(再掲)シリアをめぐって一層深まる中東情勢の混迷!~クルド人勢力がシリア政府と協力して、トルコ軍への対抗を開始する 2018.2.23

記事公開日:2018.2.23 テキスト
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(文:栗原廉)

 2011年から内戦が始まり、早くも7年が経とうとするシリアで、さらに混迷を極めるような展開が続いている。

 今年1月、トルコ軍はクルド人勢力の一掃を目的として、シリア北西部の都市アフリンへの地上作戦を開始した。トルコはこれまでNATO(北大西洋条約機構)の一員として米国政府との連携を緊密にしてきたが、対IS(イスラム国)の軍事作戦において米国がトルコと対立するクルド人勢力への軍事支援を行ったことから、米国・トルコ間の対立が深まった。

 トルコは一方で、シリア内戦でアサド政権を支援してきたロシア・イランとの関係改善を図ってきた。ロシア・イランと並んでシリア内戦終結に向けた和平実現を目指して歩調を揃えてきたトルコ。中東における米国の覇権がゆらぎ、ロシアをバックにつけたイラン―シリア―トルコの「同盟」関係が確立されるかに見えた。だが、先月から始まったトルコによる軍事作戦と、それに対抗するクルド人勢力の争いから、情勢は再び混乱へと向かっている。

▲シリア北西部の都市アフリンの位置(Wikimedia Commons より)

内戦開始から7年が経とうとするシリアと、それを取り巻く各国の思惑

 2011年3月中旬、日本国中が東日本大震災と福島第一原発事故で混乱に陥っていたまさにその最中にシリア内戦は始まった。当初、アサド政権率いるシリア政府軍と反政府勢力の間で争われていた闘争は、その後のイスラム国(IS)の勢力拡大やシリア北部でのクルド人勢力の関与もあって、各勢力がシリア国内で互いに入り乱れて争いあう、カオスのような状況へと陥っていった。NATO(北大西洋条約機構)の一角をなし、親米国家でもあるトルコは、内戦開始以降、アサド政権に批判的な米国政府との連携を緊密に保ち、シリアの反政府勢力への支援を行ってきた。

▲バッシャール・アサド シリア大統領 (Wikimedia Commons より)

 しかし、米国がイスラム国掃討を主目的として、クルド人勢力への軍事支援を始めたことから、米国とトルコの間で亀裂が深まった。米国が利用しようとするクルド人勢力は、トルコ・イラン・イラクにまたがって存在する、国家を持たない少数民族だが、かねてより自前の国家を持ち、独立を図ろうと試みてきた。トルコ政府はこれをゆるさず、クルド人の独立を求める政治勢力PKK(クルディスタン労働者党)などをテロ組織と見なしている。PKKはシリア内戦以前からトルコ政府と対立してきた。米国との対立関係から、トルコはシリアのアサド政権を支持するロシア・イラン両国との関係改善に向かった。3国は協力して、シリアのアサド政権への支援を継続して行い、昨年11月には和平実現に向けた共同宣言も発表している。

IS掃討のため強化されるクルド人支援と、トルコ軍によるアフリン侵攻

 もっとも、共同宣言が発表された時点でも、ロシア・トルコ間では意見の相違があった。ロシア政府はシリア国内での和平実現に向けて反体制派を含むすべての勢力に対話への参加を呼び掛けていたが、トルコ政府はクルド人勢力の政治参加について反対を唱えていた。

 一方、トランプ政権下でIS掃討作戦の強化を目指す米国は、新たにクルド人勢力への支援を行うことを表明した。これに反発する形で、トルコ軍は1月21日からクルド人勢力が支配するシリア北西部の都市アフリンに向けた軍事作戦を開始した。

 トルコ側からの作戦開始の通告に対し、米国のマティス国防長官は「IS掃討に専念するべき」と強調した上で、軍事作戦の規模や期間を限定するよう自制を求めた。しかし、トルコ軍による攻勢は開始から一ヵ月が経とうとする現在まで止むことはなかった。

クルド人勢力を介して、直接対立へ向かうトルコとシリア

 問題はさらにエスカレートしている。

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