2020年8月3日(月)午後4時15分頃より、東京都千代田区永田町の中央合同庁舎第8号館会見室にて、内閣府 西村康稔コロナ担当大臣の記者会見が行なわれた。
冒頭、当日(8月3日)の新型コロナウイルス感染症の感染状況について報告があった。
西村大臣は、「(モニターに示された数字を見ながら)毎日お示しをしているが、8月2日に1名亡くなられている。ここのところ、2人とか3人とか亡くなられている。大変残念な気持ちです。死亡者の推移は、1011人ということで、亡くなられた方々に心からお悔やみ申し上げる。
諸外国に比べ、非常に少ない数で抑えているということで、評価をしてもらっている。一人の命もこれ以上なくさないように、全力でやっていければと考えている」とし、続けて、「陽性者数は、緊急事態宣言の頃と比べて、あの頃のピークは708人だったが、昨日8月2日は1324人と、かなりの数になっている。
他方、重症者の数は、4月30日のピークは328人、これが8月2日は87人。そして、重症者用病床占有率は、5月15日は9.8%、7月29日は3.4%となっている。やはり、重症者数と重症者病床占有率をしっかり見て、命をお守りするということをやっていかなければいけないと思っている」と述べた。
また、全国と東京の重症者数と重症者病床使用率の推移の比較しつつ、「ともに緊急事態宣言下と比べると沈静化傾向にあるものの、現在、増加傾向にあるのも事実であるので、なんとか重症者の数ももう一段減らすことができるように、新規感染者の数をもっと減らしていかなければならないということだと思う」と結論づけた。
西村大臣からの報告につづき、各社記者との質疑応答となったが、「GDPの1-3月期の統計」、「各県知事からのお盆帰省の自粛要請」などについての質問があった。
お盆の帰省自粛について、西村大臣は「これについては昨日、一昨日も述べてきているが、『家族旅行で、家族で観光地に行って、感染防止策を講じて、家族で過ごす』ことになにか問題があるわけではない」とし、「とにかく感染防止策を徹底していただくことが大事である。 しかし、『家族でおじいちゃんおばあちゃんと会う』または『おじいちゃんおばあちゃんとどこかの観光地に行く、一緒に過ごす』となると、感染のリスクがあるので、話が変わってくる。今週中にも分科会を開いて、専門家の皆さんにご議論をいただき、適切に判断したい」と述べた。
IWJ記者からは、7月26日に行われた経済界への目標比率70%のテレワーク要請について、以下のとおり質問をした。
「7月26日に行われた目標比率70%のテレワーク要請について質問致します。コロナ禍でテレワークが進んだため、都心でも全国でもオフィス空室率が2~3ヶ月連続で上昇しています。また、首都圏の中古マンションではすでに、4月の成約件数が1629件で、『前年比52.6%減』という衝撃的な大幅減となったことも報じられています。これは緊急事態宣言が発出された月です。
この状況で、西村大臣が呼びかけたテレワーク率70%が実現すれば、都心の高層マンションをコアとした不動産バブルが崩壊の一途をたどる可能性があり、不動産バブルの次には、コロナ対策による財政措置で膨らんだ金融バブルが、崩壊する懸念もあります。このシナリオについて、経済再生担当大臣としてのお考えをお聞かせ下さい」
これに対する西村大臣からの答弁の要旨は以下のとおりであった。
「感染防止策を講じながら、社会経済活動を広げていく、その両立を図っていくことが大事である。新たな日常・新しい生活様式を定着させ、広げていくことが大事。そうした観点から、テレワークも、昔の形態に後戻りさせず、引き続き、可能な業態・業種では、継続していっていただきたいと考えている。それが新しい働き方、新しいワークライフ・バランスを生むと考えている。
そういったことが不動産市場にどういう影響を与えるのか? 当然それについては、注目し、分析していかなければならないと思っている。いろんな文献、分析担当部局に投げかけ、いくつかのデータも出てきている。コロナを契機に当然、様々な変化が起こってくる。むしろ変化を起こさなければならない。これまで、5年10年指摘をされてできなかったこと。それを年末までに実行計画を作って、日本全体として、新たな社会、経済をめざして、みんなが新たな日常を作っていければと思っている」
西村大臣の答弁を聞いていると、西村大臣の任務は、実は新型コロナウイルス感染症への対策ではなく、新型コロナウイルスが生じさせた状況を利用することで、今まで変わらなかった、いやむしろ変えてはならなかった社会の「構造」を変えることなのではないかと錯覚を覚えてしまう。そんなはずはないのだが、そう思ってしまうほど、「新たな社会、経済」や「新しい日常の構築」という言葉を強調する。目前の危機である「コロナの再感染拡大」や「テレワークの徹底による不動産バブル崩壊」の懸念を打ち消すためなのだろうか。いくら「新しさ」を強調したところで、「今、そこにある危機」が消えてなくなるわけではないのだが。
なお、不動産バブル崩壊の兆候については、以下の日刊IWJガイド記事でお伝えしている。