「清掃工場が、いつのまにか原子力施設に」 〜放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会 第5回学習会 2014.6.29

記事公開日:2014.6.29取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「鮫川村の仮設焼却場では、放射性物質が25%排出していた。環境省に説明を求めると、『お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えするのは困難である』などと言う。これでは『環境汚染省』ではないか」──。

 2014年6月29日、福島県郡山市の福島県教職員組合郡山支部で、「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会 第5回学習会」が開催された。永田文夫氏(三陸の海を放射能から守る岩手の会)と藤原寿和氏(千葉県放射性廃棄物を考える住民連絡会)が講演を行った。また、主催者らが、千葉県指定廃棄物処分場計画、栃木県指定廃棄物処分場計画、フクシマエコテック処分計画などについて、進捗状況を報告した。

 仮設焼却炉における生活環境影響評価(アセス)に、放射性物質に関する記述がないことについて、藤原氏は「廃棄物処理法、土壌汚染対策法で、放射性物質は生活環境影響評価に含まれていない。法律では3年後に見直すと書いてあるが、環境省は引き延ばしている可能性がある」と話した。

 「自宅の100メートル先に除染廃棄物の仮置き場がある」という参加者は、「環境省は『3年間放置する』というので、それは違反だと言うと、『1年ごとの契約だから問題ない』と答える」と話し、法規制がないことを訴えた。藤原氏は「仮設には、法律が適用されない。それを環境省は逆手に取っている」と批判した。

■全編動画 1/2

■全編動画 2/2 ※8分9秒後から始まります。

  • (午前の部は録画に含まれません)
  • 焼却による環境への影響等について
    講演 永田文夫氏(三陸の海を放射能から守る岩手の会世話人)「宮古市における指定廃棄物焼却による環境への影響について」
    講演 藤原寿和氏(千葉県放射性廃棄物を考える住民連絡会事務局長)「伊達地方衛生処理組合による霊山町石田の仮設焼却炉における生活環境影響評価(アセス)の不備について」
  • 最終処分場問題について
    千葉県指定廃棄物処分場計画/栃木県指定廃棄物処分場計画/フクシマエコテック処分計画/中間貯蔵施設
  • 日時 2014年6月29日(日)10:00~16:30
  • 場所 福島県教職員組合郡山支部会議室(福島県郡山市)
  • 主催 放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会

反対運動で阻止したトリチウムと炭素14

 まず、永田氏が「宮古市における指定廃棄物焼却による環境への影響について」と題して話をした。

 永田氏が所属する、三陸の海を放射能から守る岩手の会は、青森県六ヶ所村の再処理工場の汚染水が、海を南下することに危機感を抱いて結成された。また、岩手県滝沢市には、27年前から医療用放射性廃棄物を処理しているところがあり、それには数年前から反対しているという。

 永田氏は、滝沢市にある日本アイソトープ協会滝沢研究所(ラジオメディカルセンター RMC)のスライドを見せて、「反対運動の結果、半減期の長いトリチウムと炭素14の搬入は阻止できた。その結果、ここで扱う放射性廃棄物は、半減期が1年以内のものに限られ、今のところ汚染は確認されていない」と述べた。

 その焼却処理設備について、0.3ミクロン以上の物質は99%除去可能だというHEPA(ヘパ)フィルターのスライドを見せて、「フィルターは0.3ミクロン以下のものは除去できない」と話した。

1リットルあたり1億7000万ベクレルのトリチウム

 永田氏は「バグフィルターは放射性セシウムが付着しやすい。すべての微粒子が除去できるかどうかを、川田龍平参議院議員を通じて環境省に聞いた。『99.999%とれる』と答えが返ってきたが、ごまかしている」と述べ、その理由について、ナノ粒子の性質、神奈川のある焼却場の稼働を止めたらぜんそくが激減した実例、岩手県内の最終処分場の排水中のセシウム検出などの例を挙げて説明した。

 そして、「国の基準では、セシウム134は1リットルあたり60ベクレル。セシウム137が同90ベクレル。飲料水の基準値は、同10ベクレルだ。清掃工場が、いつのまにか原子力施設になってしまった」と憤った。

 また、「福島原発の汚染水中のトリチウムは、1リットルあたり1500ベクレル。基準は60万ベクレルなので、外に排出しているという。六ヶ所村再処理工場では、トリチウムは試験操業で1リットルあたり1億7000万ベクレル検出された。本格操業すると、それが1日おきに排出されることになる」と懸念を示した。そして、「再処理工場と六ヶ所村住民との間で、年間の線量を0.22ミリシーベルトで取り決めた」と話した。

セシウムは総量規制で管理するべき

 続いて、岩見億丈医師らの調査に基づいた論文『宮古市放射線セシウム汚染物焼却による空間線量率の上昇』を紹介した。その中で、「宮古市の焼却施設で、汚染された農林業系副産物の試験焼却の際、15~21%放出と推定している。また、19%の微小粒子も除去できていない」と述べ、宮古市の各地点で計った放射線量を示し、焼却との因果関係を分析した。

 最後に、永田氏は「一般ゴミ焼却炉における汚染牧草の処理では、2割が大気中に放出されている。風下でも線量の異常上昇がみられる。ゴミ焼却の放射性セシウムは、総量規制で管理するべきだ」と話して、講演を終えた。

 質疑応答に移り、焼却炉のバグフィルターの性能については、藤原氏が補足説明をした。参加者からは「焼却炉を作るのが目的になってしまい、あとから燃やすものを探しているのではないか」という疑問の声も発せられた。

水質調査がない生活環境影響評価

 次に、藤原氏が「伊達地方衛生処理組合による霊山町石田の仮設焼却炉における生活環境影響評価(アセス)の不備について」と題してレクチャーをした。

 まず、「生活環境影響評価とは、平成9年、廃棄物処理法改正で義務づけられたもの。焼却施設、産廃処分場などを作ることに対して、住民、市町村首長の合意を得るために評価を行う。しかし、不備が多い」と述べて、その手続きや環境調査の流れなどを説明した。

 次に、伊達地方衛生処理組合『仮設焼却炉における生活環境影響評価書』(平成26年2月)を取り上げて、施設の性能、仕様、規模、基本構造、除染廃棄物の焼却施設の概略を説明。そして、「施設排水は処理場内で循環処理するため、水質調査は要らないというが、不十分だ」と指摘した。

アメリカの10倍も甘い基準

 「大気中の排ガス、運搬車両の騒音や排気ガス、焼却臭などが調査対象だが、大気放出に関しては、調査範囲が2キロメートル圏内で狭すぎる。また、排出ガスの調査項目に、水銀、鉛などが含まれていない」と話す。

 「煙源条件は、24時間操業で、煙突は30メートル。排ガス成分では、煤煙、塩化水素、ダイオキシンだが、国際的にとても緩い基準値だ」と言い、さらに、「気象条件も考慮していない。短期高濃度汚染の評価は、アメリカの10倍も基準が甘い」と言い、周辺地図を示して、煤塵が降る予測はとても難しいことを解説した。

 藤原氏は「問題は、アセスで悪い結果が出たら困るので、いろいろパラメーターを操作し、数値を合わせようとしていることだ」と述べた。さらに、生活環境調査を、自治体の条例のアセスと比較して、水質、地盤沈下、生物環境、人と自然のふれあい、文化財、環境の負荷などの観点が欠落していることを明かした。

 さらに、「大気汚染予測の問題点は、調査対象区域と気象調査期間。また、拡散シミュレーションモデルは、平坦地での設定だ。トレーサー物質放出での大気拡散実験も行なわれていない。そして、希釈拡散倍率の矛盾。さらに、建屋からの汚染物質の漏えいも検討されていない」などと、次々と不備を指摘していった。

行政は燃やすことしか考えていない

 休憩後、駒崎ゆき子郡山市議会議員が「行政は、燃やすことしか考えていない。永田氏の講演はとても参考になり、議会での反対尋問の参考になった」と話した。

 次に、藤原氏が、千葉県指定廃棄物処分場計画について報告した。「国の指定廃棄物再処分場は、現在、福島県以外は、宮城、栃木、茨城、群馬、千葉県の各県内で計画されている。千葉県だけは、反対意見がなく合意になり、8月から9月に場所が決まる予定だ」と述べた。

 「廃棄物の原因を作った東電は、処分に関知しない。われわれは環境省に、東電から方針を出させるようにと要望書を提出したが、彼らは忙しいことを理由に、その回答を拒否した」。

 次の報告者が「栃木県指定廃棄物処分場計画について、国は6月上旬、有識者の第3者協議会を、9月頃までに設置することを決めた。自治会長の協力を求めているが、なかなか同意に至らない。議員にアンケート調査を実施中だ。拠点作り、資金作りは難航している」と報告した。

オリンピック前にすべて終わらせたい国の魂胆

 フクシマエコテック最終処分場計画については、環境省の富岡町住民説明会を参考に、主催者から話をした。

 「原子力基本法に基づいた特措法により、1キロ当たり10万ベクレル以下は、放射性廃棄物として扱わなくていいので、各県内で処分することになった。フクシマエコテックは、そのために計画された最終処分場だ」。

 「国の資料のQ&Aには、『10万ベクレル以下の廃棄物は、素掘りの溝に安全に処分できる。遮蔽シートは100年の耐久性がある』などと書いてある。また、フクシマエコテックの近くに、500トン級の焼却炉も計画中だが、住民説明会では、それについては説明が一切なかった。密かに、当該自治区だけに説明会を開催していた。それについて、住民より質問があり、『すでに、町と地元自治区の了解を得ている』と環境省が答えたところ、反対の声が上がって説明会は紛糾した。ちなみに、工事費用は600億円(税別593億円)で、三菱重工環境JV受注事業だ」。

 主催者はセメント固化の脆弱性も危ぶみ、10万ベクレル以上の廃棄物を貯蔵する中間貯蔵施設についての要旨を説明した。その上で、「復興の美名のもと、除染を進め、オリンピック前にすべて終わらせたいという魂胆が丸見えだ」と建設の反対を訴えた。また、「安全が前提なので、賠償は地権者しか認められていない」と述べ、何かあっても、周辺住民は守られないことを案じた。

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