時」に「国会の機能を奪う」という実態を糊塗し、「災害時」に「国会の機能を守る」と、平然と「嘘」を語ったのである。「嘘」というのが言い過ぎであるとしても、自民党の改憲素案には国会の機能を守るという担保は、どこにもない。あるのは、内閣が立法機能を持ち、法律に代わる「政令」を出せる、という内閣独裁の文だけである。国会議員の任期が延長できるので、「国会の機能」を凍結したまま、国会議員は「終身議員」となり、国民は選挙で選択することもできなくなる。

 岸田総理は、どんなつもりで「国会の機能を守る」と口にしたのか。10月14日に行われた総理の記者会見に私、岩上安身は参加し、指名されなかったため、会見後、メールにて質問を官邸に送った。10月22日に回答があり、官邸のホームページにもアップされた。

 岩上安身は、大規模財政出動についての質問とともに、「緊急事態対応」について以下のように質問した。
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 会見中に産経新聞の記者が改憲について質問されました。岸田総理は、恒久的な内閣独裁を可能にし、国会を空洞化させてしまう現在の自民党改憲案「緊急事態対応」にそのまま賛成なのでしょうか。他方、総理御自身が他日の記者会見でこの問題への質問に答えて、「国会の機能の維持をはかる」と発言されています。つまりこれは、緊急事態宣言の後も「国会の機能の維持」をはかり、緊急事態宣言発出の前に国会で事前同意することや政令発出前に国会での事前の承認を必要とすること、また、緊急事態が一時的な措置で終わるように、解除の手続きと、国会に立法権を速やかに戻すなどの条件を織り込む、徹底した制限を加えた、先進国並みの「国家緊急権」へと手直しをするおつもりなのか。岸田総理の本音はどちらにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
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 岸田総理は以下のように答えた。
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 憲法改正については、国会が発議し、最終的には、国民投票により、主権者である国民の皆様が決めるものです。
 憲法改正の具体的な内容等について、内閣総理大臣としてお答えすることは差し控えたいと思いますが、自民党が提示した改憲項目は、たたき台であると承知しております。
 新型コロナへの対応を受けて、緊急事態への備えに対する関心が高まる中、まずは、憲法審査会において、与野党の枠を超えて、様々な論点について建設的な議論を行い、国民的な議論につなげていただきたいと思います。
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▲岸田文雄自民党総裁・内閣総理大臣(Wikipedia、内閣官房内閣広報室)

 一方、決選投票で岸田氏に敗れて自由民主党広報本部長となる河野太郎氏は、「野党との合意」を前提にして、自民党のゴリ押しに歯止めをかけるともとれる発言を行った。

 総裁選最下位で、少子化対策等の特命担当大臣に任命される野田聖子氏は、「平和主義を感情的にならずに」議論したいと語った。

 そして、自らに投票した議員票を決選投票で岸田氏に回して岸田総裁誕生に貢献し、自民党政調会長となった高市早苗氏は、自民党の改憲4項目に加えて、憲法12条「自由権及び人権を保持」、21条「表現の自由」、22条「居住移転の自由、職業選択の自由、外国への移住、国籍離脱の自由」を制限すると、強権的な姿勢をきわめて具体的に論及したのである。

 高市氏の人々の思想・行動の不自由の実現に向けての情熱、「自由への憎悪」はすさまじい。その高市氏が政調会長として、自民党の政策立案の責任を担っていく。その手始めが、衆院総選挙の選挙公約だった。

記事目次

■岸田総理会見における産経新聞記者の質問シーン

「電磁パルスで敵基地を無力化」という高市氏の公約は「憲法無効化」が前提! その上、高市氏は憲法12条を改正し、「公益および公共の秩序」のために私権を制限したいと主張!

 4人の候補者の中で、安倍改憲案に最も積極的だったのは、「電磁パルスで敵基地を無力化」をうたった高市氏である。日本が核保有し、他国の領土上空で核爆発させるというのだから、現行の憲法でできるわけがない。

 高市氏の「公約」を実現するためには、内閣独裁を可能にし、現行憲法を丸ごと無効化する緊急事態条項が必要だ。「敵基地無力化」のためには、その前に「憲法無効化」が必要、という話になるわけだ。

 高市氏の公式ウェブサイトで示された政策集では「技術革新、安全保障環境や社会生活の変化など、時代の要請に応えられる『日本人の手による新しい日本国憲法』を制定するために、力を尽くします」とあった。

  • 政策9つの柱(高市早苗ホームページ、2021年9月27日閲覧)

▲高市早苗自民党政務調査会長(Wikipedia、内閣官房内閣広報室)

 9月26日に行われた自民党総裁候補者の政策討論会で、各氏は憲法改正について以下のように述べていた。「緊急事態対応」の導入を含む自民党改憲案4項目を否定する候補は1人もいないが、それぞれに温度差があった。

 オンライン参加者から出された憲法改正に関する第1の質問は、「憲法第何条をどのように改正すべきと考えているか」だった。

 高市氏は、まず憲法12条を取り上げて「公共の福祉」を「公益および公共の秩序」に改正し、私権の制限を可能にしたいと訴えた。

 野田氏はインターネット社会と人口減少に対応できる憲法改正を訴えた。

 河野氏は自民党改憲案4項目のうち、野党と合意ができたものから国民投票にかけると述べた。

 総裁選後に総理となる岸田氏は自民党改憲案4項目の重要性を解説した。

高市氏「自民党の憲法9条、緊急事態条項、教育、合区の解消の提案をしている。

 個人的に大変興味があるのは12条の解釈。憲法が国民に保障している自由や権利、これに対して一定の制約がかかるとしたら『公共の福祉』。

 でも、この『公共の福祉』が中途半端でわからないばっかりに、これを『公益および公共の秩序』として、国民の皆さまの命に関わるような場合、財産を奪われてしまうような場合、国家の主権に関わるような事態が起きた場合、一定程度の制限ができる、そういった形をはっきりさせたい」

 高市氏の主張のポイントが、ひたすら国権の強化、私権の制限にあること、その行き着く先に戦争遂行体制が想定されることは明らかだ。これは、自民党改憲案の中の緊急事態条項の導入とも整合する。彼女が作り出したいのは、ひたすら戦時独裁体制だ。

野田氏は人口減少問題に言及したが、自民党の改憲4項目は人口減少・少子高齢化の歯止めにならない!

野田氏「私も高市さん同様自民党の4項目を先行して進めることに賛成しています。

 どうしても変えなくてはならない理由は、自民党だからではなくて、すでに70年以上たって、こうやってインターネット、オンラインで行き来ができるような国、世界ができているということが1点。

 そして日本はとてつもない人口減少に見舞われているということがもう1点。この2点に速やかに対応できる憲法を国民の幸せのために届けなければならない」

 野田氏が、人口減少問題への取り組みの重要性を唱えた点は評価できるが、自民党の改憲4項目に、人口減少・少子高齢化の歯止めとなる項目はひとつもない。せっかく、人口減少問題に触れておきながら、安倍政権時代の2018年にまとめられた改憲案に異を唱えることができないのは残念だ。

▲野田聖子内閣府特命担当大臣(Wikipedia、内閣官房内閣広報室)

河野氏は「野党との合意」を前提にして、自民党のゴリ押しに歯止め!?

河野氏「自民党が4項目について提案している。もちろん野党は野党で様々な提案がある。国会の場でしっかりとそうした項目について議論をして、なるべく合意がまとまったものから順次国民投票にかけていく、ということになるだろう。

 4つのうちのどれが一番まとまりやすいのか、議論をしていかなければわからないところがある。この4つをしっかりとテーブルに乗せて、改正に向けて議論していきたい」

 河野氏は、野党との合意を実現することで、自民党のゴリ押しに歯止めをかけていく姿勢を見せているようにも思えるが、自身でどの項目が何のために重要で必要なのか、あるいは必要ないのか慎重に言葉を選んでいる点が歯がゆく感じられる。


▲河野太郎自由民主党広報本部長(Wikipedia、内閣府)

「戦時」に「国会の機能を奪う」「緊急事態条項」なのに、岸田氏は「災害時」に「国会の機能を守る」と「嘘」としか思えない発言!

岸田氏「自民党の提案している4項目、どれも現代的な意味で重要な改正。

 自衛隊の明記の問題は、自衛隊の違憲論争に終止符を打つ大変重要な課題だ。

 緊急事態対応については、災害の時代といわれる中で、緊急事態において国民の代表である国会の権能をいかに守るか、大変重要な課題。

 教育の充実は、子どもの貧困の中において、憲法は義務教育の無償化しか書いていない、それで十分か。そういった議論がある。

 また、1票の格差の問題、大都市に人口が集中していく中にあって、議員の数が大都市に集中していく地方の議員定数が減らされていく、こういった状況にどうやって歯止めをかけられるか、大事な問題だ」

 岸田氏は、安倍政権を支えてきた1人でもあるだけに、「嘘」が上手なのではないか、と思わされた。

 「緊急事態条項」は、「災害時」の「国民の代表である国会の機能をいかに守るか」を考えてつくられたものではなく、「戦時」に「国民の代表である国会の機能をいかに奪うか」という考えのもとに書かれたものだ。

 2018年に作られた自民党改憲案4項目の中の「緊急事態対応」は、2012年につくられた自民党改憲草案をもとに、より簡素な形で書かれているが、2012年案も、2018年案も、緊急事態を内閣だけの判断で制約なく判断することができて、狙いが国会から立法権を奪い、空洞化してしまって、内閣へ全権力を集中し、国民に「命令」をくだす如く、法律と同等の効力をもつ「政令」を出せるようにし、独裁体制を築くことになるのは明らかだ。

 岸田氏は、党内のハト派である宏池会のトップで、リベラルで、ソフトなイメージがあったが、このような国民を欺くような言葉を平然と口にできることには、驚きと落胆を覚える。

野田氏は、「敗戦」と「GHQの占領」は事実だからこそ、「未来志向で新しい憲法を作りたい」

 オンライン参加者から出された憲法改正に関する第2の質問は、「日本国憲法の成立過程における不備をどう思うか」だった。

 野田氏は、日本が敗戦したことは事実なので、未来志向で新しい憲法を作りたいと述べた。

 河野氏は数十年この憲法でやってきた事実があると述べた。

 岸田氏は国民投票にかけることで初めて国民が憲法に関わる機会になると主張した。

 高市氏は主権がない中で制定された憲法を日本人の手で改正したいと訴えた。

野田氏「私は夏、太平洋戦争に関する公文書や資料を読んだ。

 太平洋戦争は偶発的に起きたのではなく、遡ること日中であったり日露があった中で起こったこと、さらに外交官と軍部の軋轢の中で、勝つと思っていた戦争がああいう形で終結を迎えた。

 そこで米軍、GHQによる占領があった。それは事実なので。太平洋戦争に負けたことが。

 そこを踏まえて、そこにとどまるのではなく未来志向で、だからこそ私たちの手で新しい憲法をつくることにチャレンジしたい」

河野氏は「この憲法で数十年我が国は進んできた」「中身の議論をしたい」、岸田氏は「国民投票で国民が本格的に憲法にかかわる」

河野氏「成立の過程にはいろんな議論があるだろう。この憲法で、数十年我が国は前に進んできた。

 私は中身に関する議論をしっかりやって改正していきたい。(憲法制定の経緯ではなく)中身の議論をしたい。未来志向で憲法改正の議論を国会でやっていきたい」

岸田氏「憲法の成立過程について様々な議論があるのはご指摘の通り。

 ただ、憲法が制定されてから70数年、時代がどんどん変化している。憲法も時代の変化についていかなければならないという宿命を負っている。

 成立の過程から始まって、時代の変化についていくための改正の議論を前向きに進めていくことが大事。

 あとひとつ、国民投票、国民が成立の過程に関わっていないという議論がある。未来に向けて憲法改正ということになると、国民投票が必ず求められる。国民が本格的に憲法にかかわることが実現する。

 ぜひ改正を進め、国民の憲法を取り戻したい」

高市氏は、「占領下でつくられた憲法」を問題視しながら、「占領軍継続」を正当化する日米安保を問題視しない、典型的な対米従属右派!

高市氏「現行憲法の成立の過程だが、1952年、日本が独立をする前に主権がないときにGHQの関与を受けて原案がつくられた。

 しかしながら、その後国会にも付され、一応の手続きはとったことになっている。

 しかしながら、独立を、主権を回復してわずか3年、昭和30年自民党が立党した。このときの立党宣言を読んでいると、主権がない中で制定された憲法について、自分たちの手で新しい憲法を作ろうという非常に強い決意が示されていた。

 日本人の手による日本の心を持った、今の時代にあった必要な憲法を私たちの手で作りたい」

 高市氏のような右派は典型的な姿勢であるが、戦後憲法の制定過程を問題にするなら、同時に、日本が形の上で独立したサンフランシスコ講和条約の締結と同時に、有無をいわさず米国から押しつけられ、占領状態を延長することになった日米安保の締結の過程もその内実も問題にすべきだろう。

 日本の独立は、1951年9月8日に署名され、翌1952年4月28日に発効されたサンフランシスコ講和条約によって達成されたが、同じ1951年9月8日に日米安保条約への署名を強いられ、翌1952年4月28日に発効された。米軍による日本への駐留は、日本の独立後も、継続されることになったのである。

 この安保条約によって、米軍は、日本が形式的には主権を回復し独立を果たした、とはいっても、日本に米軍が「合法的」に駐留する根拠が築かれた。日本の見かけだけの独立と日米安保はセットなのだ。

 占領軍が、そのまま日本に居座ることを正当化したのは、日米安保条約であり、それを問題視しないで、GHQの占領下で日本国憲法が制定されたことを問題視し、占領軍の継続を正当化する日米安保を問題視しない、高市氏のような議論は、典型的な戦後対米従属右派の主張であり、見かけだけの自主憲法制定を唱えながら、米国の占領が続いていることには何の疑問も覚えないでいられる、奴隷の心理の如き自己欺瞞そのものである。

岸田氏は「市民との対話集会」で国民の理解を進めたい

 憲法改正に関する第3の質問は、「党内だけではなく、どうやって与野党で合意をとって改正に結びつけようと考えているか。国民の理解をどのように得ようと思っているか」だった。

 岸田氏は市民との対話集会を挙げ、高市氏は皆さんも声をあげてほしいと訴えた。野田氏は国民に説明すること、河野氏は国民生活への影響を説明することだと主張した。

岸田「私は憲法改正について、今までも熱心に取り組んできた方々の努力は大切だし、心から敬意を表する。

 しかし、それ以外の方々もずいぶんいる。私は自民党の政調会長をしていたとき、地方政調会で地方をまわって、市民対話を行なった。憲法も取り上げた。

 その際に多くの方が終わった後、自民党ってこんなことを考えていたのか、憲法改正の議論ってこういうことだったのかと、驚きと共に良かった、と言ってもらった。大変手応えを感じている。

 従来熱心だった方々はもちろん大事だが、いろんな人に広げることで国民の理解、与野党の理解を進めていきたい」

高市氏は、憲法21条の「通信の自由」も、22条の「居住、移転の自由」も制限したい!

高市氏「手続き的には国会で憲法審査会をできるだけ回数を開き、衆議院でも参議院でも3分の2が合意して、それから国民の皆様の審判を仰ぐという大変な手続きが待っているが、今の時代に憲法が追いついていないと焦るような気持ち。

 例えばサイバー攻撃がすごく増えているが、犯人を特定したいと思っていろんな捜査方法を試したいんだけれども、憲法21条通信の秘密にひっかかるから、これ以上はできない。

 邦人が拉致された時、これを危ないところに行かないでくださいよと無理矢理止めることも実はできない。憲法22条で移転の自由や海外居住の自由というのがある。その人に行かないでくれと言ったとしても、マスコミの人や救出に行く公務員なども行かなければならない、といったことでいろんな制約があるので、皆さんにも本気になって声をあげていただきたい」

 高市氏の議論は、とにもかくにも人の自由も縛りたいという衝動にもとづいていることがよくわかる。

 憲法22条に制限を加えることは、経済的自由に制限を加え、グローバリズムにも逆行することにもなる。危険地帯へ取材に行くフリーランスジャーナリストの行動を制約する、というレベルの話では終わらない。メチャクチャな議論だ。

野田氏は「平和主義を感情的にならずに議論」、河野氏は「国民生活への影響を説明」

野田氏「反省しなければならないのは、憲法についてよく知らない国民の方が多い中、憲法改正について国民にきちんと説明してこなかったと思う。

 先に日本財団が、18歳の日本人に前文を読んでもらって、半分ぐらいできていなかったと。今の国語教育の中で知り得ない言葉だったり、もう使われていない言葉も散見される。そういうところに丁寧に取り組む。

 とかく(議論が)集中するのが平和主義。(平和主義が)憲法によって守られていることもさることながら、国民の日々の努力もあった。そういうことをデータにもとづいて感情的にならずに(議論していく)。

 ふわっと作ってある憲法なので、断定的なことがない中で改正に至らなかったが、今は自衛官がしっかり働ける、国家のために尽くせる線引きをしてあげないといけない」

河野氏「今、自民党が提案している改正のための4項目それぞれが、国民の皆様の生活にどう影響してくるのかということを、わかりやすく説明することが大事。

 自分たちの生活に関係のない法律論議なんだと思われないように。一人一人のみなさんの生活にこういうふうに関わってくるんですよということを丁寧に説明する。

 そういう情報発信をしていくことが、国会での議論の後押しにもなる」

改憲4項目に加えて、憲法12条「自由権及び人権を保持」、21条「表現の自由」、22条「居住移転の自由、職業選択の自由、外国への移住、国籍離脱の自由」を制限すると具体的に言及した、高市氏の「自由への憎悪」!

 改憲に最も積極的なのは高市氏だった。改憲4項目だけでなく憲法12条、21条、22条に対しても制約を加えると言い放った。

 「(12条が)国民に保障している自由や権利、これに対して(中略)
、国民の皆さまの命に関わるような場合、財産を奪われてしまうような場合、国家の主権に関わるような事態が起きた場合、一定程度の制限ができる」

 「サイバー攻撃がすごく増えているが、犯人を特定したいと思っていろんな捜査方法を試したいんだけれども、憲法21条通信の秘密にひっかかる」

 「邦人が拉致された時、これを危ないところに行かないでくださいよと無理矢理止めることも実はできない。憲法22条で移転の自由や海外居住の自由というのがある」

 憲法12条は、人権保障の基本原則を定めたもので、自由権及び人権を保持する義務と濫用の禁止について述べている。

 「第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」

 憲法21条は、表現の自由の根拠条文だ。

 「第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

 2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」

 憲法22条は、居住移転の自由、職業選択の自由、外国への移住、国籍離脱の自由について定めています。

 「第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 2. 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」

 安倍改憲4項目に加えて、憲法12条、21条、22条をあえて挙げる、高市氏の人権・私権に対する敵意にも似た執念が感じられる。

 この人の、人々の思想・行動の不自由の実現に向けての情熱は、骨絡みの病理ともいうべきもので容易に治癒できるものではなさそうだ。

 安倍改憲案の緊急事態条項が憲法に組み込まれれば、わざわざ個別の条文をあげなくても、憲法で保障されたすべての権利を停止することができる。そうであってもなお、これらの各項を改憲すべき項目としてあげずにいられない高市氏の「自由への憎悪」は際立つ。欧米との間で普遍的価値観を共有している、などということは、将来もしも高市氏が総理になったら建て前であっても言えなくなる。

※これは日刊IWJガイド2021.9.28号~No.3302号に掲載された記事を加筆・修正したものです。

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