「戦争は秘密から始まるという真実」――国連を通じて働きかけ続ける英エセックス大学人権センター・フェロー藤田早苗氏に岩上安身が聞く~岩上安身によるインタビュー 第499回 ゲスト 藤田早苗氏 2015.1.6

記事公開日:2015.1.8取材地: テキスト動画独自
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 「戦争は秘密から始まる、ということは真実です」

 2015年1月6日(火)午後6時より、IWJ事務所にて、岩上安身による英エセックス大学人権センター・フェロー藤田早苗氏インタビューを行なった。

 国際人権法の専門家としての立場から秘密保護法への批判を続け、国連の人権問題専門家への精力的な働きかけを行ってきた藤田氏。人権をめぐる国際的標準をふまえつつ、特定秘密保護法の危険性や、自民党改憲案の人権意識の低さについて厳しい批判を展開した。

 安倍政権が本腰を入れて取り組む憲法改正や、歴史修正を目論む安倍談話などの話題にふれつつ、藤田氏は、「国連を使って何ができるか」を考えていると語り、萎縮することのない草の根的な社会運動、市民によるジャーナリズムを呼びかけた。

記事目次

■イントロ

秘密保護法と集団的自衛権は『混ぜると危険』

岩上安身(以下、岩上)「著しく国民の人権を制限する特定秘密保護法には全国的な批判があったのですが、政府は馬耳東風で、昨年(2014年)12月の施行に結びつけることとなりました。2014年の1年間を振り返りつつ、藤田さんには、ご自身の活動についてもお聞かせいただきたいと思います」

藤田早苗氏(以下、藤田・敬称略)「1948年、国連人権宣言が採択された記念すべき12月10日という日、特定秘密保護法という人権を抑圧する法律が、ついに施行されました。エセックス大学の同僚は『なんて皮肉でしょう』と笑っておられましたが」

岩上「日本のあり方について、海外からは警戒心をもって見つめられているのではないでしょうか。平和国家のイメージが損なわれつつあるというような」

藤田「隣に北朝鮮や中国があるので、もともと日本にはいいイメージがあったのですが、やっていることはだんだん中国に似てきています。秘密保護法と集団的自衛権は『混ぜると危険』です」

岩上「戦争については考えたくないという人は日本にはたくさんいます。特定秘密保護法に反対する人の中でも、原発に関する重要な情報が遮断されるという一点のみに絞って批判する人がいますが、特定秘密保護法とは本質的には軍機保護法です」

改憲と安倍談話――2015年、民主主義国家の隊列からの離脱

藤田「戦争は秘密から始まる、ということは真実です。メディアは歪曲し、『憲法を変えやすくするのは良いことだ』と言っていますが、少し勉強すれば、憲法改正の手続きを変えるということが、いかに本質とはかけ離れているかが分かります。それを伝えていかなければならないでしょう」

岩上「改憲が実現されたなら、民主主義国家の隊列から離脱することになります。第二次大戦において、国連のなかの敵国条項の対象国であった日本は、小林節慶応大学名誉教授が言うように『保護観察中の身』であるということ。いかにも敵国条項が無化されているかのようなふりをしていますが。

 米国がどんなやくざなことをしたとしても、一の子分で居続けられれば、中国に勝ち、戦勝国になって、自分たちは敵国条項を逃れられる、と考えているのかもしれませんが、それは甘い、と思います。米国は、日本による歴史修正について、OKと言っていないのです」

藤田「改憲案自体が人権条約違反です。どんなことがあっても禁止すべき拷問を、時々OKとするのは完全な逆行です」

岩上「自民党単独で3分の2の議席を獲得することはできなかった昨年(2014年)12月の衆議院総選挙ですが、年明けから改憲が前面に押し出されています。歴史の認識については安倍談話を出すと。

 また、集団的自衛権関連の、戦争遂行のための法を18本出そうとしています」

萎縮し政府と馴れ合いになるマスコミと圧力をかける政治家

藤田「自民党から各放送局の報道局長に宛てて送られた『公平中立・公平な報道のお願い』文書ですが、イギリスでは考えられないこと。悪いことは、日本の各メディアに効果を及ぼしてしまったことです」

岩上「今、メディアは小さくなっています。その前にあったのは、朝日の袋叩きです。あんなふうに叩かれたくないと、みな萎縮しています。読売一社あれば、朝日と毎日はいらない、と」

藤田「みなさん、IWJを見ないと。日本に帰ってきて、普通の人々の反応を見てショックを受け、怖いと思います」

岩上「その人たちは、本当に安心で満足した生活を送っているわけではなく、ただ知らされない、考えない、見ないことによって、自分たちの置かれている状況を錯覚して日々を過ごしているのでしょう。

 国境なき記者団調査による『報道の自由度ランキング』を見ると、安倍政権になって日本の報道自由度は急激に落ちています。日本のメディアの気骨のなさは情けないと感じます。自民党はいまだに会見をオープンにせず、何度もしつこくアタックをかけていますが、我々IWJは入れません。

 前回の衆院選で、報道ステーションや他局に出演した安倍首相は、都合の悪い質問になると耳が聞こえなくなるんですよ。小泉進次郎氏も、原発について質問された時、(イヤフォンを調整する仕草をしながら)『あれ、聞こえない』と言って見え透いたことを平気でやり、メディアも指摘しない」

藤田「批判されることが怖いのでしょうか」

岩上「怖いという弱々しい態度ではなく、怒るんですよ、すぐキレ、圧力をかける。他方、メディアの経営陣や編集トップとは馴れ合いです」

藤田「市民の側に立つものがメディアの使命だという常識を忘れ、日本人のメディア・リテラシーも本当に弱いと思います。メディアの問題もありますが、それを見る人にも問題があります。

 カナダにはメディア・リテラシーを学ぶ授業があり、子どもたちはプロパガンダを読み解くということを学ぶようです」

落ちこぼれていく人を生み出さない社会にしようとしていたはずなのに…

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