日本は、首都圏は安全なのか――いつ起きてもおかしくない「大地震」「大噴火」のリスクを地震学者が解説 2015.1.10

記事公開日:2015.1.16取材地: テキスト動画
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(IWJ・細井正治)

 2万人近くが不慮の死を遂げ、40万人もの人々が避難を強いられた「東日本大震災」から4年、「阪神・淡路大震災」からは20年を目前にし、生々しい記憶、恐怖感も薄れてきた2015年1月10日、たんぽぽ舎の学習会で、地震学者の島村英紀氏が講演した。

 「東日本大震災の大地震は今後の地震や噴火に影響するのか」をテーマに島村氏は凝縮した豊富なデータでわかりやすく解説。政府の地震調査委員会が昨年2014年末、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を前年比で10~20%引き上げた首都圏「大震災」のリスクや、「原発再稼働」一番手といわれる九州電力川内原子力発電所に近く、相当規模の噴火が懸念されている桜島などの「火山」についても言及した。

 質疑応答では、聴講していた作家の広瀬隆氏らの質問から、「原発銀座」や地震学界の「内輪」の事情、電力会社との関係などにも展開した。IWJは、桜島の噴火活動が活発化していることから、噴火をどの程度予測できるのかなどを質問した。

■ハイライト

  • 講演 島村英紀氏(武蔵野学院大学特任教授、元国立極地研究所所長、元北海道大学地震火山研究観測センター長)
  • 日時 2015年1月10日(土)14:00~16:00
  • 場所 スペースたんぽぽ(東京都千代田区)
  • 主催 たんぽぽ舎

※以下、発言要旨を掲載します

大きなプレート十数枚のうち4枚が日本、3枚が首都圏に集中する世界で唯一の危険地域

島村英紀氏(以下、島村・敬称略)「海底で生まれ、消え去るプレートが引きずり込んだり押し合う中で地震が起こるメカニズム。地震は不公平。世界には地震が起きない国が多い。それに対して、日本は大きなプレートが4枚も(うち3枚が首都圏に)ひしめいている世界でも唯一の地です。

 日本の場合、地震は『海溝』型のほか『直下』型もあります。マグニチュード(以下、M)8クラスなど最大規模の『海溝』型に比べ、『直下』型は、M7(この32倍がM8)などでも関東・阪神など大都市を直撃すると逆に深刻な被害に至ります」

日本のどこで、いつ起きてもおかしくない――特に首都圏がキケンなワケ

島村「日本を襲った巨大地震『海溝』型は戦後数十年間でも十数回、ほとんど太平洋側ですが最近は日本海側でも。他方、内陸『直下』型。それこそ日本のどこでも起こります。歴史上一度もなかった福岡県西方沖など、空白地帯こそ案外危険なのです。

 日本人、特に江戸っ子は一生で2~3回の大地震に襲われてきた。揺れ自体は関東大震災より、ずっと激しかったけど、近代化、都市化で被害が増大してしまった。今はその大正時代よりもずっと、それも元々危険な土地にも密集するようになってしまっています。

 特に首都圏の地震は日本有数。有感地震が年50回以上。ただしその数と『直下』型大地震が関係あるとはいえません。ややこしいですが首都圏では、日本の他の場所でも起きる『内陸』型のほか、日本の他の場所では海底で起きる『海溝』型も地下で起きるのです。

 特に首都圏は陸に(南からの)フィリピン海、(を挟むように、東からの)太平洋と、プレート3つがサンドイッチ状態にせめぎ合っていますが、それが従来の説より10km浅い(その分、震度増大)と最近、危惧され始めてきました」

世界に類のない2千もの活断層、さらに首都圏には無数の…

島村「もう1つ、最近憂慮されているわけは、『東日本大震災』を起こした東北地方太平洋沖地震の影響です。新たに広大な範囲で亀裂や歪みが作られ、4年後の今も『余震』が続いていますが、首都圏にも波及しそうなのです。

 『海溝』型は(1700年、1923年の後)、あと百年ぐらいはないとみられていましたが、この影響で『再来』期間が短縮する危険性があり、さらに『直下』型はいつ来てもおかしくないのです。

 地殻変動をGPSで計測するのですが、測れるのは地表のみで、海底や(東京なら3~4kmもの分厚い関東ローム層は雨等でも変動しやすく)地下の岩盤自体は困難なのです。

 地上で見えているのが『活断層』。しかし、首都圏では、関東ローム層に覆い隠されて、見えていないものが無数に潜んでいます」

※「活断層」の定義:(特に地質学・地形学などでは)広く数十~260万年以内に活動した証拠(そして将来も危険性)がある断層、とする説が有力。

島村「東北地方太平洋沖地震以後に(周辺で地震活動が)活発化した活断層は、北伊豆(神奈川・静岡)、猪之鼻(岐阜)、境峠・神谷(長野)主部、牛伏寺(長野)、高田平野東縁、十日町西部、六日町南部(以上3箇所、新潟)、長井盆地西縁(山形)、そのほか、長町-利府線(宮城)、横手盆地東縁(秋田)、真昼山地東縁(岩手・秋田)。また、いわき市の西20km辺り、それまで活動してなかった井戸沢断層などもあります」

「東日本大震災」で「火がついた」のは?

島村「東日本大震災以後(直後一時的に)、活発化した火山は、諏訪之瀬島、阿蘇山、九重山、鶴見岳、新島、大島、大室山、箱根、富士山、乗鞍岳、焼岳、白山、白根山、日光白根山、秋田駒ケ岳、焼山など。このように非常に影響を受けやすいと考えられます。

 東北地方太平洋沖地震後、『震源の移動』は、3月24日までの2週間でかなり西・陸側へしみだしており、今はさらに広がっています。日本の活断層は2千もあり、世界に類を見ない密度。石狩低湿地帯や関東・濃尾・大阪平野のほとんどは空白ですが、見えないだけでしょう」

地球が生まれたのが昨日なら、日本列島は6分前

島村「日本に活断層が多い理由は列島の成り立ち。2千万年前に大陸から分かれて日本海が拡大し、1500万年前、程よい距離で止まったのですが、地質・構成岩類が、長い間にいろんな陸や海から珊瑚礁等を巻き込んでできた吹き溜まりのため、複雑多様になったのです。

 伊豆半島ができたのはわずか数十万年前、日本に最後にくっついた『火山島』なのです。しかし首都圏のような柔らかい堆積層に覆われていれば、活断層は見えないのが当たり前。つまり『活断層だけを調べて注意していればいい』ものではないのです。

 むしろ直下型では活断層絡みでない方が多いですし、活断層の長さで地震のMを決めるのは間違いで、調査の落とし穴もあります。首都圏では立川断層帯33kmから西がみえ始め、平均1~1.5万年ごとに活動し、最新は約2万年前以後1.3万年以前」

阪神淡路大震災以後に日本で起きた大地震は、すべてノーマークだった

島村「東京都の防災会議の想定は、かつては18パターン。あまりに多すぎということで、2012年4月に見直し、多摩西部、東京湾北部、立川断層、元禄関東地震の再来という4パターンで都内の最大震度は6強から7に。

 1995年の『阪神淡路大震災』以後に日本で起きた大地震は、すべてはノーマークでした。鳥取県西部、新潟県中越、福岡県西方沖、千葉県北西部の地震、能登半島、岩手・宮城内陸、そして2011年の東北地方太平洋沖地震に及ぶまで。

 日本でも特に多かった首都圏も、1930年代からは不思議(異常)なほどに少なくなっています。しかし、これは1703年の後のように『海溝』型の後しばらく空いて、巨大地震再来のケースだという懸念もあるのです」

「大規模噴火」、21世紀中に4、5回起こる?

島村「『大規模噴火』も最近異常に少ないのです。57人の犠牲を出した『戦後最大の火山災害』木曽御嶽山。噴出物は東京ドーム3分の1杯分。数百、数千倍も日本ではザラでしたが、ここ百年近くないため、21世紀に4、5回くると言う学者が増えています。

 さらにケタ違いに壊滅的な『カルデラ噴火』は日本で12万年間にたびたびあり、一番新しい鬼界カルデラの噴出物は列島全体を覆い、縄文文化を途絶させたほどですが、2-3万年、どんなに空いても5万年おきに起きてきた。日本で今後起きないとは言えません。

 巨大カルデラ噴火の被害予想は、神戸大学の巽好幸教授が、九州中部(阿蘇山)の場合、ほぼ本州まで1.2億人(が亡くなると最初は言っていたほど壊滅的)に影響を及ぼすと発表し、大きな衝撃を与えました。

 富士山は阪神淡路の後95年6月から(地下マグマ絡みの特殊な)低周波地震を別個に計数し始め、2001年に急上昇、311後も一時的に増えて緊張しましたが結局は何も起こらず、閾値や前兆が見い出せていませんが、山体膨張も2006年から急勾配になっています。

 富士山『三大噴火』の最後で、ようやく作られた富士山ハザードマップのベースである『宝永噴火』の1703年末~4、07年の記録、また以降の海外のケースを鑑みれば、やはり地震と大噴火の連関がないとは言えないでしょう」

「地震学者はみな御用学者」? そのワケは

(…会員ページにつづく)

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