2018年10月12日(金)に、防衛省で、岩屋毅 防衛大臣の定例記者会見が行われた。岩屋大臣からはとくに報告はなく、冒頭から記者との質疑応答になった。
IWJは、陸上自衛隊が種子島の民間地域で行う日米合同軍事訓練(※1)について質問した。
(※1)陸上自衛隊が種子島の民間地域で行う日米合同軍事訓練:
この問題は、立憲民主党の川内博史衆議院議員の9月28日付のツイートで指摘されたことに端を発する。川内議員のツイートは以下の通り。
「政府は、日米安保史上初の陸上民間地域での日米合同軍事訓練を種子島で行なおうとしている。防衛省は、鹿児島県知事に地域の使用許可申請をした。この時期に施設区域外で、合同訓練をする必要があるのか?先日の南シナ海の潜水艦訓練もだが、なぜ自ら緊張を高める行動を取るのか?知事は許可するのか?」
- 川内博史衆議院議員ツイート(2018年9月28日)
「種子島における日米合同訓練についてお聞きします。その作戦名が『ブルークロマイト』とあります。クロマイト作戦とは朝鮮戦争時の米海兵隊の仁川(インチョン)上陸作戦(※2)の作戦名であり、この作戦では日本人が第二次大戦時の老朽艦を使って海兵隊員の79%を運びました。
(※2)朝鮮戦争時の米海兵隊の仁川(インチョン)上陸作戦:
朝鮮戦争中の1950年9月15日、国連軍がソウル近郊の仁川に上陸して奇襲を仕掛け、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)からソウルを奪還した作戦のこと。国連軍最高司令官のマッカーサーが作戦を立案した。作戦のコードネームは「クロマイト作戦」。仁川上陸作戦を機に戦況は大きく変わり、国連軍は攻勢に転じた。
- 仁川上陸作戦(Wikipedia)
なぜ、年度当初の訓練計画にはなかった訓練が突然決まったのですか? 米軍が第二次朝鮮戦争を準備しており、そこに自衛隊も巻き込むための訓練なのでしょうか?」
この質問に対し岩屋大臣は「種子島の空港を使っての訓練は、着上陸訓練と聞いておりますが、そのような意図があってのことではないと思います。着上陸訓練というのは自衛隊もやっておりますし、日米でもやっておりますし、一連の様々なタイプの訓練の一環だと思います。特別な意図をもっての訓練ではないと思います」と曖昧な回答に終始した。
作戦名は米軍が決めていて、岩屋防衛大臣自身は、命名の理由すら知らされていないのかもしれない。しかし、そんな「何も知らない人」が防衛大臣では困る。あまりにも頼りない。
日本人の多くが、鈍感な主要メディアも含めて、朝鮮戦争の記憶を風化させてしまっても当事国の記憶は風化しない。北朝鮮側は、この作戦名を聞けば、朝鮮戦争時の分岐点となった仁川上陸作戦をただちに想起し、今度は日米合同軍として朝鮮半島に上陸してくるのかと、警戒心を強めてしまうかもしれない。今行われている朝鮮半島の非核化のプロセスにも水を差すなどの影響が出るのではないか、と懸念される。
たかが作戦名とはいえ、されど作戦名である。命名の意図が疑われるのは、当然である。
しかも、2017年には、朝鮮戦争時のクロマイト作戦を描いた映画「オペレーション・クロマイト」(※3)も公開されている。同じワードを用いた作戦名の訓練を行えば、何か関連があると思わざるを得ない。
(※3)映画「オペレーション・クロマイト」:
2016年に制作された韓国映画。クロマイト作戦と、同作戦実行前の潜入作戦を描いている。韓国では興行収入ランキング初登場第1位、観客動員数は700万人以上を記録する大ヒット映画となった。なお、韓国での公開日は、朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた7月27日。
在日米軍と自衛隊の関係については、下部関連コンテンツからご覧いただけます。