2021年1月29日、東京都港区の原子力規制委員会で、関西電力大飯原発3号機の1次系加圧器スプレイライン配管溶接部に傷が見つかった問題について、9回目の公開会合が開かれた。
大飯原発3号機のスプレイライン配管の当該溶接部にできた傷は、深さ4.4ミリメートル、長さ60ミリメートルの「応力腐食割れ(SCC)」であったことが、すでに明らかとなっていた。今会合では、傷の発生とその進展原因について関西電力が説明を行った。
なお、応力腐食割れ(SCC)とは、「装置、機器を組み立てるときに行われる溶接や冷間加工(室温で加工するプレス成形、曲げ等)による残留応力及び使用時にかかる外部応力により、材料に引張応力がかかりこれと特定の環境の腐食作用とによって材料に割れをもたらす現象」と、一般社団法人機械振興協会は説明している。
関西電力によると、傷ができた部分を切り出して、亀裂(傷)の破面を観察した結果、破面全体にわたってSCCでよく見られる粒界割れが認められ、硬さ計測の結果、著しく硬くなっていることが確認されたとのこと。この観察結果について関西電力は、当該部の亀裂(傷)は、SCCにより発生・進展し、SCCの進展に材料の硬化が寄与した、と結論付けた。
材料の硬化について関西電力は、当該部の溶接時に必要以上の熱が加えられたことをあげ、溶接作業にその原因を求めた。当該箇所の溶接を担当した作業員はベテランと若手が2人一組で作業を行い、「若手が慎重かつ丁寧に溶接したためではないか」と説明した。
以上のことを総括して、関西電力は「今回事象は他部位でも発生の可能性が高いものではなく、特異な事象である」とした。
関西電力は、美浜、高浜、大飯と廃炉決定分を除くと計5基の原発を所有しており、すべてPWR(加圧水型原子炉)である。今回の事象はBWR(沸騰水型原子炉)ではよく見られる現象だが、PWRでも起こる可能性があれば、すべてのPWR型原発を再点検する必要に迫られる。これは関西電力だけにとどまらず、原子力規制委員会が過去にPWRに行った審査も見直しが迫られることを意味する。
関西電力の大飯4号機は同じPWR型だが、昨年12月に大阪地裁が国の設置許可を取り消す判決を出し、国が控訴して係争中であるにも関わらず、今月15日に国の検査が終了したとして再稼働した。