トランプ政権の北朝鮮政策は一貫性がなく支離滅裂! 太田昌克氏が指摘「不要な武力衝突、その先にある核戦争だけは絶対に避けたい」~自衛隊を活かす会 第15回シンポジウム 北朝鮮の核・ミサイル問題にどう臨むか 2017.12.25

記事公開日:2017.12.25取材地: テキスト動画
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(取材・文:谷口直哉 構成:岩上安身)

※2月3日テキストを追加しました。

 2017月12月25日(月)13時45分より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、自衛隊を活かす会 第15回シンポジウム「北朝鮮の核・ミサイル問題にどう臨むか」が行われた。

 この日、登壇したのは、元陸上幕僚長の冨澤暉(とみざわ・ひかる)氏、共同通信編集委員の太田昌克氏、富山大学教授の今村弘子氏、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏の4名。緊迫する北朝鮮情勢や、核・ミサイル問題について多角的な議論が行われた。

▲(左から)今村弘子氏(富山大学教授)、太田昌克氏(共同通信編集員)、冨澤暉氏(元陸上幕僚長)

記事目次

■ハイライト

ミサイル防衛でも敵基地攻撃でも万全は期せない!「アメリカの核に頼るしかない!」~冨澤暉氏(元陸上幕僚長)

 初めに元陸上幕僚長の冨澤暉氏が登壇し、「防衛の現場から北朝鮮問題を考える」と題して、自衛隊の内側から見た現在の世界秩序とミサイル防衛について語った。

 冨澤氏は「軍事的脅威は特定国ではなく『核拡散とテロ・ゲリラ』」とレジュメの初めに書いたとして、次のように述べた。

 「昔は軍事というと、仮想敵というのを決めて、あの敵(仮想敵)が来たならば、それにどう対応するか、ということを考えたわけです。自分たちの脅威は何か? 自分たちが一体何をしようとしているのか? を決めることが大事なんですね(中略)しかし、現在はどの国でも『この国が我が国の敵国である』とは言いません」

 続けて、2013年の「日本国家安全保障戦略」という、国防の基本方針を定めた閣議決定について、「これを読みますと、日本の軍事的脅威は、北朝鮮であるとか、中国であるとか、あるいはフィリピンであるとか、一切言っておりません。『核拡散』と『テロ・ゲリラ』が脅威であると言っている」と紹介した。

 しかし、これは冨澤氏によると、米国防総省が4年毎に発表しているQDR(国防計画の見直し)のコピーそのままだという。2010年に発表されたQDRでは「現在のアメリカ及び世界にとっての脅威は、『核拡散』と『テロ・ゲリラ』であると明確に書かれている」と冨澤氏は指摘し、日本が3年遅れてアメリカのQDRの内容を真似たのだと述べた。

▲元陸上幕僚長の冨澤暉氏

 冨澤氏はミサイル防衛に関して、「結論から言うと、ミサイル・ディフェンスはないよりはあったほうがいいが、万全は期せない」と述べ、その理由として、「ミサイル防衛機器は基本的に待ち受け兵器である。局地防衛はできても、広域防衛は不可である」と語った。

 以前、日本防衛学会に専門家を呼んで、航空工学的な観点からミサイル・ディフェンスについて検討したという冨澤氏は、その有効性について次のように説明した。

 「米海軍と海上自衛隊は『当たるんだ、当たるんだ』と言う。90何%や80何%という、いろんな数字が出ているんですが、どういうシュチエーションでこういう実験をやっているのか私たちには分かりません。私たちの乏しい理科の能力で考えると、そう簡単に当たるもんではない」

 冨澤氏は、ミサイル・ディフェンスは待受け兵器であることに再度言及した上で、「これでもって万全を期すということは言えないと、私は断言いたします。万全を期せないからこそ(中略)小野寺(五典)さんとか防衛議員の連中が『やっぱりミサイル・ディフェンスに100%頼ることはとてもできないから、敵基地攻撃能力を持たないといけない』と言ったのは、そういう理由からだということは、よく押さえておいていただきたい」と強調した。

 ミサイル・ディフェンスに続いて、長距離巡航ミサイルの導入など、防衛省が前のめりに進めているかに見える、敵基地攻撃能力に関しては、次のような現実的な問題を指摘した。

 「敵基地攻撃能力ができるかというと、アメリカでも手こずっているんです。なぜ手こずっているかというと、目標がわからないんです。(中略)目標情報がアメリカでも取れない。日本はそうゆう火器を持ったとしても、目標情報を取れないから、基本的にこれも難しい。そうすると、ミサイルに対しては打つ手がない」

 このように冨澤氏は、ミサイル・ディフェンスは万全ではなく、情報不足の自衛隊では敵基地攻撃も難しいと指摘する。では、北朝鮮の弾道ミサイルにどう対処すればいいのか? 冨澤氏は「アメリカの核に頼るしかない」と断言し、次のように続けた。

 「いくら金正恩さんが困っても、日本に核兵器を落とすということは、アメリカからの報復抑止があると考えないといけいけませんから、そう簡単には出てこないと思います。いかにアメリカの報復抑止を得るように、日本が努力するかということは、難しいですけれども、いろんな案を考えて行かなければいけないと考えています」

 このように、冨澤氏はミサイル・ディフェンスや敵基地攻撃能力の保持よりも、アメリカの核の傘に守られることが、北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するには効果的だと結論づけて講演を締めくくった。

 ミサイル防衛や敵基地攻撃に関しては、岩上安身が元外務省国際情報局長・孫崎享氏にインタビューをし、その有効性について疑問を呈している。こちらもあわせてご覧いただきたい。

 また、IWJでは北朝鮮の核ミサイル攻撃での被害想定を分析している、米国ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」のシミュレーションを全文仮訳し、公開している。こちらもぜひご一読いただきたい。

「核戦争だけは避けないといけない! まだ外交オプションは尽くされていない!」必要なのは「安心供与」!~太田昌克氏(共同通信編集員)

 「明らかにアメリカは北朝鮮政策を失敗している」――。

 共同通信編集委員の太田昌克氏はこのように述べ、北朝鮮の核問題がここまで深刻度を増してしまった原因は、「アメリカの対北朝鮮政策の一貫性のなさ」にあると指摘した。

 このシンポジウムの直前、カリフォルニアに行って、クリントン政権で国防長官を務め、1994年の北朝鮮危機の際に交渉にあたったウィリアム・ペリー元国防長官を取材してきたという太田氏は、ペリー氏から取材した内容を元に話を進めた。

 2000年、北朝鮮の軍事上のナンバー2とされた趙明禄(チョ・ミョンロク)国防委員会第一副委員長が金正日(キム・ジョンイル)総書記の特使として、ワシントンを訪れ、ホワイトハウスでクリントン大統領と会談した。

 「この時に何をやろうとしていたのか?」と質問した太田氏に対して、ペリー氏は「94年の米朝枠組み合意(※)をより強力にして、米朝国交平常化まで行くつもりだった」と語ったという。

 さらに、この会談の下交渉で事前に平壌を訪れ、濃密な交渉を行っていたペリー氏は「その時すでに、金正日総書記はアメリカと国交平常化を行う腹を、相当程度固めていた。なおかつ核兵器を諦めるという選択肢も真面目に考えていた」という心象を持ったという。

※米朝枠組み合意:北朝鮮核問題に関して1994年10月21日に北朝鮮とアメリカ合衆国の間で結ばれた合意。目的は、北朝鮮がそれまで進めていた核開発プログラムを凍結して、より核拡散の恐れが少ない軽水炉に置き換え、段階的にアメリカと北朝鮮の関係を正常化していくことにあった。2003年に実質的に決裂した。

 しかし、その直後、チェイニー副大統領など、新保守主義者のネオコンが多くの閣僚を占めたブッシュ政権が成立すると、アメリカの対北朝鮮政策は強硬なものに一変した。

 こうした「アメリカの対北朝鮮政策の一貫性のなさ」を指摘して太田氏は、「アメリカは北朝鮮の最高指導部に、一貫したメッセージを送ってこなかった。北朝鮮にすれば、我々のレジームを潰すのか? 自然死するのを待っているのか? 交渉するつもりがあるのか? わからないと思う」と述べ、北朝鮮が外交交渉をしつつ、核開発も進めるという政策をとった原因が、この「アメリカの対北朝鮮政策の一貫性のなさ」にあると指摘した。

▲共同通信編集員の太田昌克氏

 トランプ政権になって、アメリカの対北朝鮮政策は、さらに混迷の度合いを深めているが、太田氏は「平和的な解決に道はあると思う」と述べ、北朝鮮核問題を外交的な努力で解決するために、必要と考えられる施策を次のように語った。

 「圧力、抑止力も大事だが、もう片方を忘れてはいけない(中略)『核を諦めたら別の生き方が待っているんだ』というメッセージを、平壌に伝えて暴発を防ぐ外交工作をやっていかなければならない」

 さらに「敵対的な勢力が戦略的な決断をするにあたって、『脅し』と『威嚇』のメッセージに加えて、自分たちが本当に態度・行動を変えたとき、『大丈夫だよ』という『安心供与』をどう創出してメッセージを送っていけるか。今のところ『安心供与』は見えてきません」と述べ、トランプ政権になって、まだ具体的な条件を示しての外交交渉は、何ら行われていないことを指摘した。

 最後に太田氏は「不要な衝突、その先にある核戦争だけは避けないといけない。まだ外交オプションは尽くされていない」と、外交的な問題解決の可能性を強調して講演を終えた。

 太田昌克氏には岩上安身が、2016年にインタビューをし、沖縄に持ち込まれた核兵器を管理する部隊に対して、1962年ソ連(当時)などへ核ミサイルを発射するよう命令が下された事件があったことを、詳しくお聞きしている。

 この時は、現場の軍人が命令通りに発射手続きを進めながらも不信感を抱き、上層部に問い合わせることでエラーであることが判明し、核戦争の危機を回避することができた。もし、発射されていたら、中ソからの報復攻撃、米国からの再報復攻撃となり、我々だけでなく、人類全体が生き残ることはできなかっただろう。

 核保有しているだけで、偶発的な核戦争を引き起こしかねない。とてつもない危険性をはらんでいるのだ。

 こちらもぜひ、あわせてご覧いただきたい。

(…会員ページにつづく)

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    トランプ政権の北朝鮮政策は一貫性がなく支離滅裂! 太田昌克氏が指摘「不要な武力衝突、その先にある核戦争だけは絶対に避けたい」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/408449 … @iwakamiyasumi
    愚かな政策に追従する安倍政権にもNO!を。日本人の命と平和な日々を危険に晒す政治なんていらない。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/945390345071706112

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    トランプ政権の北朝鮮政策は一貫性がなく支離滅裂! 太田昌克氏が指摘「不要な武力衝突、その先にある核戦争だけは絶対に避けたい」 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/408449 … @iwakamiyasumi
    迷走する米国に従うだけの日本だが、戦争回避には日本が独自の「知恵」を出さなくてはいけない。他国任せにはできないのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/959905381089603584

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