2016年7月26日深夜、神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」に、元職員の植松聖(さとし)死刑囚(当時26)が侵入し、刃物で19人の入所者を刺殺、26人の入所者と職員に重軽傷を負わせた。
日本中を震撼させた、戦後最悪のヘイトクライム、津久井やまゆり園事件から、丸5年が経った。
2021年7月20日(火)には、神奈川県、相模原市、社会福祉法人かながわ共同会主催の追悼式が行なわれた。
一方、8月1日(日)には、神奈川県相模原市のソレイユさがみにて、「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」主催のシンポジウム「津久井やまゆり園事件から5年~マイノリティの人権について考える」が開催された。
「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」は、障害当事者、津久井やまゆり園の元利用者の家族、障害者運動団体、施設関係者、学識経験者などから構成され、この事件を風化させることなく、考え続けていくことを目的とした団体である。
IWJでは、これまでも会の主催するシンポジウムなどを取材してきた。会は、これまで一貫して、植松死刑囚の異常性だけを取り上げることなく、障害者を殺してもいいとする思想がどこで作り上げられていったのか? に着目し、社会全体で考え続けていこうと呼びかけてきた。
東京パラリンピックに際しては、相模原市が聖火を、やまゆり園で採火する方針を立てたが、遺族や被害者家族などから中止の要望が相次いだ。
2021年4月21日、「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」メンバーが、採火の撤回と中止を求める、木村賢太郎・相模原市長宛の要望書を市職員に手渡した。
同会の平岡祐二さんは要望書を読み上げ、「『聖火リレー』はナチスドイツがベルリンオリンピック(1936年)の演出効果のために発案実行したもの」「ナチスドイツは、植松死刑囚と同じ思想にもとづいて『T4作戦』を実行し、公式資料で7万人以上の障害者を殺戮した」「このことは、やまゆり園事件で誰もが想起させられた歴史事実」「その場所で『ナチス発案の聖火』の採火とは、身が震えるほどおぞましいこと」と指摘して、採火の撤回を訴えた。この模様は下記のIWJ記事で御覧いただきたい。
この後、5月6日に相模原市は、やまゆり園での採火を撤回し、別の場所に変更する方針を明らかにした。
- 東京パラ聖火 相模原市「津久井やまゆり園」での採火方針撤回(NHK、2021年5月6日)
シンポジウム当日、会場には19本のひまわりが用意されており、集会の始まりには、当会の世話人・杉浦幹氏の呼びかけにより、この5年の月日を風化させぬよう、参加者全員で19人の犠牲者の方々に黙祷を捧げた。
登壇者には「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」の堀利和氏、在日2世で人権講師でもある李春浩(リ・チュノ)氏、「反差別相模原市民ネットワーク」事務局長の田中俊策氏が並んだ。
今回の集会は、副題に「~マイノリティの人権について考える」として、障害者、在日外国人などの境界を超えて、社会の差別意識に焦点を当てることとなった。
![](https://iwj.co.jp/wj/open/wp-content/uploads/2021/08/495212_01.png)
▲左から司会の「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」世話人・杉浦幹氏、「反差別相模原市民ネットワーク」事務局長・田中俊策氏、在日2世で人権講師の李春浩(リ・チュノ)氏、「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」の堀利和氏(IWJ撮影)