(1)2015年の「維新」の政治資金問題については、「その5」「その7」で、「維新の党本部」からの受領交付金の収支計2400万円不記載疑惑を、「その8」で「大阪維新の会」からの受領寄付金の収支計1000万円不記載疑惑を、「その9」で「維新の党国会議員団」からの受領寄付金の収支計800万円不記載疑惑をそれぞれ紹介した。
解説に多くの文字数を要するので、そこであえて紹介しなかっものを、ここで紹介する。
真実は何かを見定めるのが難しい事件である。
以下で登場する「東徹」氏は、2003年に大阪府議会議員選挙で初当選し、以降3期連続当選。大阪維新の会 創設メンバーで、2013年に参議院議員通常選挙で初当選した国会議員である(https://www.azuma-toru.com/profile)
(2)2015年「維新の党国会議員団」(代表・松野頼久。主たる事務所の所在地は東京都千代田区)の政治資金収支報告書(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20161125/0011000036.pdf)には、次の支出が記載されていた。
32頁目
寄付金 200万円 2015年6月10日 「大阪維新の会 住之江(東)」
しかし
2015年「大阪維新の会住之江」(代表・東徹。主たる事務所の所在地は大阪市住之江区)の政治資金収支報告書(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/11318/00228580/27ak0611.pdf)には、「維新の党国会議員団」からの寄付金200万円(2015年6月10日)を受領したとの記載はない。
どちらの記載が真実なのかは確認しなければわからないが、これまで述べてきたように、可能性の高さの点では「維新の党国会議員団」の記載の方が真実である可能性は高いだろう。
もしそうだとなると、「大阪維新の会住之江」は「維新の党国会議員団」からの寄付金200万円(2015年6月10日)の受領を記載していない政治資金規正法違反の不記載罪になる。
(3)では次である。
2015年「大阪維新の会住之江」(代表・東徹)の政治資金収支報告書(前掲)は
訂正を含め2枚目および6枚目
「大阪維新の会」(代表・橋下徹、大阪市中央区)から寄付200万円(2015年6月10日)、同83万円(2015年10月20日)を受領したと記載している。
しかし、2015年「大阪維新の会」(代表・橋下徹、会計責任者・東徹。主たる事務所の所在地は大阪市中央区)の政治資金収支報告書(www.pref.osaka.lg.jp/attach/11318/00228541/27rk0005.pdf)には、
34枚目以降(36枚目)
「大阪維新の会住之江」(代表・東徹)への寄付支出として83万円(2015年10月20日)は記載しているが、寄付200万円(2015年6月10日)の支出の記載はない。
どちらの記載が真実なのだろうか?
確認しないといけないが、通常、寄付を受けた方が記載している以上、上記の場合、寄付した側の不記載の方が可能性が高いと思われる。
(4)ところが、以上に対して、「大阪維新の会 住之江」側は、寄付200万円(2015年6月10日)は「大阪維新の会」からの寄付と記載したが、それが間違いで、「維新の党国会議員団」からの寄付だったと弁明するかもしれない。
載せず、確かに、日付と金額が一致するので、その可能性は一切ないとはないのかもしれない。
その場合でも、政治資金規正法違反の虚偽記載罪になる(単純ミスで故意ではないと弁明するだろうが)。
しかし、その弁明は、なかなか納得できるものではない。
というのは、主たる事務所が東京からの寄付を、主たる事務所が大阪からの寄付と間違えるものだろうか?
おそらく金融機関の口座間で資金移動されているので、その口座に資金移動の記録が残るので、間違いようがないはずだ。
また、「維新の党国会議員団」と「大阪維新の会」とは、「維新」という点では名称が類似しているとはいえ、どう考えても同じではない。一般市民の中には誤解する者もあるかもしれないが、「維新」所属の者が間違えるとは到底思えない。
さらに、東徹は、「大阪維新の会 住之江」の代表であり、かつ「大阪維新の会」の会計責任者である。それなのに、「維新の党国会議員団」からの寄付を「大阪維新の会」からの寄付と間違うとは到底思えない。
政治資金規正法お遵守していたら、「維新の党国会議員団」からの寄付200万円の供与に対し、「大阪維新の会」からの寄付として領収書を作成し、その領収書を「大阪維新の会」に送付するはずだから、何かの勘違いではないかと指摘され、虚偽記載をすることはなかっただろう。
そう考えると、単純なミスとは思えない。
(5)真実は以下であった可能性が高いのではなかろうか。
①「維新の党国会議員団」は「大阪維新の会 住之江」に200万円(2015年6月10日)を寄付し、「大阪維新の会 住之江」はこれを受領し、領収書を作成し、「維新の党国会議員団」に領収書を返送した。その結果、「維新の党国会議員団」は「大阪維新の会 住之江」への寄付200万円を政治資金収支報告書に記載した。
②「大阪維新の会」も、その会計責任者である東徹の判断で「大阪維新の会 住之江」に200万円(2015年6月10日)を現金で寄付し、「大阪維新の会 住之江」(代表・東徹)はこれを受領し、会計責任者が領収書を作成し、東徹に渡した。
③ただし、上記②は、その原資が裏金献金だったために、それを収入として記載できないので、東徹は、裏金として「大阪維新の会 住之江」に横流し寄付したものだった。
それゆえ、東徹は、会計責任者として、「大阪維新の会」の2015年政治資金収支報告に、
裏金献金200万円を収入として記載しなかっただけではなく、「大阪維新の会 住之江」への寄付200万円を支出としても記載しなかった。
また、東徹は、「大阪維新の会 住之江」からの領収書を破棄した。
④「大阪維新の会 住之江」の代表の東徹は、後日、その会計責任者または事務担当者に対し、「6月10日の200万円」は表の会計帳簿にも政治資金収支報告書にも記載しないよう伝えた。
このとき、東徹は、「維新の党国会議員団からの200万円の寄付」があったことを知らず(あるいは失念しており)、「6月10日の200万円の寄付」と伝えれば「大阪維新の会」からのそれであると理解されると思い込んだ。
⑤ところが、「大阪維新の会 住之江」の会計責任者らは、そこで、勘違いした。
あえて代表が政治資金収支報告書に記載してはならない、というのだから、記載してならない「6月10日の200万円」とは、金融機関の口座記録にある「維新の党国会議員団」からのそれだと勘違いし(「維新の党国会議員団」へ送付した領収書は東徹が何らかの対処をすると思い込み)、
勘違いしたまま、「維新の党国会議員団からの寄付200万円」を「大阪維新の会 住之江」の政治資金収支報告書に記載せず、
かつ、「大阪維新の会からの寄付200万円」の方は、東徹代表の意に反して、そのまま「大阪維新の会 住之江」の政治資金収支報告書に記載してしまった。
(6)もしこの推察が真実であれば、
「大阪維新の会 住之江」は、「維新の党国会議員団」からの寄付収入200万円を記載しておらず、そうなると、当然その分を何に支出したのかも記載していないので、収支計400万円の政治資金規正法違反(不記載罪)になる。
また、「大阪維新の会」は裏献金の200万円を収入として記載せず、「大阪維新の会 住之江」への支出200万円の寄付を記載していないので、収支計400万円の政治資金規正法違反(不記載罪)になる。
両者を合計すると、収支計800万円の不記載になる。
(7)そうすると、
「維新の党本部」からの受領交付金の収支不記載疑惑の合計額は計2400万円のままだし、
「大阪維新の会」からの受領寄付金の収支不記載疑惑の合計額は計1000万円のままだが、
「維新の党国会議員団」からの受領寄付金の収支不記載疑惑の合計額は計1200万円になり、
「大阪維新の会」の裏金収支不記載疑惑の合計額は400万円である(ただし、「大阪維新の会 住之江」が収入として200万円を記載しているので実質的には裏金収入額だけが問題となると考えれば、その金額は200万円になる)。
そのほか、「その6」で指摘した、吉村洋文衆議院議員(当時)の政党支部の裏金収支金額は必ずしも明らかになっていないが、現時点では、「訂正」により偽装された貸付金額を参考にして、それと同額の100万円と推定しておこう。
以上を合計すると、2015年の1年だけで約5100万円(同上約4900万円)になる。
(ただし、ここには、「維新」から除名された「公職の候補者」らの不記載は含めていないが、それを含めると5000万円を超えるのは確実になりそうだ。)
(8)マスコミの記者の皆様
前述のように、「大阪維新の会 住之江」側は単純ミスと弁明する可能性が高いと予想されるものの、どう考えてもその弁明は不自然である。
粘り強く取材し、真相を明らかにしていただきたい。
(つづく)