「公有水面埋立法の第4条により、県知事は環境保全を考慮して、埋め立て承認を拒否できる。知事は県民を騙している」──。弁護士の三宅俊司氏は、埋め立て承認の違法性を指摘した。
2014年9月5日(金)、那覇市にある沖縄大学で「シンポジウム 違法な辺野古埋立を問う ー「承認」の撤回/取り消しは可能だ!」が開催された。3名のスピーカーが登壇し、辺野古弁護団の三宅俊司氏は、2013年12月26日に、仲井眞弘多沖縄県知事が埋め立てを承認したことの問題点と今後の対応、解決策について話した。
土木の専門家で沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏は、埋め立て反対運動の様子、キャンプ・シュワブのアスベスト問題、基地建設予定地の現状について語った。「ボーリング調査の期間が短縮されたが、工期の計算が合わない。つまり、現在おこなっていることは、既成事実を植え付けるのが目的としか思えない」と指摘した。
沖縄環境ネットワークの真喜志好一氏は、高江ヘリパッド建設工事と普天間基地問題、ジュゴン訴訟などについて報告を行った。「防衛局は、大浦湾の両側も埋め立てる予定だ。伝統行事の辺野古ハーリーの祭礼の浜もつぶされる」と述べ、辺野古の自然環境や伝統文化まで破壊する住民無視の基地建設に憤った。
- スピーカー
三宅俊司氏(弁護士、辺野古弁護団)、北上田毅氏(沖縄平和市民連絡会)、真喜志好一氏(沖縄環境ネットワーク)
- コメント&質問
司会/若林千代氏、新城郁夫氏(琉球大学)、宮城公子氏(沖縄大学)西泉氏(沖縄大学)、大学院生他
仲井眞知事に騙されていた沖縄県民
冒頭で3名のスピーカーが紹介され、「沖縄の新しい知事は、辺野古埋め立て承認の取り消しができる」という、三宅氏の力強い発言からシンポジウムが始まった。
仲井眞知事は、辺野古の埋め立てに関する環境影響評価書で示された環境保全措置について、2012年2月、「事業実施区域の生活環境および自然環境の保全を図ることは不可能と考える」と公表していた。三宅氏は、仲井眞知事に騙されていたと憤り、現在に至る埋立工事の経緯を説明した。
承認取り消し訴訟において、沖縄県は「辺野古に飛行場を作ってみないと、被害状況は把握できない。たとえ被害が出ても、普天間同様、防音工事、金銭賠償で済む」と主張している、と三宅氏は語る。 さらに、行政側が「沖縄県の新設飛行場の被害の有無は、工事の可否の判断材料にはならない。埋め立て承認後の拒否はできない。沖縄県知事の出す免許は要らない」などの言い訳を並べていることを指摘した。
三宅氏は、これは明らかに法律に反すると述べ、「罰則規定がないことを、国の権限の裏付けにしている。しかし、この根拠は『国は不正を働かない』という前提に立っている。また、彼らは県の権限は非常に弱いと釈明するが、承認を取り消しても法律違反にはならない。国の事業でも、地元が承認しなければいけない」と述べた。
違法だった埋め立て承認
次に三宅氏は、公有水面埋立法を取り上げ、埋立承認の違法性を解説。「第4条には『県知事は環境保全をチェックし、承認拒否ができる』とある。事業変更も県に届けなくてはいけない。現知事は県民を騙している。この第4条に基づき、仲井眞知事は承認を拒否すべきで、責任は大きい」とした。
三宅氏は、違法な行政行為には、裁判所を使わずに、知事が自らの権限で取り消し可能だと主張する。そして、「(承認取り消しの場合は)国は原状回復をしなければならないが、埋め立て工事が進んだら、原状回復は不可能になる。土砂を取り除いても、海の自然は回復できない。だから、一日も早く仲井眞知事は、自然が破棄される前に工事を止めなければならない」と辺野古の環境破壊を危惧した。
ウソで塗り固める国と県
三宅氏は、沖縄県が強引に工事を進めるための言い訳を、ひとつひとつ潰していった。「(工事中止によって)損害賠償請求をされるとも言うが、ウソだ。違法な行為に、なぜ、賠償金を払う必要があるのか。国が賠償する問題だ。だが、それは税金なので、住民還付請求をすべきだ。役人は、自分の腹が痛まないから何でもやる」と批判した。
また、三宅氏は、先の竹富島の歴史教科書問題がトリガーになったのではないか、と推測する。「地方自治法改正により、県が埋め立て承認の撤回をすると、国は『それは違法だ』と差し戻しできることなった。不服の場合、県は地方係争委員会に審査請求をしなければならない。国は明らかに、県を服従させる意図で地方自治法を改正している」
「ところが、抜け穴がある」と三宅氏。「国から是正要求があっても、県は突っぱねればいい。すると今度は、国が県を提訴しなければいけない。にもかかわらず、国が違法な行為を繰り返す場合は、国は刑罰の対象にはならないが、業者に罰則を与えられる」と対抗策を示した。
三宅氏は「埋め立て承認には期限がないので、取り消すしかない」と強調し、「中途半端で終わらせては、ある日、突然、工事が再開される危険もある。世論をもっと盛りたてて、工事中止を実現させよう」と参加者を鼓舞した。
海上保安庁は「安全指導」と称して拘束
次に、毎日、辺野古の海に出て反対運動をしている北上田氏が登壇し、埋め立て工事の進捗状況について報告した。まず、「現在、設置されているフロートは、臨時制限区域ではない。海上保安庁は『安全指導』と言って、反対派住民を拘束する。従って、刑特法適用は不可能だ」と述べた。
その上で、8月30日付け琉球新報の記事を紹介し、「現在、21調査地点中9ヵ所が終了。大型スパット台船で、大浦湾の深いところを9ヵ所、引き続き調査に入る」と話した。
「ボーリング調査の目的は、埋め立て用護岸の基礎地盤の支持力を知るため。しかし、調査期間が短縮されている。磁気探査は1メートルごとに50メートルの深さまでやっていくのだが、計算が合わない。そもそも、工期は11月30日まで。その後、実施設計に入るが、海底ボーリング調査と実施設計の工期は一緒。つまり、今回の調査のデータは重要ではないということだ」と述べ、現在おこなっていることは、単に既成事実を植え付けるためとしか思えないと指摘した。
アスベストの危険も見逃せない
話題は、キャンプ・シュワブのアスベスト問題に移った。新基地建設のために解体されるキャンプ・シュワブ内の建物6棟にはアスベスト(石綿)が使用されており、現在、解体工事はストップしている。
北上田氏は「無断で工事を進めていないかをチェックする。着手していたら違法工事だ」とし、「10月27日、アスベストのレベル2の施設を、県の立ち会いのもとで解体に着手するという。現場は埋め立て工事の作業所になるので、防衛局も焦っている」と話した。
そして、「2014年6月、防衛局は大成建設に60億円で工事を発注したが、詳しい内容は非公開だ」と述べて、海上ブイ、フロート、受け桟橋、シュワブゲート前の鉄板、埋め立て工場用仮設道路敷設などではないか、と推測した。北上田氏は「建物解体工事は、まだ3回発注が続くので、引き続き、アスベストに関して追っていく」と表明した。
さらに、大成建設は識名トンネル補助金不正受給問題で、5億8000万円の損害を与えたJVであることを指摘し、今回の発注について、「入札率98%、談合の懸念は免れない」と補足した。
また、「大浦湾の127メートルと250メートルの中仕切り護岸新設工事が入札中で、10月末に契約が決まる。この工事を阻止するのは難しいと思うが、シュワブのゲート前で、ブロック搬入を阻止をしなければならない」と決意を語り、「11月の知事選の前に、埋め立て工事はすでに始まってしまったと、県民に見せつけるために急いでいるのではないか」と述べた。
知事選までに既成事実をつくるのが狙い
続いて北上田氏は、埋立承認申請変更の件について話した。「9月3日、沖縄防衛局が設計内容の変更申請書を県に提出。名護市の許可が下りないため、美謝川の水路を暗きょに変更した。また、辺野古ダム周辺から200万立方メートルの土砂を採取し、2本のベルトコンベアを設置して運ぶ予定を、国道329号線経由でトラック運搬することに変更している」
北上田氏は「埋め立てが始まったら、チェックは不可能になる」と述べて情報公開にも懸念を示し、「知事選までに既成事実をつくることが、防衛局の狙いだ」と繰り返し訴えた。
最後に、「海猿たち(海上保安官)も、防衛局のガードマンと化した。今までに、埋め立てに反対する50人以上が拘束された」と話し、大浦湾での海上保安庁と反対派市民の攻防の様子をスライドで見せた。
麻生、野田両総理の呆れた返答
続いて、真喜志氏がレクチャーに立った。まず、高江のヘリパッド建設工事に関して、やんばるの森の被害や反対住民の排除計画のことなどを話した。
そして、普天間飛行場の問題に移り、伊波洋一宜野湾市長の普天間飛行場の安全不適格宣言(2006年)を説明した上で、「全長4500メートルの確保が必要」と記す米軍安全基準について、沖縄選出議員が国会で質問したことを紹介した。
「照屋寛徳議員は、2008年9月、麻生太郎総理大臣に質問した。2012年4月にも、糸数慶子議員が野田佳彦総理大臣に質問している。両総理の答えは『政府としては、答える立場にない』だった」
2014年2月19日より、沖縄県議会に百条委員会が設置された件では、「辺野古移設計画の承認について、環境生活部長は『環境への懸念は残っている』と発言。農水部長と仲井眞知事は『適法に審査した』と繰り返した」と指摘する。
つぶされる伝統の祭り
また、「防衛局は、大浦湾の両側を埋め立てることは公表していない。これは、伝統行事の辺野古ハーリーの祭礼の浜もつぶすものだ」と真喜志氏は訴える。ハーリー(爬竜)とは、海上で爬竜船(はりゅうせん)を競漕し、海の安全や豊漁を祈る伝統的な祭りで、毎年、沖縄各地で行われている。
真喜志氏は「防衛局は、ハーリーは周辺自治体と協議を行ない、行事および祭礼の場の、移動を検討するという。環境アセスも後出しで提出し、護岸計画など工事の規模をどんどん拡大する」と、地域住民を無視した対応に憤り、次のように述べた。
「海上保安庁の巡視船に『その下にジュゴンがいる』と拡声器で抗議したら、彼らは退散した。(環境破壊をしているという)罪の意識は残っているのだろう」
基地建設は「取り消し」ができる
休憩後、出席者の新城郁夫氏(琉球大学)は、「辺野古基地建設の取り消しができるとは知らなかった」とコメントした。宮城公子氏(沖縄大学)は三宅氏に、「国や県を訴えると言うが、司法はどれくらい信用できるのか。反対派の方が暴力的だという意見もあるが、それを訂正させる方法は?」などと訊いた。西泉氏(沖縄大学)は「政府は、沖縄に対してメチャクチャしている」と述べ、ジュゴン訴訟の進捗状況とアスベスト問題について尋ねた。
まず、三宅氏から質問に答えた。司法の信頼性について、「裁判所の信頼は地に落ちている」と言い、元裁判官に意見を聞いてみたいと話した。また、「この問題は、軍事公共性と環境問題の戦いだ」と指摘し、「もし、軍事公共性が環境を上回るのなら、日本は終わりだ」と断言。沖縄のことは沖縄が決めるべき、と主張した。
中間判決は勝訴、ジュゴン保護訴訟の見通し
続いて真喜志氏が、高江ヘリパッド建設の反対運動への妨害と、ジュゴン訴訟について述べた。「国は、高江で反対運動をする人々のテントや車を止める路肩に、使用制限を加えようとしている」と言い、米国防総省を相手にしたジュゴン訴訟については、「アメリカには、海外で活動する時、その国の法律で保護される文化財を守らなければいけない、という国家歴史保存法(NHPA=米国の文化財保護法)がある。ジュゴンは、日本の法律において天然記念物指定。それを根拠に、基地建設計画の変更、もしくは中止を訴えている」と説明した。
2008年、米サンフランシスコ連邦地裁で、「アメリカは、ジュゴンを保護する方策をとらなければいけない」という中間判決が下っている。アメリカ側は、日本の環境アセス終了を待ってジュゴン保護策を提示したが、原告側は今年8月、さらに追加申し立てを行い、受理された。
その内容は、「アメリカ側が出した保護策は、原告が推薦した自然保護団体とは関係がないので無効。キャンプ・シュワブの制限水域に入る管理権はアメリカにあるので、工事業者への立ち入り許可を、ジュゴン保護のために出さないこと」である。裁判所は申し立てを採用、半年後には結論が出る見通しである。真喜志氏は「この訴訟はすべて、アメリカの弁護士が無償で戦ってくれている」と話し、感謝の意を示した。
県民は勝っている、国は追い詰められている
辺野古埋め立て許可取り消しの件
国の防衛に関する決定を、県知事が勝手に取り消しなどできるわけがない。
まして、連日、中国船が尖閣沖にやって来ている。
沖縄県民は、中国の統治を望んでいるのだろうか?
新知事は、県民の声を聞くべきだ。
皆さんがそうなら、私はどうぞ御随意にと思う。