9月28日、菅総理最後の会見、岩上安身は参加するも質問できずメールで送付! 高市早苗氏の『電磁パルスで敵基地を無力化』発言について官邸は「差し控えさせていただきます」! 菅総理は高市電磁パルス発言を否定せず! 2021.9.29

記事公開日:2021.9.29 テキスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部)

 9月28日政府は、全国の19都道府県に発令されている緊急事態宣言と、8県に発令されているまん延防止等重点措置について、今月30日の期限をもってすべて解除することを決定した。

 菅義偉総理は、午後7時から、官邸で記者会見を行った。前回の菅総理会見に出席しなかった岩上安身は、抽選に選ばれ、会見に参加した。しかし、岩上が指名されることはなく、その場で菅総理に質問することはできなかった。今月30日で任期を終える菅総理にとって昨日の会見は、退陣会見でもあった。

 会見終了時、菅総理はメールで1問質問を受け付けると述べた。岩上は用意していた質問を、帰社後、当日中に官邸広報室にメールを送信した。以下がその全文である。


 後継者選びとなる総裁選にちなんで安全保障に関する質問を、ひとつさせてください。

 総裁選候補の1人、高市早苗氏が「敵基地攻撃論」とは別に独自に「電磁パルスによる敵基地無力化論」を唱えております。

 具体的には、9月10日のテレビ朝日「ワイドスクランブル」に出演され、中国との戦争を前提に「敵基地を一刻も早く無力化する。これを先にやった方が勝ち」と述べ、ツールとして「強い電磁パルス」を用いる。しかも「向こうからミサイル発射の兆候が見えた場合」に行う、と言われました。つまり中国の先制攻撃のそのさらに先手を取ることを地上波で公言したわけです。

 電磁パルスを発生させる、EMP弾は現実に世界中で研究開発がなされ、防衛省も研究を進めましたが、現在、中断しています。防衛省の研究は「敵部隊の無力化」で、高市氏が実現を主張する「敵基地の無力化」とはケタ違いで、次元が違います。

 この高市氏の論には、ハードルがいくつもあります。

 第1に、強い電磁波パルスを発生させるには、中国領土上空で核爆発を起こす必要があります。つまり日本が核保有する必要があります。

 この点を、石破元防衛大臣に会見でうかがったところ、「EMP弾にはご指摘の通り核爆発が伴うものであり、(中略)日本が核保有すれば、今のNPT体制があっと言う間に瓦解します。それが良い世界のあり方だと私は思いません」とはっきりと懸念をされました。

 総裁選に出馬している岸田候補にも会見でおうかがいしたところ「私は核保有は絶対に反対だ」と述べ、否定されました。

 第2のハードルとして、中国のミサイル発射の兆候を察知することが本当に確実にできるのか、しかもその発射の前に、猛スピードで中国上空まで核ミサイルを飛ばして爆発させられるのか、という問題です。

 技術的に到底困難であり、また「先の先」を取るとは、奇襲に近く、真珠湾攻撃によって敵国の怒り、報復感情を爆発させた、その二の舞となるリスクがあります。

 第3のハードルとして、EMP弾は、ミサイル基地だけを選択的に無力化するのではなく、すべての電子機器を破壊します。高度にコンピュータ化、電子化、情報化された現代社会においてEMP弾を用いることは、広範囲にわたり社会全体をマヒさせ、一般市民の被害が膨大なものになります。

 EMPは現代社会において、無差別大量破壊兵器であり、使用すれば世界中から非難を浴びる可能性があります。

 第4のハードルとして、敵基地の一部を無力化したところで、広大な中国全土の基地および海中の潜水艦のSLBMまですべて無力化できるはずがありません。日本側が先に核の先制使用をしたのですから、中国から残存核戦力による報復核攻撃を受けるのは必至です。

 防衛省の研究によれば、日本は5発の核攻撃で壊滅するという結果が出ているそうです。高市氏は核の先制使用による電磁パルス攻撃で先手を打った後、相手から反撃されることについて何も言及していません。

 菅総理におうかがいします。

 この高市氏の「敵基地無力化論」を支持しますか、反対されますか?その理由を含め、ご見解をお聞かせください。
また、電磁パルスによる「敵基地無力化論」をふりかざす高市氏が後継総裁としてふさわしいのかどうかも、お聞かせください。

 岩上安身  

 菅総理への質問に、官邸から回答があり次第、公開する予定である。

 なお、翌日の29日に官邸報道室から連絡があり、最後の2行、「総裁選はもう終わり、高市氏は総裁候補では無くなったので、削らせて欲しい」との連絡が岩上安身に直接あり、岩上が了承した。

 「菅総理の任期中に回答してアップしてほしい」と岩上が言うと、官邸職員は、「もちろんです。ですので、こうして急いでおります」と答えた。

 29日午後6時過ぎ、官邸からメールで以下の回答があった。

 「総裁選における各候補の主張について、逐一指示や反対を述べることは差し控えます」

 最後の最後まで、「答えない総理」であった。しかし、最後の返答がこれでは話にならない。岩上は官邸に電話をして念を押した。

岩上「これは総理ご自身の回答ですか?」

官邸「総理の回答として出しています」

岩上「内容に『核爆発』を含んでいます。これは総裁選にとどまらず、重大な政策であり、外交問題でもあるので、回答していただきたいんですが」

官邸「そういうことも含めて、差し控えるということです」

 つまり、高市発言に賛成か反対か、白黒付けるのを避けたのである。菅総理自身、4月のバイデン大統領との共同声明で「台湾海峡」に触れるなど、一貫して米国追従であった。その先に生まれた高市発言を否定することもできない、ということではないか。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です