「憲法施行70年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」――。
2017年1月20日、第193通常国会が召集された。安倍総理は同じ日に行われた施政方針演説の末尾でこのように述べ、従来からの持論である憲法改正に改めて強い意欲を示した。
いよいよ今年(2017年)、この国会において、あの忌まわしい自民党改憲草案(※)にもとづく憲法の改悪が行われ、日本が劇的にその「国のかたち」をかえてしまうのかどうかの瀬戸際に、私たちは立たされることになる。
(※)IWJではこの間、自民党改憲草案に関する取材・中継を数多く行ってきた他、私と澤藤統一郎弁護士、梓澤和幸弁護士による計12回の鼎談をまとめた書籍『前夜〜日本国憲法と自民党改憲案を読み解く』を刊行した(http://bit.ly/1fxP5Vv)。
昨年7月に行われた参院選の結果、自民党、公明党、日本維新の会、そして日本のこころを大切にする党の「改憲勢力」が、衆参両院で改憲の発議に必要な3分の2議席に達した。アジア・太平洋戦争という無謀な侵略戦争に対する反省から、日本が70年にわたって守り続けてきた日本国憲法は、改憲に異常なまでの執念を燃やす安倍総理の「一強体制」のもとで、いよいよ風前の灯とも言える状態に陥ってしまっている。
しかし、安倍総理はなぜ、これほどまでに改憲に対して意欲的なのか。いや、安倍総理はなぜ、日本国憲法をこれほどまでに忌み嫌うのか――。
その理由として考えられるのが、「日本会議」「神道政治連盟」「神社本庁」といった、右派組織の存在である。彼らは、日本国憲法にもとづく戦後の日本を「偽りの時代」と認識し、「国体論」と「国家神道」の復古を叫び、周辺諸国を蹂躙した大日本帝国への回帰を志向する。
しかし、大日本帝国憲法のもとでは、日本国民は「臣民」と規定され、主権者ではなく、陸海軍を統帥する「大元帥」としての天皇のもとに主権が集中し、国民はその天皇に「永遠に従属」する「臣下」と規定された。そのため、日本国民一人ひとりの人命は極度に軽んじられ、やがては「特攻」や「玉砕」などというかたちで、必要のない「戦死者」を大量に出すことになってしまった。
したがって、「日本会議」「神道政治連盟」「神社本庁」といったファナティックな右派組織に支えられた安倍政権のもとで改憲を行うということは、すなわち、人命を極端に軽視した戦前に回帰することに他ならない。
2016年11月29日、私は『日本会議 戦前回帰への情念』などの著作がある戦史研究家の山崎雅弘氏に単独インタビューを行った。今月の「岩上安身のIWJ特報!」では、そのインタビューをフルテキスト化し、詳細な注釈を付してお届けする。戦前、大日本帝国憲法と「天皇制ファシズム」のもとで、どのようなメカニズムで「特攻」や「玉砕」が正当化されたのか、よくお分かりいただけると思う。