「朝日バッシングとジャーナリズムの危機」メディア同士の叩き合いを危惧する著名人らが緊急シンポジウムを開催 2014.10.15

記事公開日:2014.10.23取材地: テキスト動画
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(取材・記事:IWJ・薊一郎、記事構成:安斎さや香)

 「新聞というメディアが衰退している中、お互いに叩き合いをしている」

 従軍慰安婦問題における吉田証言や、福島原発事故における吉田調書についての朝日新聞の報道に対して、他の新聞社や週刊誌などから執拗なバッシングが続いている。新聞報道を含むジャーナリズムへの危機感を抱いた月刊「創」の篠田弘之編集長他の主催により、著名なジャーナリスト等を招いたシンポジウムが10月15日に開催された。

■ハイライト

  • 出演 青木理氏(ジャーナリスト)、野中章弘氏(アジアプレス代表)、新崎盛吾氏(新聞労連委員長)、森達也氏(作家)、池田恵理子氏(女たちの戦争と平和資料館館長)、下村健一氏(コミュニケーター)、永田浩三氏(武蔵大教授)、他多数
  • 進行 篠田博之(『創』編集長)
  • 日時 2014年10月15日(水) 18:30〜
  • 場所 文京区民センター(東京都文京区)
  • 主催 10・15集会実行委員会(『創』編集部、アジアプレスインターナショナル、アジア記者クラブ、『週刊金曜日』編集部、他)

朝日新聞の第三者委員会の議論を懸念

 元NHKディレクターで、慰安婦問題についての番組作成を担当した、「女たちの戦争と平和資料館」(wam)館長の池田恵理子氏は、メディアによる慰安婦問題自体を否定する動きに注目する。

 「文藝春秋」2014年10月号に掲載された寄稿「朝日新聞の”告白”を越えてー『慰安婦大誤報』日本の危機を回避するための提言」の中で、歴史作家の塩野七生氏はオランダ人慰安婦の存在を否定。池田氏は、「これは調査不足か意図的な虚偽だ」と指摘する。

 なお、この件について、wam側は「文藝春秋」編集部と塩野氏に公開質問状を提出。塩野氏には、「1990年代の初めにオランダ人の『慰安婦』被害者が名乗り出て、日本政府を訴える裁判を起こした」事実を知っているか否かの回答を求めているという。

 「中央公論」2014年11月号の「朝日新聞から考える メディアと国益」と題した記事でも、朝日新聞の慰安婦報道について検証する第三者委員会の委員でもある北岡伸一氏が、国連のクマラスワミ報告を批判し、「国連の勧告はいい加減だ」などとしている、と池田氏は報告。第三者委員会の今後を危惧した。

 「クマラスワミ報告は吉田証言のみに依拠して慰安婦問題について報告しているわけではなく、北岡氏はこれを読んでいないのだ。北岡氏のような人が委員を務める第三者委員会がどのような結論を出すのか、とても心配だ」

「我々が守るべきは朝日新聞社の経営体質ではなく、朝日の自由な気風だ」

 法政大学の山口二郎教授は、元朝日新聞記者の植村隆さんが講師を務める北星学園大学への恐喝事件に言及し、「1930年代の日本のファッショ化のプロセスと重なる」と危機感を訴えた。

 精神科医の香山リカ氏は、「朝日バッシングのような、自分たちの外に敵を見つけて叩く行為は、不安や恐怖心を外の敵にすり替える心理だ。これはフロイトにより提唱された投影と呼ばれる心理的防衛メカニズムだ」と解説。朝日バッシングの横行に危機感を示した。

現役朝日新聞記者「悔しさが頂点に達した」

 第2部からパネラーとして参加した朝日新聞大阪本社社会部記者の武田肇氏は、慰安婦問題に関わった朝日新聞現役記者としての思いを語った。

 「私は慰安婦問題特集取材班の一員だった。大きな責任を感じている。最近の朝日新聞批判で、現役記者の発言がなく、OBの発言に任せておいていいのかという思いがある。  社長の謝罪会見で、『朝日は自浄能力がないのではないか』と何度も質問された時、悔しさが頂点に達した」

 武田氏はまた、朝日新聞の従軍慰安婦に関する訂正記事に言及した、ジャーナリスト・池上彰氏のコラムの掲載を朝日新聞が拒否した問題に触れ、「以降社内で自然発生的に議論が沸き起こった。ここは闘うべきという人、いや今は頭を低くしておくべきという人、実に様々な意見がある」とし、「このような動きを次への起爆剤にしたい」と、期待を込めた。

「朝日新聞が崩れると、次は東京新聞、その次は沖縄メディアだ」

 アジアプレスの野中章弘氏は、「言論機関でありながら、内部に言論的自由がない。これは異常なことだ。新聞記者である前に、社員となっている」と述べ、マスメディアの体質を批判した。

 さらに、「言論の自由の防波堤だった朝日新聞が崩れると、次は東京新聞、その次は沖縄メディアだ」と語り、言論の自由の将来を案じつつ、「良心的なジャーナリストを守るのは、我々個の力だ」と、市民としての役割の重要性を訴えた。

 「組織は当てにならない。朝日新聞の社長は、吉田調書の記事全部を否定しようとしている。朝日の価値・良心・役割を捨てようとしている。最後は個の力でジャーナリズムをサポートする」

「NHKは今日死んだ」

 2001年のNHK番組改変問題が起きた当時、統括プロデューサーだった武蔵大学教授の永田浩三氏は、番組改変問題について言及し、NHKの体質を批判した。

 「当時のチーフプロデューサーの長井暁氏が記者会見を開いて内部告発を行なうと、NHKは7時のニュース枠を使って長井氏の発言を全否定した。

 私は、NHKは今日死んだと思いました」

「全体として新聞離れを起こしている」

 日本新聞労働組合連合委員長の新崎盛吾氏は、「新聞が衰退してしまうのではと危機感を持っている。朝日新聞が第三者委員会を作って検証しようとしていることに失望感を感じている。報道機関であるならば、自社内で検証すべきだ」と語り、朝日新聞社経営陣への失望と新聞業界の将来を懸念した。

 「週刊金曜日」編集長の平井康嗣氏は、「新聞記者が実名で外に寄稿することはほとんどなくなった。横の繋がりがなくなり、メディアは叩きあいをしている」と指摘。「読者の朝日離れは進んでいるが、そうかといって産経や読売に読者が流れているわけではなく、全体として新聞離れを起こしている」と、新聞メディアの現状を分析した。

 平井氏はさらに、「歴史修正主義が草の根で活動してきたことが、今花を咲かせている」と述べ、こうした現状をリベラルが打開するのは「容易ではないだろう」話した。

「朝日新聞の記者たちには信念を貫いて欲しい」

 ノンフィクション作家で、1992年の朝日新聞の「軍関与を示す資料」と題する記事を執筆した元朝日新聞記者の辰濃哲郎氏は、自身の記事について、「記事には1つ誤りがあった。囲み記事の中で女子挺身隊についての誤りがあり、訂正すべきだった。しかし、軍による関与があったという事実は変わらない」と述べ、慰安婦問題が1つの記事の誤りによって否定されるものではないことを強調した。

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「「朝日バッシングとジャーナリズムの危機」メディア同士の叩き合いを危惧する著名人らが緊急シンポジウムを開催」への1件のフィードバック

  1. 松浦 志奈 より:

    朝日の吉田証言撤回で何よりも残念なことは、池上彰さんと同じ考えです。

    紙面を読む限りで受け取られるメッセージは、証言は誤りでしたが慰安婦問題においては些細なことなので気にしないで下さいということです。なぜ証言が誤りだと述べる記事において、誤りだと分かった経緯、調査の経緯、多くの専門家から疑わしいと指摘されながら証言を放置したのか、いまさらながら調査をしたのか、、、何も述べないまま、誤りでしたが気にしないで下さいといわれても納得できません。証言を否定する記事で述べるべきはまずこれらのことだと思います。

    朝日が述べたことはこのように何の検証も示されないまま、また否定されるという懸念を抱かざる得ません。 検証するための第三者委員会も朝日の利害関係者が多く、原子力安全委員会のような馴れ合い委員会です。いかなる結果が出ても、その結果が公平だと断言できる下地がありません。なぜ社運がかかる討論委員会を、文句のつけようがないほどの第三者で構成しないのでしょうか。

    重大な証言を今更ながらに否定し、且つ長い間放置した経緯を詳らかにする。読者の信用を取り戻すには原点に立ち戻るしかないと思います。これがない限り朝日が何を言っても信用できません。 
    朝日パッシングではなく、読者の当然の疑問と抗議です。

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