翁長雄志・前沖縄県知事の急逝に伴っておこなわれた2018年沖縄県知事選は、結果としては、オール沖縄が支援する玉城デニー氏が、自民、公明、維新、希望が推薦する佐喜真淳(さきま あつし)氏に8万票の大差をつけて圧勝した。しかし、9月30日に開票結果がわかるまでは、接戦が予想されていた。
▲玉城デニー氏(IWJ撮影、2018年9月7日)
佐喜真陣営は、選挙戦における最大の争点であるはずの辺野古新基地建設問題について、辺野古の「へ」の字も言わない「争点隠し」を徹底。来沖した菅義偉官房長官は、街宣で佐喜真氏と並んでマイクを握り、「携帯電話料金4割値下げ」という、国にも県にも実現できる権限のない虚偽の公約を釣り餌として沖縄県民の気を引こうとした。さらに、公明党の遠山清彦衆議院議員は自らデマを発信して玉城氏を個人攻撃した。佐喜真陣営は、なりふり構わずに卑劣な手口で選挙運動を展開していったのである。
「玉城氏はそれなりに優位にあると思うが、守りきれるかどうか。支持をどう拡大し守るかが知事選を闘うポイントだと思います」
このように指摘したのは、会派「沖縄の風」幹事長の伊波洋一参議院議員。IWJ代表・岩上安身が9月7日におこなったインタビューで語ってくれた。
▲伊波洋一参議院議員(IWJ撮影、2018年9月7日)
結果的に玉城氏は、過去最多となる39万6632票を獲得して当選を果たした。民意は、辺野古新基地建設問題が重要な争点であることを、そして、新基地建設に反対していることを明確に示した。
玉城新知事誕生を受けて、IWJは10月5日、伊波議員に取材し、県知事選を振り返りながら今後の展望をうかがった。
なお、「検証とこれから・9.30沖縄県知事選」シリーズの第1回目の記事は、元沖縄タイムス屋良朝博氏、翁長雄治那覇市議、平良さとこ那覇市議への取材をもとに、第2回目の記事は沖縄国際大学の佐藤学教授への取材をもとにして執筆・掲載している。ぜひ、あわせてご覧いただきたい。
県知事選で玉城氏に投票した創価学会員は「2割から3割程度、あるいはもっとそれ以上」!?
伊波議員は、今回の沖縄県知事選を次のように振り返った。
伊波議員「今回の沖縄県知事選は、争点は明らかに辺野古新基地建設問題だと思いますが、佐喜真陣営はそれを争点化しないという方針でした。それが結局、玉城陣営の言っていることに答えないことになって、県民としては、それに対する不信感も出たのではないでしょうか。
最終的には、翁長雄志知事がこの4年間取り組んできた姿勢と、経済政策でも大きく前進させましたので、そのことを含めて県民の思いが玉城デニー氏に集まったと思います」
▲2018年7月27日、生前最後となった翁長雄志知事の会見(IWJ撮影、2018年7月27日)
伊波議員は続けて、公明党を支える創価学会員の票が玉城氏へ流れたことについて、次のように語った。
伊波議員「選対本部にも創価学会員と思われる方々からの問い合わせなどがありました。ただ、表立って多くの方々が動いたわけではないと思います。でも、結果的には2割から3割程度の学会員の方々が、あるいはもっとそれ以上かもしれませんが、公明党の指示には従わなかったのではないでしょうか」
「日本政府が辺野古新基地建設の断念を引き止めている」!? さらに、「第4次アーミテージ・ナイレポート」で日米合同軍の設置が提言される!
ウチナンチュー(沖縄の人)の母と米海兵隊の父をもつ玉城氏が新たな沖縄県知事となったことは、米国も高い関心を示している。10月1日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、「米軍による沖縄の占有の減少に向けて」と題して玉城新知事誕生を報じ、「今こそ日米両政府が沖縄に歩み寄るとき」だとした。
伊波議員は、在沖縄米軍基地に対する米国の関心の高まりをどのように考えているのか。
伊波議員「辺野古の問題でいうなら、米国の連邦上院ではレビン元軍事委員長、マケイン上院議員、ウェッブ上院議員らが、辺野古新基地を作ることに反対(※)し続けていました。2011年頃から12~13年頃までは工事が止まっていましたよね。そこを仲井眞弘多(なかいま ひろかず)県政が、辺野古埋め立てを承認したことによって、県民がそう思うのだったら、ということで基地建設に踏み切るという話になります。
(※)米国の連邦上院ではレビン元軍事委員長、マケイン上院議員、ウェッブ上院議員らが、辺野古新基地を作ることに反対:
2011年4月、レビン軍事委員長、マケイン上院議員、ウェッブ上院議員らが辺野古に視察に来た。3人は帰国後、「辺野古移設は困難。日本にとっても震災復興があって負担が大きい。海兵隊の家族は、経費のかからないハワイや本国に移せ」と提案していた。レビン氏に至っては、「辺野古の海はきれいすぎる。基地など作れるか。信念をもって予算をつけるのが自分たち政治家の義務なのだから、これは認められない」と話していたという。詳しくは、2013年4月2日におこなわれた岩上安身による伊波洋一氏インタビューをご覧いただきたい。
▲故・ジョン・マケイン上院議員(Wikipediaより)
▲カール・レビン元軍事委員長(Wikipediaより)
▲ジム・ウェッブ上院議員(Wikipediaより)
米国にとって辺野古はまったく必然ではないはずなので、やはり日本政府が辺野古新基地建設の断念を引き止めているように見えます。米国が、沖縄県民にこれだけ抵抗されてなおも押し続けると、米国自身にとってマイナスだというイメージが出てくるのではないでしょうか」
トランプ米大統領はPA(パックス・アメリカーナ)からの徹底を是とする。日本に対して、「米国が守ってやるから米軍基地を置かせろ」とは考えない。伊波議員は続けてこう語った。
伊波議員「朝鮮戦争を終戦にするということが近いうちにおこなわれれば、やはり、朝鮮戦争シフトで沖縄に部隊が置かれているわけだから、部隊を大きく軽減していく流れが米国に起こりうるのではないでしょうか。朝鮮戦争を終戦させる流れは、より現実的に、ひょっとしたら今年中に起こるかもしれませんし、その流れを我々は歓迎したいと思います。
日本の国民には、米軍がいないと不安な思いがあるかもしれないですけど、沖縄にとっては沖縄から全ての米軍基地がなくなってくれれば、これほど嬉しいことはないので、早く出ていってほしいと思いますよね」
ただし、米国のシンクタンクであるCSIS(戦略国際問題研究所)が10月3日に発表した「第4次アーミテージ・ナイレポート」では、トランプ政権の方向性とはまた違うことが書かれている。このレポートでは、沖縄を「日本で最も貧しい県」と侮蔑し、日米合同軍を築くことが書かれている。トランプ大統領に対する批判も記されて、PAからの撤退どころか、日本の自衛隊を完全に米軍の指揮下に取り込み、下部組織化してしまう思惑があからさまに述べられている。日本という事実上の「属国」に対して、現状よりもう一歩踏み込んで「併合」しようとする宣言とも受け取れる。
IWJは現在、「第4次アーミテージ・ナイレポート」の全編の仮訳を進めており、その内容に関連したインタビューを10月18日に岩上安身が元外務省国際情報局長の孫崎享氏におこなう予定である。ぜひ、ご覧いただきたい。
政府は辺野古埋め立て承認撤回をめぐって訴訟を起こすことが確実か!? これ以上なりふり構わずに基地を押しつけると、「日本の評判はますます悪くなるのではないか!」