「長時間労働」「賃金未払い」「作業員の感電死」――。
昨年2014年7月から4ヶ月間、中国のユニクロ下請け工場2社を潜入調査したSACOMから、劣悪な環境で長時間労働を強いられている作業員の実態が報告された。
「SACOM」は、香港を拠点に、国際的大企業の下請け工場における労働環境を主に調査している、学生や学者からなるNGO団体だ。同団体のプロジェクト・オフィサーであるアレクサンドラ・チャン氏と、NPO法人ヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏が1月15日、厚労省で報告記者会見を行い、詰めかけた記者らの質問に応じた。
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- 日時 2015年1月15日(木) 13:30~
- 場所 厚生労働記者会(東京都千代田区)
法令違反をした中国下請け工場 NGO団体がユニクロに改善を求める理由
イギリス、中国、アメリカ、韓国、フランスなどに進出を果たしたユニクロ(ファーストリテイリング社)は、世界に1000店舗以上を持つ、国際的なファストファッションブランドに成長。特に、中国や香港、台湾での売り上げは急増し、営業利益は海外事業の7割以上を占めているという。
今回、SACOMが潜入調査したのは、Pacific TextileとLuenthaiの2社。ユニクロの他にもGAPやアディダスといったグローバル企業からも受注生産している、中国を代表する下請け工場だ。潜入調査により、「長時間労働」と「賃金未払い」の2点で法令違反が発覚した。両団体は、2工場に対し要望事項を提出しているものの、問題点のフォーカスを主にユニクロに置く。その理由を、SACOMのチャン氏はこう話す。
「ユニクロは世界各国に展開している国際企業で、利益を上げている。消費者だけではなく、労働者に対する(社会的)責任を見直して欲しい。下請け工場は(ユニクロからの)要求を満たすため、(製品を)供給しなければいけないというプレッシャーから、(労働者に)劣悪な労働環境を強いている」
チャン氏は、問題の深刻さを指摘する一方で、下請け側が労働者の人権や安全を考慮する姿勢を持てば、今すぐにでも解決策を見いだせると指摘。そして、それを促すには、ユニクロ側が企業の社会的責任について改善を図る必要があると訴えた。
潜入調査で明るみになった劣悪な労働環境「地獄のようだ」
下請け企業2社に潜入調査したメンバーらは、約4ヶ月の間、実際に工場で働き、従業員に聞き取り調査も実施。長時間労働の実態や危険性が明るみになった。
この2社の基本給は、月1310元から月1550元。日本円にすると約3万円だ。中国は地域によって異なった最低賃金が設定されており、この2社は特に賃金が低く設定されている。残業時間も、中国の労働法で定められている月36時間をはるかに超え、100時間以上もオーバー。Luenthai社においては、労働時間がコンピューターではなく手書きで記録されているといい、監査を免れるためともみられている。他方、Pacific社は、残業代を正しく支払っておらず、明確な法令違反が発覚した。
さらに、工場内は異常に高い気温で、あまりの暑さで、防護手袋すら身につけず、裸で働く作業員の写真が紹介された。Pacific社では、作業台から従業員が落下する事故が頻発していると潜入調査員が目撃。また、排水がフロア全体を流れているといい、昨年2014年7月には、機械からの漏電で従業員1人が死亡したという証言も得た。インタビューした従業員からは、「地獄のような労働環境だ」と訴える者もいたという。
ユニクロとマクドナルドの問題は無関係ではない