企業や権力に反対する労働運動が威力業務妨害!? 恐喝!? この流れは絶対に跳ね返さないといけない!学習会「関生支部への大弾圧は何の始まりか?」 2018.12.21

記事公開日:2019.1.26取材地: テキスト動画
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(取材:IWJ関西中継市民・高砂俊治 文:花山格章)

 「これは企業の枠を超えた、産業別の労働運動への弾圧だ!」

 労働事件に詳しい弁護士の永嶋靖久氏はこう指摘し、「企業や権力に反対する労働運動が『威力業務妨害、恐喝』と言われかねない。これは、絶対に跳ね返さないといけない」と力説した。

 全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、関生支部=かんなましぶ)の執行委員長や幹部、組合員らが、2018年夏以降、複数回にわたって大量に逮捕された事件を巡って、2018年12月21日、学習会「関生支部への大弾圧は何の始まりか?」が、大阪市西区の学働館・関生で行われた。主催は労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会。講師に永嶋氏と、沖縄の米軍基地への反対運動を続け、自身も逮捕された経験のある山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)を迎えて、労働運動への弾圧という視点から一連の事件を読み解いた。

 永嶋氏は、関生支部と対立する大阪広域生コンクリート協同組合(以下、広域協組)の不当労働行為に触れ、「かつて広域協組は、関生支部と一緒に大阪府下の生コンプラントのほぼ100%を組織した。これにより、セメントメーカー、ゼネコンに対して価格決定力を持つことになった。だが、儲けを手に入れた途端、労働組合との約束を守らなくなった。そのため、2017年12月にストライキをしたところ、広域協組は関生支部を潰す動きに入った」と語り、それが今回の関生支部関係者大量逮捕の背景にある、と示唆した。

 山城氏は、「常識では考えられない労働組合への弾圧が、まかり通っている。関生に対する弾圧というより、ひとつの社会勢力に対する弾圧。この状況を変えるために、弾圧を断固として許さず、権力の闇の勢力をはねのけていこう」と呼びかけた。

 また、沖縄の辺野古の埋め立て工事について、安倍内閣がやっていることは開き直りと脅迫だと批判し、「(政府は)どうにもならない時は警察の力でねじ伏せる。そういう状況で12月14日に埋め立てを強行したが、誰がどう考えても、政府のやり口は違法そのもの。私たちは怒りを込め、裁判が機能することを求め、三権が分立することを求め、この社会に民主主義が実現することを望まなければならない。あきらめるわけにはいかない」と話した。

 さらに、共謀罪の発動を危惧して、「このままでは、機動隊の公務を妨害した(反対運動の)リーダーに同調した者は、共謀で牢につながれることになる。こんな馬鹿げたことを、今の権力はやりかねない。『すべては権力のためにあるんだ』と言わんばかりだ。われわれは逃げるのではなく、したたかに闘う決意を固めよう」と力を込めた。

 IWJは、2018年12月8日に行われた、労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会主催の集会も取材した。ぜひ、以下のURLからご覧いただきたい。

 また、以下の記事もあわせてご覧いただきたい。

記事目次

■全編動画

  • 講演 永嶋靖久氏(弁護士)/山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)
  • タイトル 関生支部への大弾圧は何の始まりか?(大阪市) ―講演 永嶋靖久氏(弁護士)、山城博治氏(沖縄平和運動センター議長)
  • 日時 2018年12月21日(金)18:30〜20:30
  • 場所 学働館・関生(大阪市西区)
  • 主催 労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会
  • 告知 連帯広報委員会サイト

業界で集団交渉の形をつくり、セメントメーカーやゼネコンに対する価格交渉力を担ってきた関生支部

 はじめに、永嶋氏から生コン産業についての説明があった。昔、セメント産業は、セメントの製造、生コンの製造、生コンの輸送がひとつの企業で行われていた。それが工程別に切り離されていったのは、企業の法的な雇用責任を分散化させるためで、結果的に、数社のセメントメーカーが膨大な数の生コン製造、輸送の中小零細企業を支配するようになった。生コンを輸送するミキサー車の運転手は、それら中小企業のさらに外に位置するという。

 「賃上げなど、中小零細企業ひとつひとつの労働組合が交渉しても、労働条件の改善は非常に困難。だから、関生支部は初期の運動で背景資本を追及した。セメントメーカーが、生コン製造や生コン輸送の会社を実質的に支配している。形式は別の企業だとしても使用者としての責任を課す、という使用者概念を拡大しなければならない、と運動した。

 もうひとつは集団交渉。関生支部は中小零細企業を集めて、労働組合と使用者の間に約束を作ってきた。ただし、集団交渉にも限界がある。そこで中小企業事業協同組合法にもとづき、中小企業で協同組合を作って、セメントメーカーやゼネコンに対して価格交渉力を持つようにした。そういう事業協同組合の運動を、関生支部も一緒になって進めてきた」

儲かり始めると関生支部つぶしへ動いた広域協組!警察権力による弾圧が始まる以前から不当労働行為があった!

 大阪には前述の広域協組があり、関生支部と協力して大阪府下の生コンプラントのほぼ100%を組織化した。広域協組に入っていなければ仕事が取りにくい状況が、長い年月をかけて出来上がっていったという。

 「これにより(協同組合側が)セメントメーカー、ゼネコンに対して価格決定力を持つことになり、生コンの値段が上がる。広域協組は利益を手にするが、その途端に労働組合との約束を守らなくなった。そのため、2017年12月にストライキをしたところ、広域協組は関生支部を潰す動きに出たのだ」と永嶋氏は語る。2018年1月23日、広域協組は理事長の名前で、大阪府下ほぼすべての生コンプラントに対して、「連帯労組と接触・面談の禁止」を通達した。

 「これは、関生支部と交渉するな、ということだ。この通達は、傘下の企業に不当労働行為を命じているとしか読めない。その中にある『決議の趣旨に反した場合は厳正な対処を行う』というのは、この通達に従わないと仕事を回さないという意味だ」

 永嶋氏は、関生支部への警察権力による弾圧が始まる以前から、不当労働行為によって膨大な数の仕事が奪われていたと説明し、「それでも屈しない関生支部に対して、今回の刑事弾圧が始まった。つまり、犯罪をしたかどうか、という話ではない」と口調を強めた。

工事現場のカラーコーンが「使用許可なしに置かれている」と指摘したら「業務妨害」に!?

 続けて永嶋氏が、一連の刑事弾圧の概要を語った。

 「湖東(ことう)生コン協組事件は、関生支部の組合員と湖東協組理事が、大手ゼネコン関係者に『湖東協組の生コンを使え』と脅したとされて、恐喝に問われた。また、関生支部の組合員が、滋賀県の工事現場でカラーコーンが使用許可なしに置かれていると指摘したことが、『軽微な不備に因縁をつけ業務を中止させた。嫌がらせだ』として業務妨害に問われた。しかし、工事現場での法令違反は実際にあったことで、(業者側は)警察からの指導で是正している。

 大津生コン協組事件。これは、組合員が大津協組の幹事長らとハウスメーカーの現場で『道路使用許可通りに作業していない。汚水を垂れ流している』と指摘したこと。それが業務妨害だとされた。

 最初の湖東協組事件は協組の理事が逮捕されて、恐喝未遂で起訴されている。大津生コン協組事件は、基本的に内容は同じはずなのに理事は1人も逮捕されていない。しかも、威力業務妨害だけで起訴している。非常に恣意的な事件の作り方をしている。

 宇部三菱と中央大阪の事件は、2017年12月にあったストライキで、組合員がセメントの運搬車やミキサー車の前に立ち塞がったことが、業務妨害とされた。現場に行った19人が逮捕され、11人が不起訴になった。また、現場には行っていない4人も逮捕され、うち1人が不起訴だ」

企業や権力に対する労働運動が「威力業務妨害、恐喝」に!「弾圧というこの流れは、絶対に跳ね返さないといけない!」

 永嶋氏は、「滋賀県警が事件にしている湖東生コンと大津生コン。コンプライアンス活動を恐喝の手段にしているというが、関生支部は以前から、工事現場で『道路法違反がある』『安全衛生法違反がある』と指摘する活動はやってきている。違反していた業者から業務妨害禁止の裁判を起こされたこともあるが、一度も企業側は勝ったことはない。関生支部のコンプライアンス活動は適法だ、と高等裁判所が判断している」と話す。

 宇部三菱、中央大阪の事件の勾留理由開示の公判で裁判官は、「労働組合の活動は暴力によらない限り犯罪にならない」という労働組合法1条2項を、勾留にあたって検討していないと発言している。「これが今起きている事態。一連の弾圧は、組合運動に対する弾圧だ」と永嶋氏は危機感を表明する。

 「滋賀の事件の起訴状には『協同組合と提携する関生支部』と繰り返し出てくるが、そういうことに対する弾圧の意味もある。企業の枠を超えた産業別の労働運動の弾圧、という意味は非常に重い。

 大阪では広域協組が母体企業や警察権力と一体となって、企業や権力に反対する労働運動を『威力業務妨害、恐喝』と言いかねない。弾圧というこの流れは、絶対に跳ね返さないといけない。何が起きているかを考えて、もっと大きな広がりで反撃していかないと大変である」

常識では考えられない弾圧!「労働者は力がないから集団で交渉する。それを恫喝と言われたら交渉にならない!」

 次に登壇した山城氏は、「常識では考えられない労働組合への弾圧がまかり通っている。単に、関生支部に対する弾圧というより、ひとつの社会勢力に対する弾圧だ」と指摘した。

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