「衆議院も参議院も残念なことでありますけれど、佃煮にしたいくらい自民党だらけなんです。あと一人、そして福岡であと二人、自民党の議員が増えることに何の意味があるのでしょうか?」
民進党の野田佳彦幹事長が最後の応援演説のマイクを握り、のんきな「佃煮演説」で聴衆の笑いをとろうとする。
佃煮にしたいほど、自民党員が増えてしまったのは、誰のせいなのか? 自民党とその応援団のせいだけなのだろうか? と思わずつぶやきたくなる。
自民党の応援団の中には、これまで「隠れ応援団」だった「連合」も加わっていることが、新潟県知事選、そして今回の補選ではっきり見えてきた。だが、それだけではなく、2012年末に自爆的解散をして、自らの内閣を投げ出し、結果、自民党に「大政奉還」した、野田さん、あなたの責任だって大きいんじゃないかと、ひとこと言ってやりたくなるのである。
衆議院東京10区補選の最終日となった2016年10月22日、民進党の鈴木庸介候補が東京・大塚駅前で最終演説を行い、民進党幹事長である野田佳彦元総理が応援演説に駆けつけた。
野田氏は、「今必要なのは、安倍政権の歯止めをかけるための野党のチェック機能を高める、そういう選挙じゃありませんか。間違っちゃいけないのは小池都政の信任をする選挙じゃありません」と訴え、小池都知事の人気に乗り、優勢が伝えられる自民党推薦の若狭勝候補を牽制した。
- 弁士 野田佳彦氏(民進党幹事長、衆議院議員)/鈴木庸介氏(衆院東京10区補選候補)
- タイトル 東京10区補選 野党統一候補 鈴木庸介氏 最終街頭演説 ―応援弁士 民進党 野田佳彦幹事長
- 日時 2016年10月22日(土)19:30〜
- 場所 大塚駅北口(東京都豊島区)
▲鈴木庸介候補と民進党の野田佳彦幹事長
「政治から最も遠くにいる人達、声のあげ方を知らない人、声の上げられない人。そんな人達に本当に居場所をつくって行きたい」と鈴木庸介候補
野田氏の応援演説の間、鈴木庸介候補は、口もとを真一文字に結び、終始厳しい表情で壇上に立っていた。
鈴木氏がマイクを握ると、「選挙戦最後なので、自分が政治家になれたらどんな気持ちで政治をしたいかだけお伝えさせてください」と前置きし、自らが小学生の頃、「いじめ」にあったこと、海外留学からの帰国後2年間無職だった時代に居心地の悪さを感じていたことなどに触れた。
鈴木氏は、告示直前のタイミングで、私のインタビューを受けた際に、この苦い挫折の経験について、涙を流しながら告白している。このインタビューを、昨夜(10/22の夜)のうちに私自身が徹夜でフルテキスト化したので、ぜひとも、御一読いただきたい。
「LGBTの人、外国人の人は特別の人なんでしょうか? ニートは、ひきこもりは自己責任なんでしょうか? 誰にも居場所のある社会を作りたいんです。皆さん本当に辛いと思います。でも、社会の仕組みをちょっと変える、税金の仕組みをちょっとかえるだけで、みんなきっと幸せになれると思うんです」
「政治に大切なのは、声なき声を聞くことだと思います。政治から最も遠くにいる人達、声のあげ方を知らない人、声の上げられない人、そんな人が本当にこの社会にいっぱいいる。そんな人達に本当に居場所をつくって行きたいんです」
聴衆のそこかしこから「ようすけ、がんばれ!」と声がかかり、鈴木候補の最後の街頭演説は終わった。
最後の演説を聴き終えて、最後の最後まで、胸にわだかまるものが残った。
社会のマイノリティー弱者に光をあて、排除ではなく共生が必要だ、手を差しのべられる社会を作ろう、そのためにも分配の政治が必要だとする鈴木候補の主張が、彼が「組めない」と共闘を拒んだ共産党や他の野党候補の主張と何も変わらないことだ。なぜ手を結ばないのか、結ぼうとしないのか。共闘すれば、「小池劇場」ブームに乗る若狭氏を相手にしたって勝てるかもしれないではないか――。
そんな残念な気持ちとともに、彼の話した「いじめ体験」が心に引っかかった。
「野党共闘」は絶対に実現させない、という「圧力」をかけたのは、「民進党の応援団」を自称する連合である。連合のいいなりの民進党執行部の、そのまた言いなりとなって、鈴木候補は「野党共闘」に距離を置き、10月20日に池袋駅前で開かれた他の野党3党の幹部がそろい踏みの合同街宣にも顔を出さなかった。