難航する核廃棄物処分問題 最終処分場は公募から指名へ/電気料金は今後も上がり続けることを示唆 2014.7.29

記事公開日:2014.7.31取材地: テキスト動画
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(取材・記事:IWJ・松井信篤、記事構成:IWJ・安斎さや香)

 「核廃棄物施設の誘致に反対する道北連絡協議会」他2団体の呼びかけにより、核廃棄物の処分方法や処分場に関して、政府関係機関と市民団体との意見交換会が7月29日(火)に参議院議員会館で行なわれた。

 政府側からは、この日、原子力規制庁、資源エネルギー庁、文部科学省、NUMO(原子力発電環境整備機構)、JAEA(日本原子力研究開発機構)が参加した。

■ハイライト

再処理しない直接処分も視野に

 核廃棄物の処分方法について、資源エネルギー庁は、高レベル放射性物質を再処理してガラス固化体にし、地層処分を前提にするのが政府の立場だと説明した。しかし、2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画には、放射性物質を再処理せずに処分する直接処分についても、代替処分として視野に入れることが盛り込まれている。

 これについてエネ庁は、ガラス固化体にする地層処分は時間がかかるため、代替処分も研究していかなければならないと説明。「幅広く処分方法を政府としては検討していく」と見解を述べた。最終処分場に関しても、今後の技術進歩により、処分方法が変更する可能性があることから、一定期間は廃棄物を回収する余地を残すことになるという。

最終処分の適地候補は公募から指名へ

 最終処分の実施は、NUMOが原子力発電事業者の拠出金を元に地層処分を行なうことになっている。適地候補は公募で募っていたが、安全性等の理由から、公募制よりも指名制が適当だとの理由で、指名されることになるという。

 エネ庁はまず文献調査をし、その後、ボウリングなどで外用調査、地下に施設を作る精密調査と多段階で行なうとしている。各段階においては、住民の理解を得るために住民説明が行なわれる。

 適地候補選定については、国が科学的根拠に基づいて適正が高いと思われる地域(科学的有望地)を提示して、全国にマッピングする。エネ庁は「科学的有望地を国の方から示すという大きな転換をはかった。各地域が文献調査の受け入れに関する合意形成に向けて、検討を進めやすい環境を作る」と公募から指名へ変わった意義を説明。加えて、地元合意がなければ文献調査にも入らないと明言した。

 科学的有望地の選定基準は、調査総合資源エネルギー調査会・放射性廃棄物ワーキンググループと地層処分ワーキンググループで専門家が示していくという。現時点ではまだ、検討が始まっておらず、結論期限は未定で、エネ庁は「今後も継続的に議論を要する」と述べた。

オーバーパックの寿命は1000年が目安に

 核廃棄物の最終処分による環境への影響に関し、「どの程度の時間的経過と経路で影響が出るか」という質問にNUMOから説明があった。

 NUMOによれば、処分をした後に地下水によって地表に運ばれるシナリオを考えているという。処分深度を1000Mにした場合、100M程度の岩を通過することを想定。その状態で地表に運ばれる汚染物質の量は、実際に埋められた核廃棄物の0.数%だという。

 これによって受ける被曝は、自然放射線の数万分の1で数十万年以降に地表に出るとNUMOは試算している。岩圧からガラス固化体を保護するオーバーパックの寿命は、錆びでの劣化、地圧などでの力学的脅威、オーバーパック内からガンマ線が出て外側の水を分解してなる腐食などから計算しており、最低でも1000年以上は大丈夫だろうとNUMOは考えている。

 粘土鉱物でオーバーパックを包み、その外側にある天然バリアによって、オーバーパックに万が一穴が開いても放射性物質を封じ込めることは可能だという。

廃棄物の再処理事業等の前払金「国は負担しない」

 核廃棄物処分のための再処理事業にかかる前払金について、質問がおよんだ。再処理費用に相応した実績が上がっていないことに対して、経済産業省は、「最終処分のプロセスが進んでいないことは認識している。処分地の選定を進めている」とだけ回答。

 莫大な前払金は、電力料金に上乗せされているような状況である。北海道電力は、昨年に引き続き、電気料金の値上げを申請した。福島原発事故以降に値上げの再申請をするのは初めて。家庭向けなどの電気料金を平均で17.03%値上げし、企業など大口向けの電気料金は平均22.61%の値上げになるという。前回の値上げが家庭向けで7.73%、企業などで11%だったことから、今回大幅な値上げとなる。

 これに対してエネ庁は、再処理から最終処分までの積立金について説明。再処理の費用は、原子力環境整備促進資金管理センターに各電力会社ごとに資金を積み立て、必要に応じて日本原燃に支払うという仕組みになっている。2005年に施行された「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」では、再処理に必要な経費は、日本原燃と各電力会社による民民の契約で行われると定められており、国が救済することは検討されていないという。

 最終処分にかかる費用については、ガラス固化体を前提として地層処分する実施主体のNUMOに、拠出金として各電力会社から費用が支払われる仕組み。核廃棄物は受益者負担であることから、電力料金から回収し、最終処分を行なうと説明された。

 つまり、再処理から最終処分に関しての費用は、国が負担することなく、大方電気料金でまかなわれることになる。再処理や処分方法が難航し、その分のコストがかかればかかった分だけ、電気料金が値上げされることが懸念される。

六ケ所村での実績は総量の13%の再処理

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「難航する核廃棄物処分問題 最終処分場は公募から指名へ/電気料金は今後も上がり続けることを示唆」への2件のフィードバック

  1. emika Massion より:

    7月29日の政府院内会合は交渉ではないという姿勢でありながら質問項目は確信に迫るものが多く、怒号が飛び交わない会合の中で静かな口調でとり進めることを目標としていました。
    LIVEと、中継記録の観覧者から声が寄せられました。また、参加者からも「敵対しない静かな会合の利点」について共感する声、期待する声、次回質問内容のヒントなどをお寄せいただきました。
    会合を進める参加者の人数をわざと小さくし、荒れた内容にならないよう注意しながら友好的に象徴の方々に教えていただくということは、大事な姿勢だと思っています。
    進行係が書記をできないので、記録として配信をしていただけることは大変助かります。
    ありがとうございました。

  2. emika Massion より:

    7月29日の政府院内会合は交渉ではないという姿勢でありながら質問項目は核心に迫るものを、をめざしました。
    怒号が飛び交わない会合の中で静かな口調でとり進めることを目標としたつもりです。
    LIVEと、中継記録の観覧者からすぐに声が寄せられました。また、参加者からも「敵対しない静かな会合の利点」について共感する声、期待する声、次回質問内容のヒントなどをお寄せいただきました。
    会合を進める参加者の人数をわざと小さくし、荒れた内容にならないよう注意しながら友好的に「省庁の方々に教えていただく」ということは、大事な姿勢だと思っています。
    進限られた人数の中で、やりくりをしているので書記をする余裕もありません。
    記録として配信をしていただけることは大変助かります。
    ありがとうございました。

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