10月28日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。
番組では、27日に羽田空港に到着したカナダ国籍男性にエボラ出血熱感染が疑われたニュースが大きく取り上げられました。これまで日本では「海外のニュース」として報じられてきたエボラ出血熱。すでに当事者として、日本人も感染拡大の余波の中にあることが浮き彫りとなった出来事でした。
このほか、沈没した韓国の旅客船セウォル号の船長が死刑を求刑されたニュース、望月義夫環境相が28日未明に会見を行い、自身の後援会の政治資金収支報告書に事実と齟齬のある記載があったことを発表したニュース、そして叔父を石で殴って重体にさせた男が逮捕されたニュースにもコメントをしました。
また28日には、九州電力の川内原発の再稼働をめぐり、立地する薩摩川内市で動きがありました。大きなニュースの陰に隠されてしまい、番組のプログラムとしては取り上げられていませんでしたが、私は自身のコメントの中で、ひと言だけ触れました。
エボラ出血熱が日本にも上陸?
治療薬がなく、しかも致死率が50%から90%と非常に高いエボラ出血熱が、日本国内でも流行するかもしれない——。27日の夕方から、そんなニュースが日本中を駆け巡りました。
厚生労働省は27日夜、同日午後に羽田空港に到着したカナダ国籍の男性を国立国際医療研究センター(東京都新宿区)に搬送したと発表しました。男性は、西アフリカのリベリアに8月から10月中旬まで、2ヵ月間滞在。ベルギーと英国を経由し、羽田空港に到着した時の体温は37.8度でした。
男性は空港の検疫所でリベリア滞在歴を自己申告。国立国際医療研究センターに搬送され、隔離病棟に収容されます。男性から採取された血液は都内の国立感染症研究所に送られ、エボラ出血熱の感染がないか検査を実施。塩崎恭久厚労相は「万一のことを考えて搬送し、検査している」と説明しました。
28日、検査の結果が発表され、男性にはエボラ・ウイルスの感染がなかったことが判明します。男性は未明には平熱に戻ったということです。発症からの時間経過が短いために検査結果が陰性となった可能性もあり、今度3日程度は入院を続け、経過を見守るということです。
多くの日本人は、西アフリカで感染が拡大中と報道されているエボラ出血熱を、文字通りよその国のことと考えていました。しかし、今回の一件で、エボラ出血熱が日本にとっても、対岸の火事でなくなったことは確かです。
岩上「まず、水際で防ぐことがまず大事です。と同時に、それ以外のことをおろそかにしてはいけないと思います。発熱していない状態で入国し、それから国内で発症したらどうするのか。その場合の手順を、我々は確立しておかなければなりませんね。
エボラ出血熱は、身体的な接触により感染する可能性が高い。ということになれば、感染者は、親しい関係、家族から隔離する必要が出てきます。これは、ある種の“痛み”を伴うものでもありますね。アフリカでは、死者を悼むあまり、葬儀でご遺体に触って感染が拡大した事例も報告されています。
これらのことを呼びかけていく必要があります。国内に入り込んだ場合も考えておかなければなりません」
エボラ出血熱の対策の考察といえば、空港などの「水際で食い止める」ことだけに限定されがちです。また、マークする対象も、西アフリカからの入国者・帰国者にしぼられていることも気になります。人やモノの移動が自由な時代。どこから、どういう経路で、感染者が移動するのか、広い視野が必要なはずです。そうした観点から、私はコメントをこう続けました。
岩上「現在のところ、アフリカばかりが注目されていますが、アフリカから感染が拡大し、別の第三国経由で感染者が国内に入ってくるケースも予想されます。
アジアでは中国と西アフリカとの間での経済的関係が緊密になっています。したがって、アジアの中では、中国で最初にエボラ出血熱の感染者が見つかるのではないか、と言われています。
ほんの2、3日前ですが、中国の広州で43人の感染者が見つかったという嘘の話が流れました。嘘のニュースでしたが、そのような形で注目されていることは間違いない。アフリカ系の方や、アフリカ滞在経験者の方だけが感染ルートではないということですね。
このように、思いがけない第3、第4の感染ルートが存在する可能性がある。しかし、だからといってパニックに陥ってはいけません。パニックになれば、社会的差別にもつながりかねませんから、よくよく考えながら気をつけることが大事だと思います」
「水際」を突破されて、国内に入られたあと、人権に配慮しながら、どのように「隔離」がスムーズに行えるかが、鍵になると思われます。そうした点で、番組で同席した木村盛世医師は、「報道の自由を規制してでもジャーナリストが感染源に近づくのを防ぐ議論をすべきだ」と主張されていましたが、議論は大いに結構ですけれども、軽々に基本的人権や言論の自由への規制を結びつけることは慎重になるべきだ、と私は考えます。
「パニックが起こる」ということを理由に、国民にとって本当に重要な情報がもたらされなかった福島第一原発事故の経験を忘れてはなりません。
セウォル号船長に死刑求刑:進まない事故発生の真相究明
韓国の旅客船セウォル号事故から半年が経ちます。304人の死者・行方不明者を出した大惨事となりました。行方不明者10人の捜索は、今も続いています。
27日に光州地裁で、船員など15人に対する論告求刑公判があり、船長のイ・ジュンソク被告(68)に死刑判決が言い渡されました。このほか、一等航海士ら3人には無期懲役。そのほかの船員にも懲役15年から30年の重い求刑がなされました。
韓国で死刑が求刑されるのは、異例中の異例だといいます。イ被告は事故の最中、傾く船に乗客を置き去りにして脱出。例外的な大惨事の直接的な責任を求める量刑なのかもしれません。
しかし、これで万事が解決したとは、到底言えないようです。いくら形式上の責任者に重い判決が下っても、事故の真相が闇に包まれたままでは、残された遺族が納得しません。
岩上「思いだしていただきたいのですが、半年前、韓国での報道は真っ二つでした。朝鮮日報、中央日報、東亜日報の大手三紙や公共放送がスローモーな報道をして、たいへん非難をあびました。
一方、韓国では独立メディアが日本よりずっと発達しています。この独立メディアがリアルな報道を続け、被害者家族の信頼を得ていました。既存メディアと独立メディアとの差がはっきりと分かれていた。今回も独立メディアはこの死刑求刑についてはほとんど報じていません。この方向に誘導していないわけです。
日本ではほとんど知られていませんが、この半年間韓国で何が起きていたかと言うと、真相究明を求める動きが圧倒的に強かった。それに対して、今回の死刑求刑は、一人の船長だけをスケープゴートにするものですね」
未曽有の大惨事です。真相究明に向けた特別調査委員会の設置のため、「セウォル号特別法」の制定が与野党間の協議で進められました。一方で、この協議は、遺族の意向が反映されたものではありませんでした。
遺族は、特別調査委員会には捜査権と起訴権が必要だと主張。それほどの強制力を持たせないと、真相究明にはほど遠いという思いがあったのでしょう。朴槿恵(パク・クネ)大統領には、「大統領として決断をするべきだ」という声も上がります。しかし朴大統領は16日、「決断を下す事案ではない」と、これを拒否する構えを崩しませんでした。
9月30日に与野党間で「セウォル号特別法」に関する協議が妥結。特別調査委員会の特別検事を推薦する過程に遺族が関与できるかどうかが、大きな争点でした。結論として、遺族の参加が可能になるかどうかは、今後の決定に委ねられるといいます。
しかし、遺族にとり、見通しは明るいとはいえないようです。特に与党セヌリ党は一貫して、特別検事候補の推薦過程への遺族の参加を拒否する案にこだわり続けています。
事故で犠牲となった檀園高校の犠牲者遺族らによる家族対策委員会は、与野党妥結の直後に会見。特別検事の中立性が確保できない内容であるとして、妥結案を拒否する声明を出しています。
岩上「セウォル号事故の背景には腐敗があったのではないか、事故や背景の究明をするべきではないか、という声がありました。既存の検察制度ではそれが不可能なので、真相究明のための委員会を作り、そこに特別検察官を任命し、真相究明をするべきだ、と与党、野党、家族会を巻き込み、ずっと国会が空転していました。
それが、どうにか9月30日に与野党合意になりましたが、この時に家族会は外されました。任命権限や影響力の行使を求めていた家族会が排除され、与党・野党だけで妥協し、『セウォル号特別法』が制定されることが決まりました。
これにより与党の影響力の強い特別検察官が任命されることになり、結局は真相が解明されない可能性がある。ここで紛糾しており、実はこのテーマのほうが重要なのだ、という報道もあるわけです。
裁判が進む一方で、真相究明が本当にできるかどうか分からなくなっている。家族会はまったく納得していない状態です。このようなわけで、韓国社会の中で分裂が続いています。こちらにも目を向ける必要があると思いますね」
望月環境相が未明に会見:「政治とカネ」の問題を明らかにしたものの、意図して話を小さくしようとした疑い
望月義夫環境相が28日未明、突然の会見を行いました。発表したのは、自身を巡る「政治とカネ」の問題でした。
望月氏の後援会は政治資金収支報告書に、およそ660万円を「賀詞交歓会」への支出として計上。しかし、実際にはこれは別の費用だったということです。2008年と2009年にこの会計処理を行ったのは、望月氏の妻(現在は故人)だとのこと。それでも、政治資金規正法で禁じられている虚偽記載に該当する可能性がありますが、望月氏は自身の法律違反だとは認識していないと述べています。
望月氏の会見には、政治家としての説明責任を果たしたと言い切れない感じがどこかつきまといます。原因の一つは、未明の0時という会見時間。非常事態でない限り、まずありえない時間帯です。後ろ暗いことをできるだけ表沙汰にしたくないのか、と疑われても仕方がないのでは。
岩上「この時間に呼ばれた報道陣は、辞任会見だと思い、行ってみたらそうじゃなかった。こんな苛立ちからくる、記者の勝手な言い分も若干入っていなくはないと思います(笑)。
ただ、昨夜からエボラ出血熱のニュースが大きく取り上げられていました。これを考えると、見えてくる部分もあります
ニュースというのは取り上げられるタイミングで扱いに大小が出たり、話が大きく膨らんだり小さくなったりします。ですから、望月大臣の未明という会見時間には、意図的に話を小さくしようとした操作があるのではないか、と疑いを持たれているわけですね。
エボラ出血熱感染者の入国か、というたしかに大きなニュースの影で、今日28日には、鹿児島県川内原発が立地する薩摩川内市では再稼働に同意する採択がされようとしています。私は、ショッキングなニュースに隠れてしまう出来事にも注目していきたいと思っています」
川内原発の再稼働:ニュースの陰に埋もれさせないために
番組のコメント中、ほんの少し触れた川内原発ですが、日々のニュースに埋もれる中、再稼働に向けた手続きが着々と進められています。
九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市議会では、28日午前に臨時議会が開かれ、川内原発の再稼働に賛成する陳情を採択。午後には、岩切秀雄薩摩川内市長が、再稼働への同意をあらためて表明しました。
原発再稼働には立地する「地元」の同意が必要だとされています。ただ、その「地元」の範囲に関して、政府による明確な規定はありません。鹿児島県では、県と薩摩川内市だけをその範囲としています。
しかし、住所が置かれていなくても、原発からの距離が近い自治体はほかにもあります。原発から半径30キロ圏内にある、いちき串木野市や日置市では、「地元」の範囲に含めるよう求め、鹿児島県の伊藤祐一郎知事へ意見書を提出しています。
※【IWJブログ】被害を受けるかもしれない地元にありながら、原発再稼働の「蚊帳の外」に置かれるいちき串木野市民の思い「放射能は一定の圏内にとどまるものではない」
とくに九州には過去に巨大噴火を起こした火山が数多いと言われています。噴火の影響で原発が被害が受けることはないと言い切れるのでしょうか。原子力規制委員会による噴火リスクの見積の甘さは、火山学者から批判の的にさらされています。
叔父を石で殴り逮捕された30代の男:エボラ流行で家族同士の隔離が必要となる?と思わせる事件
26日、東京立川市で36歳の男が、61歳の叔父の顏を石で殴り重傷を負わせたとして逮捕されました。叔父は病院に搬送されましたが、意識不明の重体。二人の間には、容疑者の祖母の介護を巡り、いさかいがあったといいます。
警察官が駆けつけたとき、逮捕された延原玲容疑者は、馬乗りになった状態で、叔父の顏を何度も殴っていました。延原容疑者は、叔父が先に殴ってきたので殴り返したと供述しています。
岩上「この件に関しては日頃から仲が良くなかったということですね。介護の問題が、おそらく引き金になったのでしょう。
こういうのが私たちの生活の現実ですね。家族同士は濃厚な接触もするし、喧嘩もして、血も流れたりします。
少し視点が変わりますが、こういう現実の中にエボラ出血熱が入り込んできたらどうなるでしょうか。
エボラ出血熱がパンデミックで広がっていったら、家族同士を隔離しなければならなくなるかもしれない。現実には非常に難しいですね。そういうことを考えたら、怖いなと思いますね。いったい現実にどういう隔離をするべきなのか、と考えてしまいます」
★岩上安身がレギュラーコメンテーターとして出演中のテレビ朝日「情報ライブショー モーニングバード!」は、毎週火曜日午前8時から放送中! ぜひ、ごらんください。
【岩上安身のツイ録】エボラ出血熱日本上陸か? 「パニックに陥ってはいけない」 「モーニングバード!」で岩上安身がコメント http://iwj.co.jp/wj/open/archives/194235 … @iwakamiyasumi
職場で初めてモーニングバード!を見ました。岩上さんのコーナーの拡大を望みます。
https://twitter.com/55kurosuke/status/527208875951284224