小池百合子都知事率いる「希望の党」は、小選挙区と比例単独をあわせて235人の候補者を擁立した。過半数の233議席をわずかに上回る数である。
「寄せ集め」とも「掃き溜め」とも揶揄されてはいるものの、だろうと、希望の党の候補者全員が当選すれば過半数を獲得し、政権を取ることになる。その可能性は高いとは言えないが、万が一、この「希望の党」に政権を運営する能力や資格があるだろうか?
いくつも気になるポイントがあるが、そのうちの一つが、資金の問題である。
総務省の担当者によると、政党交付金は、政党助成法第8条(※)により、衆議院の場合、前回の衆議院議員総選挙の得票数と、所属国会議員の人数によって算出される。また、同法第6条(※)の規定により、総選挙がある年は、投開票日の翌日が算定基準日になり、全党が届け出を提出することになっている。そのため、今回の新党である「希望の党」と「立憲民主党」は、政党交付金がない状態で総選挙を行うことになる。2党は、10月23日以降、はじめて政党交付金の申請ができる。
※政党助成法:国が政党に対し政党交付金による助成を行うことを定めた日本の法律。
第6条:
政党交付金の交付を受けようとする政党は、その年において総選挙又は通常選挙が行われた場合には、当該選挙により選出された衆議院議員若しくは参議院議員の任期を起算する日(以下この項において「任期の初日」という。)又は当該選挙の期日の翌日(以下この項において「選挙の翌日」という。)のうちいずれか遅い日(当該選挙に係る公示の日から任期の初日又は選挙の翌日のうちいずれか遅い日までの間に他の総選挙又は通常選挙に係る公示の日から任期の初日又は選挙の翌日のうちいずれか遅い日までの期間がかかる場合には、これらの選挙に係る任期の初日又は選挙の翌日のうち最も遅い日とする。以下「選挙基準日」という。)現在における前条第一項各号に掲げる事項を、選挙基準日の翌日から起算して十五日以内に、総務大臣に届け出なければならない。
第8条:
毎年分として各政党(その年分について第五条第一項の届出(第六条第一項の規定の適用がある場合にあっては、同項の届出)をしたものに限る。以下この条において同じ)に対して交付すべき政党交付金の額は、次項に定める議員数割の額と第三項に定める得票数割の額とを合計した額とする。
2 各政党に対して交付すべき議員数割の額は、議員数割の総額に当該政党に所属する衆議院議員及び参議院議員の数を各政党に所属する衆議院議員及び参議院議員の数を合算した数で除して得た数を乗じて得た額とする。
3 各政党に対して交付すべき得票数割の額は、得票数割の総額の四分の一に相当する額に次に掲げる数をそれぞれ乗じて得た額を合計した額とする。
「民進党」が「希望の党」へ合流する際に、多くの有権者が関心を抱き、また懸念もしたのは、政党交付金が「希望の党」の選挙活動に使われてしまうのではないか、ということである。政党交付金の源資は、国民の税金である。改憲にも安保法制にも反対の姿勢を示していた民進党に託された資金を持ち出し、正反対の理念の政党へ流用されることについて、当然の疑問の声が相次いだ。
岩上安身はこれを受け10月5日、以下のようにツイートした。
「前原氏がクーデターを画策したのはほぼ事実。それが政治家の離合集散にとどまらず、税金の私物化・不当使用となれば、背任どころですむか、という話だ。比喩的に『政治的詐欺』と評してきたが、文字通りの刑法上の『詐欺』の疑いすら浮上するのではないか」
小池代表は9月29日の記者会見で、「『お金欲しさに』との批判はまったくの間違い。しがらみのない政治には、お金のしがらみをつくってはいけない」と答えているものの、実際には公認候補者との政策協定書で「党に資金提供をする」ことをしっかり求めているのだ。その不自然さに、民進党内の政党交付金分配や「希望の党」への流用に関する見解についての記事が日々報道されている。
複数の報道によると、「民進党は、国政選挙候補者に公認料を渡しており、9月22日には前職に約500万円が配られた」「10月2日に、民進党は衆院選への公認が内定していた前職に2000万円、元職や新人に1500万円を支給した」とあり、いずれにせよ元民進党議員に高額な金額が支給されていることは間違いない。
- 民進資金に希望が触手?=交付金原資に100億円超【17衆院選】(時事通信、2017年10月4日)
- 希望に流れる民進資金=公金原資、与党は批判【17衆院選】(時事通信、2017年10月1日)
- 民進の政党交付金「国庫に返納すべき」 官房長官(日本経済新聞、2017年10月4日)
また、IWJでは 、今月10月5日に民進党・桜井充参議院議員に岩上安身によるインタビューを行った。岩上は、「市民から、150億円と言われる民進党の資金の使途はどうなっているのかと思われているし、前原代表は説明をしていない」として、桜井議員に意見を求めた。
桜井議員は、参議院議員で衆院選候補者でないこともあり、幹部である常任幹事会のメンバーでありながら、今回の件は前原代表から一切説明を受けていないと明かした。
岩上は「お金の管理は誰が行っているのか」と質問し、桜井議員は「それは代表と幹事長かと思われる」と答えた後、「各々の候補者が決まったので、候補者に対し、公認料を全部含めて振り込まれていると思う」と、旧民進党議員へ支払いが行われたことを明かした。岩上安身はすかさず確認したが、それはもちろん「希望の党」へ合流する議員も対象だった。
岩上は、看板を掛け違えた党へ民進党の資金が流用されることについて、「常識的に、道義的にも問題がある」と桜井議員に投げかけたが、桜井議員は、「気持ちはわかるが」と前置きし、「候補者は、みんな喜んでいろんなところに散っているとは思わない。苦汁の決断だ。怒りもあれば、苦しみもあれば、憤りを感じながら現場で闘っている。きっと(前原代表の)解任の話を出したいと思っている人もいると思う」と複雑な心境を述べた。
桜井議員へのインタビューの、以上記載した部分については、ピックアップ動画も別途作成してあるので、ぜひ御覧いただきたい。
なおインタビューのハイライト動画、全編動画は、以下の記事から御覧いただける。
この一連の、前原氏をはじめ民進党幹部の行為は背任行為にあたらないのだろうか? IWJは有識者に尋ねた。