もし国会前や官邸前で行われているデモで爆弾テロが起こり、100人以上が死亡したらどうなるだろうか。日本社会は大パニックになるだろう。しかしその可能性は、「イスラム国(IS)」と対峙する国の宿命でもある。
2015年10月19日、トルコの首都アンカラで自爆テロが起こり、106人が死亡した。トルコはこれまで西欧化を推し進め、イスラム圏では唯一と言っていいほど、安定した西欧システムの国だった。そんな国の首都ど真ん中で起きた「虐殺」に、今、トルコ社会は大混乱に陥っている。
イスラム研究者でトルコやシリアの現地滞在経験も豊富な、同志社大学教授の内藤正典氏は、テロが起きた集会は、 トルコ全国から14000人が参加する「平和的なもの」で、最近のトルコにおけるクルド労働者党(PKK)(※)とトルコ軍との衝突を止め、平和を求めるものだったという。日本で言うなれば、国会前での若者たちの集会と同じような、平和を希求する集会だ。
(※)クルド人の独立国家建設を目指す武装組織
トルコ政府は、クルド人武装組織やISが関与した可能性との見方を示しているが、犯行グループの身元や事件の全容は、いまだに明らかになっていない。中東情勢は混迷を深めている。
こうしたテロは今後、日本も他人事ではない。海外の戦争への参加や海外派兵を可能にする安保法制を強硬に推し進め、ISに対して攻撃的な姿勢を打ち出している安倍政権。米国務省のホームページには、ISを壊滅させるべく組まれた有志連合に、「JAPAN」の名前がはっきり刻まれている。
これに対し、ISも日本を名指しし、イラクやシリアでの戦闘に参加できない支持者に「日本の外交使節をボスニアやマレーシア、インドネシアで狙え」などと呼び掛けている。2015年1月にはシリアのアレッポで拘束した日本人2名を殺害。9月下旬には、バングラデシュで日本人男性が銃撃を受けて殺害された事件でも、ISの関連組織が犯行声明を出している。
2月に、安倍総理は日本人2名の拘束・殺害事件を受けて、「日本は変わった。日本人にはこれから先、指一本触れさせない。その決意と覚悟でしっかりと事に当たる」と語っていたはずだ。安保法制で確かに日本は「戦争できる国」に変わったが、「日本人に指一本触れさせない」という約束はとうてい守られそうにない。
10月15日、岩上安身の緊急インタビューに応えた内藤正典教授は、このような状況下で日本が集団的自衛権で中東問題に首を突っ込んでいくことについて、「非常に愚かなこと。米国の外交は、中東においてはまったく場当たり的。(米国が起こした)イラク戦争とISの誕生は結びついている」と苦言を呈した。
「米国の外交には一貫性がない。この後、米国が理性的になるとは思えない。その米国に、日本が後方支援を行うことになる。米国と一体化し、敵の標的になる。なぜ、こんなことのために自衛官の命を差し出すのか」
インタビューでは、中東にコミットすると言いながらも安倍政権が事態を把握できていない、このトルコでのテロ事件の詳細や、その背景となる複雑極まる中東情勢、そしてロシアによる突然の対IS空爆によって変化しているシリア情勢について、徹底的に聞いた。
日本で数少ないイスラム研究者としてメディアで引っ張りだこの内藤教授は、インタビューに先立ち、「テレビ・ラジオではちょっとしか話せないから不満だが、IWJなら話したこと全部伝えてくれるからいい」と前置きした。その言葉通り、当初1時間の予定だったインタビューは2時間にも及び、終了後は内藤氏が一言「疲れた…」と言って膝に手をつき、ふうと溜息をついたほど、情熱的なインタビューとなった。
2015/10/15 岩上安身による内藤正典・同志社大大学院教授インタビュー(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/270480 … @iwakamiyasumiさんか
トルコのテロ事件とシリアのお話。入り組んだ諸問題が解りやすい。
https://twitter.com/NIDONEINU/status/655319241768366082
〜岩上安身が内藤正典氏に緊急インタビュー! http://iwj.co.jp/wj/open/archives/270480 … @iwakamiyasumi
「IWJなら話したこと全部伝えてくれるからいい」この言葉に偽りなしの2時間。混迷を極める中東を掻き回す米国。それに追従する日本はトルコと同じ轍を踏むのか。
https://twitter.com/55kurosuke/status/657158515136434177