「残業代は出ない、ボーナスは出ない、労働組合には入らない」を正社員に課すブラック企業、低賃金で酷使されても抗議することができない現実 2014.11.30

記事公開日:2014.12.15取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・齊藤・奥松)

※12月15日テキストを追加しました!

 「ここ20年ほど、ただ普通に働いて、普通に生きていくということが、とてつもなく難しくなっている」──。雨宮処凛(かりん)氏は、深刻化する若者の労働実態について、このように語った。

 「もう泣き寝入りしない!ブラック企業根絶!トークセッション」が2014年11月30日、大阪府東大阪市で行われた。司会には日本共産党大阪府委員会副委員長の清水ただし氏、ゲストに作家の雨宮処凛氏を招いて、労働法制や労働問題を議論した。

 雨宮氏は「私の弟は正社員になる時、『残業代は出ない。ボーナスは出ない。労働組合には入らない』という誓約書を書かされた。その日から1日17時間労働、昼30分の休憩のみで、深夜1時まで休みなし。家族が過労死を心配して周りに相談したら、今どき正社員なら当たり前と言われた」というエピソードを明かした。

 雨宮氏や清水氏は、低賃金で酷使されても抗議することができないという、労働者が置かれている厳しい現実を浮き彫りにした。また、主催者が集計した雇用実態調査アンケートでは、今、大阪で働く人の生の声が寄せられた。今後、自治体や行政、国会議員に、これらの労働者の声を伝えていく予定だという。

■全編動画

  • 雇用実態調査アンケート結果発表
  • トークセッション ゲスト 雨宮処凛(あまみや・かりん)氏(作家)/司会 清水ただし(清水忠史)氏(ラジオパーソナリティー、元大阪市議会議員)
  • 日時 2014年11月30日(日)17:00~
  • 場所 ユトリート東大阪(大阪府東大阪市)
  • 主催 ブラック企業根絶!若者100人トークセッション実行委員会/「ブラック企業をなくせ!働くのは正社員があたりまえ」非正規をなくす実行委員会

「アルバイトには有給休暇なんてない」とうそぶく経営者たち

 会場の参加者と労働法制クイズを行いながら、トークセッションは進められた。『生きさせろ!難民化する若者たち』(2010年11月、筑摩書房)の著者であり、「フリーター全般労働組合」組合員でもある雨宮処凛氏は、自身がフリーターとして働いていた経験を振り返り、「労働基準法がアルバイトに適用されることすら知らなかった。有給なんて正社員の特権で、自分にそんな権利があるなんて思わなかった」と話す。

 清水ただし氏は、2011年に「ラジオ派遣村」というラジオ番組のパーソナリティを務めている。さまざまな非正規労働の実態がリスナーから寄せられたと言い、「本来、正規、非正規にかかわらず取得できるのが有給休暇。しかし、あるファーストフード店で学生アルバイトが店長に有給休暇を申請したら、『アルバイトには有給はない』と言われた」などの事例を紹介した。

「明日から来なくていいから」は違法

 清水氏は「合理的な要件を満たさずに『おまえ明日からクビ』と言われても、それは無効だ。これは、しっかり覚えておかないといけない。会社から辞めろと言われたら、辞めなきゃいけないのか、と思ってしまうかもしれないが、それがどこでも通用する社会になると働く人が大変になる」と警告した。

 「フリーター時代には即日解雇が何度もあった。今思えば、違法。会社側がおかしいのに、その時は何も知らずに『すみません』と謝り、それが泣き寝入りだとすら思わなかった」という雨宮氏。「おかしいことをされているにもかかわらず、自分に落ち度があるからだと考えていた。法律や権利を知らないと、無駄に自分を責めてしまう」。

残業代なし、ボーナスなし、労働組合に入らない、という誓約書

 深刻な労働問題というと非正規労働に目が向きがちだが、正社員にも広がっていると雨宮氏は話し、自身の弟の実体験として、次のようなエピソードを紹介した。「10年ほど前、弟はヤマダ電機の正社員になる時に誓約書を書かされた。その内容は『残業代は出ない。ボーナスは出ない。労働組合には入らない』というもの。その誓約書にサインした日から、1日17時間労働、昼30分の休憩のみで、深夜1時まで休みなし。弟は憔悴(しょうすい)して痩せていき、家族が過労死を心配して周りに相談したら、今どき正社員なら当たり前と言われた」。

 その後、雨宮氏の弟はなんとか退職することができたというが、「弟は、自分が辞めるとほかの社員に負担がかかると言って、なかなか辞めようとしなかった。そういう心理状態に追い込まれていた」とも言い、「ここ20年ほど、ただ普通に働いて、普通に生きていくということが、とてつもなく難しくなっている」と語った。

年収300万円以下は結婚できない現実

 清水氏は、居酒屋チェーンのワタミの過労自殺問題と、当時の同社会長だった渡邉美樹参議院議員の「自殺するような弱い人間を雇ったのがまずかった」という発言を紹介。その上で、「ただ、残業しなければ、まともな給料にはならない、という人もいるだろう。皆さんはどうか」と会場に問いかけた。参加者からは「基本給が少ないから」「保険料と年金を残業代で稼がないといけない」との声が上がった。

 「内閣府の調査では、年収300万以下の男性の既婚率は10%もない。ところが年収500万円を超えると既婚率は跳ね上がる。今の日本のいびつな現状を現している」と清水氏。雨宮氏も「最低賃金が低すぎる。とてもじゃないが、子育てができない。労働由来の経済損失が大きすぎる。もっと、そこをアピールしたい」と語った。

社長とアルバイトでは時給で300倍の格差

 雨宮氏は「世界35ヵ国のファーストフードの従業員たちが、一斉に賃上げのストライキやデモを始めたところ、シアトルでは議会で最低賃金が時給15ドルに決まった。日本では最低賃金プラス1円という状況で、CEOとアルバイトでは収入に300倍の格差がある」と指摘した。

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