集団的自衛権の解釈改憲の「公文書」がない!? 真実は闇に葬った法制局!――「公文書管理」と「情報公開」は民主主義の両輪 瀬畑源氏は「開示請求文化の広がりが、日本を正す」と指摘 2015.10.6

記事公開日:2015.10.16取材地: テキスト動画
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(取材:城石裕幸、文:IWJテキストスタッフ・富田充)

特集 秘密保護法
※10月16日テキストを追加しました!

 公文書のライフサイクルを管理する「公文書管理法」と、国民に開示請求権を与える「情報公開法」は車の両輪だ。一方が上手く回転しなければ、国民の「知る権利」は侵害される――。

 9月28日付の毎日新聞のスクープ記事は、これを象徴する事案の存在を、安保法制というタイムリーな題材で明らかにした。

 記事は「集団的自衛権 憲法解釈変更 法制局、経緯公文書残さず 審査依頼、翌日回答」とのタイトルで、政府が2014年7月1日に閣議決定した集団的自衛権の行使容認で、憲法9条の解釈変更をめぐり、内閣法制局が内部で検討した過程を「公文書」として残していない、と報じている。

 これは、法制局内部で「公文書管理法」が機能していないことを物語っている。つまり国民が、「これまで40年以上、集団的自衛権行使を違憲扱いにしてきた法制局が、なぜ、たった1日でそれを覆したのか」という経緯を、「情報公開請求」で知ろうとしても、「文書不存在」を理由に断られてしまうのである。

 この事案について、公文書管理の専門家で長野県短期大学助教の瀬畑源(せばた はじめ)氏が2015年10月6日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で、「秘密保護法と公文書管理法、情報公開法 ―公文書管理法の改正を求めて―」と題して講演した。

 瀬畑氏は、「公文書管理法ができたことで、『法制局の姿勢はおかしい』と、外部の人間が堂々と指摘できるようになったことは明るい材料。官僚らにも、いい意味でプレッシャーがかかることになる」とする一方、同法が有効に機能していない部分があることを丁寧に説いた。

 この日の瀬畑氏のスピーチは、法制局が同法の趣旨に違反している可能性に関連して安保法の廃止を訴えるものではないが、事案の背景にある、官僚の世界に横たわる「隠ぺい体質」を問題視。その是正に何が重要かを冷静に示唆して、「今、大切なのは、『公文書として残しておかないとまずい』という意識を、しっかり官僚らに抱かせることだ」と語った。

記事目次

■ハイライト

  • 講演 「秘密保護法と公文書管理法、情報公開法―公文書管理法改正に向けて―」 瀬畑源氏(長野県短期大学助教)
  • 報告 「『情報公開法』『公文書管理法』から『特定秘密保護法』の廃止に迫る」 前田能成氏(「秘密保護法」廃止へ!実行委員会事務局、出版労連)
  • 日時 2015年10月6日(火) 13:30~
  • 場所 衆議院第一議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 「秘密保護法」廃止へ!実行委員会

「記録を残す場合もあれば、ない場合もある」法制局・富岡課長の言い分は理解不能

 毎日新聞の記事によれば、法制局は、閣議決定前日の2014年6月30日に内閣官房の国家安全保障局から、審査のために閣議決定案文を受けとった。閣議当日、憲法解釈を担当する第1部の担当参事官が、「意見はない」と国家安全保障局の担当者に電話で伝えている。

 記事はまた、今回の件で文書として保存されているのは、1. 安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の資料、2. 安保法制に関する与党協議会の資料、3. 閣議決定の案文──の3つだけとしている。これについて瀬畑氏は次のように強調する。

 「1. はインターネット上に存在する。2. はNPO法人『情報公開クリアリングハウス』が情報公開請求で入手しており、一部を公開中。つまり、外部の人間が請求すれば手に入る文書にある内容が、検討結果のすべてであると、法制局は言い放っている」

 記事中には、法制局の富岡秀男総務課長が、「必要に応じて記録を残す場合もあれば、ない場合もある。今回は必要なかったということ。意図的に記録しなかったわけではない」と説明したとあるが、このコメントについて瀬畑氏は、「法制局が文書として残していないことが、そもそも解せない」と述べ、そこには内閣法制局の体質が響いているのではないか、と疑問を呈した。

 「法制局は前々から、検討過程を文書化してこなかった組織であるように思える。特定秘密保護法の成立に向けては、内閣情報調査室と法制局が40回以上、協議を重ねているが、毎日新聞は情報公開請求で、その協議内容が書かれた公文書を、法制局ではなく内閣情報調査室から入手し、記事を書いている」

「法制局は厳しく追及されるべき」公文書管理法第4条違反の可能性も

 瀬畑氏は法制局について、「憲法解釈をしてきた人たちの集団ゆえに、検討の最中に内部に別の解釈があったことを、外部に知られたくないのではないか」と分析する。

 そして、公文書管理法の重要性に照らしつつ、「作る必要がない、という彼らの主張が正しいとすれば、それは彼らが『何も仕事をしてこなかった(=作るほど価値のある仕事を何もしてこなかった)』と公言しているのに等しい」と強調。実際には、高村正彦自民党副総裁や北側一雄公明党副代表と、法制局長官は非公式に何度も会談していたことが明らかになっていると指摘し、「作る必要がなかった」という法制局の主張は通用しない、との考えを言外ににじませた。

 また、法制局が決定を、文書ではなく「電話」で国家安全保障局の担当者に伝えている点も、極めてずさんだと批判。「口頭で済ませる姿勢には、途中過程を文書化しないことに問題意識を抱かない、法制局の体質が反映されている」と話した。

 今回の事案で、法制局は「公文書管理法」の第4条に違反している可能性がある、と瀬畑氏は指摘する。

(…会員ページにつづく)

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