(1)政治資金問題から見える「維新の正体」について、連載を開始した。
「その1」で、「維新」の離合集散の歴史を紹介したが、今回の投稿に関係する限りで、それを再掲しておく。
・2014年9月、「日本維新の会」は「結いの党」を事実上吸収する形で「維新の党」に改変した。
・2015年11月、「維新の党」から離党したグループは国政政党である「おおさか維新の会」を結成した。
・「おおさか維新の会」は2016年8月に「日本維新の会」に改称された。
以上において注意を要することは、
2014年に「結いの党」を事実上吸収する形で「日本維新の会」は「維新の党」へと改変したものの、翌2015年には「維新の党」から離党したグループは、(本部が解散していないため)その支部も同年に解散している、ということである。言い換えれば、政党支部は名称変更して存続してはいない、ということだ。
また、「おおさか維新の会」は2016年に「日本維新の会」へと改称しているので、関係の政治資金収支報告書を確認する際には、そのことを前提に政治資金収支報告書の分析を行う必要があるということだ。言い換えれば、2016年における「おおさか維新の会」への政治資金の支出は「日本維新の会」への支出であり、「おおさか維新の会」の収支は「日本維新の会」の政治資金収支報告書で確認する必要がある(ただし、改称前に解散している「おおさか維新の会」の収支は「おおさか維新の会」の政治資金収支報告書を確認することになる)。
(2)橋下徹氏は、2015年に、「維新の党」から離党したグループは残った政党交付金(税金)を国庫に返納する旨、公言した。
ところが、同年、「なんば維新」を結成し、「維新の党」から離党したグループ(大阪グループ)は残金を「なんば維新」に寄付してしまい(合計9912万円超)、その結果として政党交付金の国庫への返還の約束を反故にした旨、報じられた(http://hunter-investigate.jp/news/2016/02/post-825.html)。
この時の政治資金の移動については、「なんば維新」の2015年分政治資金収支報告書で確認できる(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20161125/3185900006.pdf)。
そして、「なんば維新」は、翌2016年に、「おおさか維新の会」の複数の支部に寄付し、解散したのである(http://hunter-investigate.jp/news/2017/12/-12-2660001012-1218500-18-12.html)。
このことは、「なんば維新」の2016年分政治資金収支報告書で確認できる(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SD20161222/099.pdf)
報道の通りであれば、「なんば維新」を迂回させて政治資金(政党交付金)を確保し続け、その国庫への返還の約束を反故にしたことになる。
なお、「なんば維新」は、2016年に、「維新の党」と「維新の党国会議員団」から計2億4314万円超の寄付を受け、「おおさか維新の会」に同額を寄附している。
(3)「日本維新の会」は「身を切る改革」を政策提言として掲げている(https://o-ishin.jp/)。
しかし、例えば、政党助成金は、憲法違反でもあり民主主義にとって有害でもある(参照、上脇博之『誰も言わない政党助成金の闇』日本機関紙出版センター・2014年、同『告発!政治とカネ』かもがわ出版・2015年)が、日本維新の会は、政党助成金の廃止を唱えているわけではない(後掲の政策提言やマニフェストにも、政党助成金の廃止はない)し、毎年それを受け取り続けてもいる。
2016年の「本年の収入額」は約13億3073万円超で
(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20171130/0000500086.pdf)
そのうち政党交付金は7億805万円超で、「本年の収入額」の約53%を占めるのだ
(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SK20170922/TK/0500000000_01.pdf)。
2017年の「本年の収入額」は約17億9863万円超で(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20181130/0000600111.pdf)、
そのうち政党交付金は10億5966万円超で、「本年の収入額」の約59%を占めるのだ(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SK20180921/TK/06000000001.pdf)。
政党交付金への依存度は高くなっている。
「日本維新の会」の「身を切る改革」とは、有権者を騙す表向きのもので、本音ではないようだ(政治資金以外では、議員定数の削減を主張しており、議会制民主主義に逆行する改悪を唱えている)。
「維新」は、事実上の税金である政治資金を投入した住民投票の結果を無視するだけではなく、税金に依存する、羊頭狗肉の政党でもあるのだ。
(4)「企業団体献金を禁止」すると政策提言している(https://o-ishin.jp/policy/act02/)し、2017年衆議院総選挙のマニフェストにも同様の内容の公約を掲げていた(https://o-ishin.jp/election/shuin2017/common/pdf/manifest.pdf)。
このこと自体は評価できる。企業が政治献金をすることは、株主の政治的思想等を侵害するし、法人の権利能力の範囲外であるから、本来なら法律で禁止されるべきだからだ(参照、上脇博之『財界主権国家・ニッポン』日本機関紙出版センター・2014年、同・前掲『告発!政治とカネ』)。
しかし、事実上の企業献金である、企業が政治資金パーティー券を購入することについては、何ら言及してはおらず、その禁止まで明言してはいないのだ。
(5)では、「日本維新の会」とその国会議員の政党支部・政治団体は、政党助成金を含む政治資金を節約しながら大切に支出しているのだろうか?
ここでは、「日本維新の会」本部に限定して、その政治資金の支出内容を検討してみよう。
注目されるのは、「大会費」とそこでの「講演料」の支出である。
「日本維新の会」本部の2017年分政治資金収支報告書
(www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20181130/0000600111.pdf)
の12枚目をみると、
「大会費」として合計953・8万円を支出している。
そこでは「党大会会場費」は1つしか記載されていないが、「会場費」は複数記載されている。
インターネット検索すると、「2017年3月25日(土) 日本維新の会平成29年党大会」
(https://o-ishin.jp/news/2017/03/28/2511.html)。
「日本維新の会 臨時党大会「代表選実施の可否など」 2017.11.25」
(https://h-ishin.com/ishin-party/20473/)
がヒットした。
これは、政治資金集めのパーティーではないので、その経費の財源は、1億3453万円余りの党費ということになるわけであるが、カネに色がついていない以上、事実上政党交付金から支出されていると言って構わないだろう。
「大会費」合計953・8万円のうち、2017年5月31日と9月1日に、それぞれ「講演料216万円」(合計432万円)が講演者の所属法人1社に支払われている。
これによると、同じ人物が講演した可能性が高いようだ(詳細は次の投稿で紹介する)。
しかし、2016年分の政治資金収支報告書を見ると、「大会費」として合計546万円超が支出されていたが、(記載義務のある5万円を超える)講演料の支出はない(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20171130/0000500086.pdf)。
念のために「維新の党」の2015年分の政治資金収支報告書を見ても、「大会費」の支出があるものの、そのほとんどが「会場費」であり、(記載義務のある5万円を超える)「講演料」の支出はない(http://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20161125/0000100129.pdf)。
つまり、大会において(5万円を超える講演料の)講演が行われるのが恒例だったわけではない。
前述したように「大会費」は、計546万円超(2016年)から計953・8万円(2017年)へと増えている。差額は407万円程度。
その主たる原因は、講演料計432万円の支出だ!
もちろん、大会で講演の企画があること自体が違法であるわけではないし、政治的に不適切というわけではない。講演を聴き学習して、これまでの「立憲主義と民意を蹂躙する安倍政権の暴走を助ける政治」から「その暴走を阻止する政治」へと体質改善するのであれば、講演は有意義だろう。
しかし、税金(政党交付金)を受け取っている政党としては、講演料に超破格の432万円も支出するのは異常である。
このような政党や政治団体を見たことはない。(10万円、20万円、30万円の講演料を支払っているところはある。)
かりにその講演者の講演内容が素晴らしく1回の講演で216万円を支出する価値があったとしても、税金に依存する政党である以上、講演料の高くない別の人物に講演依頼すべきだろう。
百歩譲って、超破格の講演料を支払っても、その人物に講演依頼する必要があったとしても、同じ人物を2回目も講演依頼するのは、どう考えても適切とは思えないし、「身を切る改革」とは矛盾する。
やはり「日本維新の会」の「身を切る改革」とは、理性ある国民が期待する内容ではないし、それとは逆行する実態なのである。
(つづく)