1月7日(現地時間)、フランス・パリの風刺週刊誌「シャルリ・エブド」本社で起きた乱射事件の衝撃がおさまらない。誘発されたのか、報復なのか、フランス各地で次々と銃撃事件や爆破事件が連続している。
2日後の8日には、フランス東部ヴィルフランシュ•シュル•ソーヌや、中部のルマンにて、いずれもモスクの内外で爆発が起きるなど、緊張感は高まる一方だ。各国メディアは軒並み「イスラム過激派」を犯行の主体として決めつけて報道しているが、現在のところ、犯行声明は出されていない。
※1月9日(金)21時35分現在、容疑者兄弟2人は立てこもり中。The teleglaphが、こちらからライブ中継を行なっている。
実は、乱射事件の前日1月6日、イスラム国への作戦支援のため、フランスの空母「シャルル・ド・ゴール」とそれに付随する艦隊が4月にペルシャ湾に派遣されると報じられた。その直後に起きた事件だったのだ。
イスラム国への軍事作戦を展開するものの、長期化・泥沼化は避けられそうにない。報復のテロも懸念される、そんなタイミングで起きたこの凄惨な事件は、言論の自由を脅かすテロ事件であると同時に、イスラム国やそのシンパからの報復ではないかとも疑われた。
この事件を受けて、ただちに安倍晋三内閣総理大臣は「言論の自由、報道の自由に対するテロを断じて許さない」と事件を非難するコメントを発表した。政治の最高権力者の座にありながら、一新聞を名指して繰り返し非難し、圧力をかけ続けた人物の言葉とは思えない発言である。
「テロには屈しないという強い決意の下に、国際社会の緊密な連携の中で取り組んでいきたい」などとも話し、テロ資金対策や過激派対策で国際連携を強化する方針を示した。集団的自衛権の対象国は米国だけではない。NATOも対象となる可能性がある。つまり、きなくさい「対テロ戦争」の最前線にのこのこ首を突っ込んでいく、ということを宣言したようなものである。
昨年2014年、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍政権には、米国に後押しされて「イスラム国」への空爆に参加・支援する欧州各国の不安や緊張や危機感が、ほとんど感じられない。