政治資金問題から見える「維新の正体」その6(2015年吉村洋文衆院議員の政党支部の赤字支出の怪)~ブログ「上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場」より 2019.7.6

記事公開日:2019.7.6 テキスト
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(文・上脇博之)

特集 「ゆ」党再編の要!? 維新の「正体」
※2019年3月27日23:33投稿の本ブログは、上脇博之氏の許可をいただき掲載しています。

すでに吉村洋文氏が「維新の党衆議院大阪府第4選挙区支部」の代表だった2015年のときの同党本部から受領した300万円の交付金・寄付金の政治資金収支報告書への不記載事件について、この連載「その5」で取り上げて問題点を指摘したが、同支部の新たな政治資金問題があったと「日刊ゲンダイ」が報道した(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/250559)ので、この後者の問題について解説しよう。

1 政治資金収支報告書の訂正「吉村洋文衆院議員からの100万円借入とその返済」

(1)すでに紹介したように、吉村洋文氏は弁護士で、2014年12月施行の衆議院総選挙に「維新の党」から立候補して比例代表選挙で当選した。2015年10月1日に衆議院議員を辞職したが、それまでは衆議院議員であり、2014年から「維新の党衆議院大阪府第4選挙区支部」の代表を務めていた。

同支部は、吉村氏が2015年11月22日執行の大阪市長選挙に立候補して当選したので、その後解散しているが、その2015年分政治資金収支報告書は、2016年1月26日に大阪府選挙管理委員会に提出された(第三者による政治資金監査はその直前の同月22日に受けていた)。翌年への繰越額は0円だった(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/11318/00230075/27pq0031.pdf)。

(2)ところが、その提出から7か月余り後の同年(2016年)9月15日に同政治資金収支報告書は訂正された。
その訂正の内容は、同支部が代表の吉村洋文衆議院議員から100万円を2015年1月1日に借入れし、同年12月25日に同氏(吉村市長)に全額返済していたというものである。また、その分、収入額も支出額も訂正されている。

これは、同支部が当初提出した政治資金収支報告書における政治資金規正法違反(不記載罪・虚偽記載罪)の「自白」である(この条文は後で紹介する)。

(3)これに対し、吉村事務所は、どう弁明しているのだろうか?

何と、「日刊ゲンダイ」の取材に対し、驚愕の弁明をしている。

まず、吉村事務所の以下の弁明。

・訂正に関わる会計帳簿の記載を「していなかった」(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/250559/2

これは、政治資金規正法違反の「自白」である。

すでに紹介したように、政治資金規正法は、政治団体(政党を含む)につき、総務大臣または都道府県選挙管理員会に届け出をさせ、その政治資金の収入と支出について会計帳簿を備えるよう義務付け(第9条第1項)、「第9条第1項の会計帳簿に記載すべき事項の記載をせず、若しくはこれに虚偽の記入をした者」を、「3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」に処すと定めている(第24条)ので、吉田事務所の者で、上記借入金100万円について会計帳簿に記載しなかった者は、この政治資金規正法違反になるのだ。

②また、吉田事務所は、次のようにも釈明している。

・収支の詳細を示す文書や資料について「吉村氏本人からのものなので、借用書などは作成していない」。

これは、吉村洋文資料が返済を受けた際に、領収書を作成していないことを含む弁明なようなので、そうであれば、これも政治資金規正法違反である。

同法は、特に政治資金の支出については、「政治団体の会計責任者」らは、「一件5万円以上のすべての支出について、当該支出の目的、金額及び年月日を記載した領収書その他の支出を証すべき書面(・・・「領収書等」・・・)を徴さなければならない。」と定めている(第11条第1項)が、政治団体が「国会議員関係政治団体」の場合は「5万円以上の」とあるのは「1万円を超える」となると定め(第19条の10)、「第11条の規定に違反して領収書等を徴せず、若しくはこれを送付せず、又はこれに虚偽の記入をした者」を、「3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」に処すと定めている(第24条)ので、吉村事務所の者で、吉村市長に100万円を返済した際に、吉村市長から領収書等を徴しなかった者は、政治資金規正法違反になるのだ。

(4)ところが、よくよく考えてみると、「2015年1月1日に吉村議員から100万円を借入れ、同年12月25日に吉村市長に100万円を返済した」というのは、嘘ではないかと思えてくる。

①吉村事務所が「自白」したように、吉村議員との間で100万円について借用書を作成していない。

②吉村事務所が「自白」したように、吉村議員からの100万円の借入について政治資金規正法法に違反して会計帳簿に記載していない。

③「日刊ゲンダイ」が報じているように、吉村市長の「資産等報告書」は、2015年12月19日時点の「貸付金」は「なし」と記載していた。

④吉村事務所が「自白」したように、吉村議員への100万円の返済について政治資金規正法法に違反して吉村市長から領収書を徴していない。

つまり、吉村議員からの借入と吉村市長への返済を証明する客観的なものは存在しないのである。

吉村事務所が本当に吉村市長に対し100万円を返済したのであれば、会計帳簿に借入そのものの不記載に気づき会計帳簿を補正し、その1か月後に選管に提出した政治資金収支報告書に借入とその返済を記載しているはずである。

また、吉村市長に対して本当に2015年12月25日に100万円を返済したのであれば、2015年12月19日時点で「貸付金」は「なし」と記載していた「資産等報告書」は訂正されていたはずであるが、その訂正話されていないのである。

更に言えば、会計帳簿等等への記載を失念したのは、借入そのものを失念したのだろう。そうであれば、返済しなければならないと思うはずがなく、返済できるはずもないのだ。

以上のように考えると、吉村議員からの借入と吉村市長への返済という事実が存在しなかったことが真実であると受けとめる方が自然である。

(5)それでも、100万円の借入とその全額返済がなされたのは真実だったという場合が考えられるが、それは、前述した複数の政治資金規正法違反行為を故意に行い、政治資金収支報告書への不記載をした場合、つまり、初めから借入とその返済を隠蔽するために、借用書や領収書を一切作成せず、会計帳簿に一切記載せず、政治資金監査人にも知らせず、政治資金収支報告書にも記載しなかった場合ではなろうか。
それは、例えば100万円の原資が違法であり、それを察知されないためであれば、ありえないわけではないだろう。この場合は、吉村議員の意向に基づく隠蔽ということになる。

とはいえ、訂正で100万円の借入とその返済を明記したのであれば、意図的に隠ぺいする必要性は実際なかったように思われるので、その可能性も現時点では低いのではなかろうか。

2 赤字支出されていた驚愕の事実

(1)実は、同支部の政治資金収支報告書に記載された収支内容には、驚くべき事実および隠されたと推察できる事実があり、それらを隠すために100万円の借入とその返済が事後にでっち上げられたのではないかと思われるのだ。以下、説明しよう。

同支部は、2014年には収支は一切なく、2015年への繰越額が0円であり(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/11318/00201553/26pq0031.pdf)、2015年分の政治資金収支報告書の訂正前は100万円の借入れが記載されていないので、2015年は党費収入もなく収入0円でスタートしていたのだが、1月の初めから支出がなされてたのである。その結果、訂正前の政治資金収支報告書を見ると、1月は政治資金がほとんどないのに支出がなされており、ある時期まで赤字だったのだ。

・最初の日付の判明した収入があるまで以下の支出があった。

カーテン代 2015/1/6   12,652円
鍵取付大 2015/1/7   31,320円
プリンター代 2015/1/7   55,512円
ポスティング代 2015/1/7   32,400円
自転車代 2015/1/8   92,300円
家具代 2015/1/10   46,787円
照明器具代 2015/1/17   29,500円

・以上によると、1月17日には30万471円の赤字になる。

もっとも、これに対しては、入金の年月日が不明な「その他」の収入があるので、赤字にならないのではないかとの反論が予想される。

そこで、それらは全額2015年初め手の支出前に入金されたと仮定し、かつ、支出の年月日が不明な「その他」の支出は最後に支出されたと仮定し、収入日と支出日同日の場合にはが収入が先だったと仮定して、1月1日から2月上旬までの収支を確認すると、以下のようになった。

・「その他の収入」45,922円と「政治団体からのその他の寄付」7,260円で、収入合計は53,182円。

ここから前述の支出を行うと、1月7日には赤字に突入し、同月17日には247,289円の赤字になる。

・日付の判明している最初の収入は以下。

吉村洋文(文書通信交通滞在費) 2015/1/26 398,400円

・これでやっと151,111円の黒字になる。

・しかし、その後また以下の支出があった。
ポスティング代 2015/1/28   32,400円
塵芥川処理 2015/1/29   16,524円
チラシ制作、印刷代 2015/1/30   97,200円
事務所賃料 2015/1/31   140,000円
チラシ撮影代 2015/1/31   15,000円
電話料金 2015/2/2   17,251円
ゴム印、封筒代 2015/2/3   20,928円
ホワイトボード代 2015/2/6   27,042円
文房具代 2015/2/6   32,000円
看板代 2015/2/6   100,440円

・以上によると、1月30日から再び赤字に転し、2月6日には赤字が347,674円に膨らんでいる。

・日付の判明している2つ目の収入は以下である。
維新の党本部 2015年2月10日 1,000,000円

・これによってやっと、652,326円の黒字になるのだ。

以上のように「維新の党衆議院大阪府第4選挙区支部」の1月の収入が一番多くなり、同月の支出が一番少なくなるようして、収支状況を確認しても、2月上旬までの期間に2度も赤字になっていた、それも約35万円の赤字だったのだ。

(2月上旬まで実際は支出の詳細を記載する必要のない「人件費」や「その他」の支出もあっただろうし、「その他」の収入は年初めとは限らないので、赤字額はもっと大きかったのではなかろうかと推察する)。

(2)念のために、主たる事務所が「維新の党衆議院大阪府第4選挙区支部」(大阪市北区天神橋)と同じではないが、代表(および事務担当者もか!?)が同じである「吉村洋文後援会」(代表・吉村洋文。大阪市北区西天満)の政治資金(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/11318/00228508/27yk0111.pdf)から支出れた可能性がないか検討した。
しかし、この政治団体の2014年からの繰越額は10万3000円弱しかないので赤字を一時肩代わりするには足りない(吉村氏から元日に48万円の寄付を受領しているが、これは事務所の無償提供分なので金銭ではないから支払いには使えない)。もちろん、一時肩代わりをしても、その貸し借りは各政治資金収支報告書に記載しなければ政治資金規正法違反である。

3 新たな疑惑・・・裏金収入と裏金支出があったのではないか!?

(1)政治資金としての収入がなければ、そもそも支出はできない。そこで、赤字の事実から2つの場合が考えられる。
一つは、同支部の政治資金収支報告書に記載されている2月上旬までの支出そのもの(あるいはその一部)が実際には存在せず、当該支出の記載は虚偽の記載だったという場合である。これも政治資金規正法違反(虚偽記載)になる。
これはありえないわけではない。しかし、同支部の会計責任者だった人物は、そのような支出がなかったとの訂正をしていないし、政治資金監査人も会計帳簿等を確認していると明示している以上、現時点では(支出が虚偽だったとの事実が確認されない限り)支出の記載は真実だということを前提にせざるをえない。

(2)2つ目の場合は、実際に政治資金収支報告書通り複数の支出がなされたのが真実であり、そのためのカネ、すなわち、政治資金収支報告書に記載されていないものの政治資金収入が間違いなくあったという場合である。ただし、それは100万円の借入金でなければならない必然性はない。むしろ前述したように100万円の借入はありえないのだから、それ以外のカネだろう。
例えば2014年12月の衆議院総選挙時または2015年初頭に裏献金の受領があり、その政治資金があるから裏の会計帳簿上は赤字にならないので、平然と支出がなされたのではなかろうか。あるいは、政治資金収支報告書に記載できない支出をしたため、その財源である寄付を政治資金収支報告書に記載できなくなったので、その寄付を裏献金にし、当初の会計帳簿を裏帳簿にし、別に表の帳簿を作成したのではないか。
現時点で分かっている情報に基づくと、このいずれかが真実だった可能性が一番高い。
政治資金管理人は、収入と支出を完全に分けて作成されている表の会計帳簿を確認させられたので赤字に気づかなかったか、あるいは、赤字に気づいても、最終的な収支の帳尻があっていたし、特に支出につき会計帳簿と領収書などが合致していたので、赤字だったことを指摘しなかったのかもしれない。政治資金監査人は形式的なチェックしかできないからだ。

(3)選管に当初提出した政治資金収支報告書の収支では前述したように赤字になる。本当に100万円の借入があれば赤字にはならないし、本当に年内返済がなされれば、それらを不記載にする必要はなかった。むしろ、100万円の借入れとその返済を記載する方が赤字にならず同支部にとって都合が良かった。裏金収支の疑惑も生じないからだ。本当に借入があれば、それを会計帳簿や政治資金収支報告書に記載しない方があまりも不自然すぎる。
やはり実際には100万円の借入とその返済が存在せず、それゆえ会計帳簿にもそれを記載しなかった。裏金収入があったため当時は裏帳簿や当初の政治資金収支報告書では赤字になることに気づかなかったので、借入で黒字にするという偽装工作を思いつかなかったのだろう。それが真実としか思えない。

ところが、その後、選管に提出した政治資金収支報告書の収支では赤字になっていたことを誰かに指摘され、あるいは内部の誰かが気づいたのだろう。そして、裏金収支の発覚がなされないよう、会計責任者らは政治資金収支報告書を「訂正」して偽装工作をせざるをえなくなったのだろう。
訂正するとはいえ、どう訂正するのか。吉村議員が代表だった「維新の党衆議院大阪府第4選挙区支部」は、その2015年分政治資金収支報告書の訂正の時点で解散しており、翌2016年への繰越額は0円なので、新たに繰越額をつくるわけにはいかない。裏献金を収入に記載するわけにはいかないし、もしその分収入増にすればその分の支出も記載しないといけないが、裏金支出を記載するわけにはいかない。この訂正はできないと判断したのだろう。
2015年2月上旬までの赤字を解消して黒字にしながらも、収支に一番影響しない訂正とはぢのようなものなのか?
それは「借入とその全額返済が年内にあった」かのように形式的な辻褄合わせの訂正だったわけだ。つまり、100万円の借入とその返済という訂正は、裏金収支を気づかれないようにするためだったという疑念が生じるだ。

政治資金規正法は、政治資金収支報告書を作成し、届け出先に同報告書を提出するよう義務付けており(第12条第1項)、。これは、政治団体が解散した場合にも適用される(第17条第1項)。
そして、「第12条、第17条・・・に違反して第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に記載すべき事項の記載をしなかつた者」や「第12条第1項若しくは第17条第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者」を、「5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金」に処すと定めている(第25条第1項)。

吉村氏から100万円の借入とその返済があったという政治資金首位氏報告書の訂正は、虚偽であり、裏金の収支も含め政治資金規正法違反(政治資金収支報告書の虚偽記載罪および不記載罪)になるのではないか。もし、それに合わせて会計帳簿も「訂正」すれば虚偽なので、政治資金規正法違反(会計帳簿の虚偽記載罪)になってしまう。

(4)吉村氏は、自身の貸付金とその返済受領の有無の問題なのだから、「会計責任者らに任せていたので事情を知らない」と逃げることはないだろう。
上記の疑念を払拭するのであれば、100万円の貸付の経緯をはじめ、金融機関の口座の記録、会計帳簿や領収書の控えなどすべてをマスコミに公表し、何が真実だったのか、当時の衆議院議員として説明する責任がある。

(つづく)

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