学校法人・加計学園が運営する岡山理科大学による愛媛県今治市での獣医学部新設問題が、ここにきて急展開を迎えている。
5月17日、朝日新聞が「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと記された文部科学省の内部文書の存在を報道。さらに25日、当時の事務方トップだった前川喜平・前文部科学事務次官が記者会見を開き、「私が実際に在職中に共有していた文書だ」とその存在を明確に認めた。
加計学園に対しては、36億7500万円相当の市有地を無償譲渡する予算案が既に承認され、さらに校舎の設置経費として96億円を今治市の補助金から交付することも決定されている。森友学園に対する約8億円の値引きを大きく上回る、異例の「好待遇」だ。
加計学園が破格値で公有地を取得できた背景には、第2次安倍政権で創設された「国家戦略特区」の存在がある。2015年12月15日、国家戦略特区諮問会議は全国で10番目の特区に広島県と愛媛県今治市を指定。翌2016年11月9日には、同会議で獣医学部新設に関する制度改正が決定された。そして2017年1月20日、唯一認可申請を出していた加計学園による獣医学部新設が認定されたのである。
加計学園の理事長である加計孝太郎氏は、安倍総理が留学先のカリフォルニア州立大学ロングビーチ校で知り合って以来のゴルフ仲間で、総理自身が「腹心の友」と呼ぶほどの間柄として知られる。国家戦略特区諮問会議では、その権限が議長である安倍総理に集中する仕組みとなっていることから、総理がトップダウンの指示で「腹心の友」への利益供与を図っていたことになるのだ。まさに、開発独裁国家並みの「縁故主義(ネポティズム)」である。
こうした国家戦略特区を用いての獣医学部新設に対して一貫して反対してきたのが、日本獣医師会である。獣医は家庭で飼われているペットの治療のみならず、口蹄疫や鳥インフルエンザといった家畜由来の感染症を防疫する重要な役割を負っている。そうした国民の「いのち」と「くらし」を守る獣医師の養成において、規制緩和によって学部を新設されたところで、養成教員の人員が足りず、またそもそもが、今後の日本の獣医の需給バランスと見合わない――。
日本獣医師会はそう考え、かねてから特区指定による獣医学部新設に反対する声明を発出してきた。
私は、加計学園の問題が週刊誌などで取り上げられ始めた4月4日、日本獣医師会顧問で前衆議院議員の北村直人氏に単独インタビューを行った。かつて政界に身を置いていただけあり、加計学園に利益を誘導しようとする首相官邸の生々しい政治的思惑が次々と語られる、スクープインタビューとなった。
「IWJは編集加工なしで生中継で好きなだけ喋らせてくれる。私の話を曲げて伝えられる恐れがない。だから出演を了承した」と北村氏はおっしゃったが、その後、北村氏はこのようなロングインタビューはどこの媒体でも応じていない。ここで語られていることは、手前味噌ではなく、極めて貴重な証言でばかりである。
一読していただければ、加計学園のみならず、国家戦略特区という枠組みが一部の特権層の私腹を肥やすものでしかなく、いかに「国民益」を損なう制度であるか、お分かりいただけると思う。ぜひ、最後までお読みいただきたい。