「なぜ、この場所なのか?」。最終処分場の候補地となった福島県富岡町の住民は何度も問いかけたが、環境省は「今ある産廃の処分場を活用できるから」と繰り返し、さらに最終処分場ができることで住民の帰還にどのような影響が出るかについては、「処分場の活用と、住民の帰還とは別の話」と応じた──。
2014年6月14日(土)10時より、東京都中野区の中野コングレスクエアで、環境省による「特定廃棄物の埋立処分計画に係る住民説明会」が行われた。この計画は、福島県富岡町にある産業廃棄物最終処分場フクシマエコテッククリーンセンターを利用して、放射性物質が1キロあたり10万ベクレル以下の「特定廃棄物」を埋め立て処分する管理型最終処分場を作る計画である。
住民説明会は、6月8日と15日に福島県いわき市と郡山市で、14日は東京の中野と埼玉県さいたま市で、合計6回の開催となる。なお、富岡町は同処分場の建設を受け入れているわけではなく、「環境省側の説明を聞き、町民と話し合って結論を出す」としている。
「説明会開催=計画受入れ」ではない
環境省指定廃棄物対策チーム室長の是澤裕二氏があいさつに立ち、富岡町の施設が特定廃棄物の最終処分場の候補になった経緯を話した。
次に富岡町の宮本皓一町長が、「昨年12月14日、石原伸晃環境大臣と根本匠復興大臣が、富岡町に最終処分場の建設要請に来た。しかし、その説明だけでは納得できず、町民からもさらなる説明の要請があった」と述べた。
また、「説明会を受け入れたことで、(富岡町が)計画を承認したと思われる懸念があるため、2014年5月13日付で石原環境大臣に『説明会開催と受け入れ是認は別。今後とも、町民と議会の意見を受け入れるように』と申し入れた。井上信治環境副大臣から、その承認を得た」と語った。
施設周辺の放射線量は年間0.056ミリシーベルト
出席者紹介に続いて、環境省担当者が特定廃棄物の埋立処分計画の概要説明を行なった。
「最終処分場では、双葉郡8町村の生活ゴミと、旧警戒区域、計画的避難区域のがれきなど、10万ベクレル/キロ以下の災害廃棄物を埋め立て処分する。可燃物は焼却し、その灰はコンクリート固化し埋め立てる」と述べた。さらに、汚染物質の処分と管理方法、国の責任の明示、廃棄物の運搬方法、埋め立てに際した具体的な安全対策、浸出水対策、埋め立て後の管理監督責任、住民への積極的な情報公開、事故災害時の対応などを、矢継ぎ早に説明した。
担当者は、雨水などによる土壌への汚染水漏えい、放射能汚染、有事の際の国の責任などについて、万全な対策を施すことを強調した。
また、周辺の被曝線量は、埋め立て作業中は年間0.056ミリシーベルト。埋め立て完了後は年間0.2マイクロシーベルトと推定。廃棄物運搬の際は、通学路、商店街の走行はなるべく避け、運搬車両の交差点停止時の追加被曝線量は年間0.04ミリシーベルトと試算した。
なぜ被災地に押し付けるのか
質疑応答に移った。町民から「なぜ、最終処分場を被災地に押し付けるのか。将来、土地をまっさらにして返してくれるのか。現在、生活保護を受けているが、賠償金を受け取ったら税金をかけるというので、賠償金はもらっていない。こんな悲惨な目に遭わせて、どう思っているのか」という声が上がった。
資源エネルギー庁原子力損害対応室の奥村企画官が、賠償金額について、「帰還困難区域は、精神的損害賠償で700万円。それ以外の地域は月10万円。現在、土地などの財物の時価相当額について追加賠償を進行中だ」と説明した。
環境省の担当者は「キロ当たり10万ベクレル以下の廃棄物の処分については、各県内で処分することになっている。今回の計画は、既存施設(エコテック)を活用できる。10万ベクレル以下は安全性も高い、という観点から候補に上がった」と答えた。
必要な施設だが、迷惑な施設
「最終処分場の候補地は富岡町と楢葉町の境目にあるが、子どもたちへの安全性の点から、住民帰還の妨げになるのではないか。環境省、町長、町議会議長、教育長の意見を聞きたい」。
この質問を受けて、環境省の担当者や町長らが順に答えていった。
環境省担当者「4月16日と20日に楢葉町で説明会を開催した。帰還の妨げになるという意見、線量の低い候補地を選択する理由や、国の責任についての質問などがあった。安全対策を十分に検討したい」。
宮本町長「環境省から説明を受けた。必要な施設だが、迷惑な施設でもある。町民の声を聞き、議会の了承を得てから決断することになると思う」。
石井賢一教育長「学校の再開は、年間1ミリシーベルト以下にならない限り、考えていない。この施設の受け入れとは別」。
塚野芳美町議会議長「Q&Aに書いてある程度の説明では不十分。私は説明会の開催を拒否したが、住民たちから『議長が勝手に決めるな』との反発もあり、開催に至った。現状では、まだ納得できない」。
1日トラック70台。常磐道と国道6号から廃棄物を搬入
「埋め立て処分場の必要性は理解できるが、半径20キロ圏内、双葉郡8市町村の廃棄物を全部持って来られても困る」という町民の声に対して、環境省担当者は「復興に際して、廃棄物の処分は重要な課題になっている。1ヵ所に集中して処分することが、安全性や管理のためにもいい。積み込み時と運搬・搬入時の安全性、放射能汚染対策はしっかりやって、住民に説明していくので理解してもらいたい」と応じた。
さらに別の町民から、「10年後に処理場のスペースが不足した場合は、どうするのか。また、搬入に際して1時間あたりの交通量はどうなるのか」との質問があった。
建設省の担当者が「常磐道と国道6号を利用して、楢葉町を通過することになる。定められたルートの検討を、住民と調整していく。一日あたりトラック60~70台、廃棄物65万立方メートル、生活ゴミ2.7万立方メートルの収容量を推定している。今まで双葉郡8町村の生活ゴミを、大熊町の施設で受け入れていたが、被災により操業不能となった。10年目以降のことは、双葉郡の長期的復興計画も踏まえて、考えていかなくてはならない」と答えた。
なぜ、帰還困難区域内に作れないのか
「では、8000ベクレル以下の廃棄物の扱いはどうするのか。有事の損害賠償は国が責任を持つというが、エコテックは民間委託ではないのか。また、放射性物質をゼオライトに吸着させるというが、その(吸着済みの)ゼオライトは、どう処分するのか」。
この質問に、建設省担当者は「生活ゴミ、災害廃棄物は8000ベクレル/キロ以下も含めて、10万ベクレル/キロ以下については埋め立てる。国が事業主体になるので、(有事の際は)国家賠償法に基づき、損害賠償を行なう。ゼオライトは10万ベクレル以内で交換してコンテナに封印、同施設で処分する。また、10万ベクレルを超える廃棄物は、中間貯蔵施設の専用施設で貯蔵していく」と回答した。
町民は「そういう施設は、帰還困難区域内に作ればいい。なぜ、わざわざ富岡町でも線量の低いところに作るのか」と質した。
環境省担当者が「新しい処分場を作るとなると、調査などを含め3~4年かかってしまう。その間、復興の妨げになってしまうので、既存の施設を活用したい」と答えると、質問者は納得せず、「10万ベクレルを超えるものは中間貯蔵施設に保管するというなら、(10万ベクレル以下のものも)そこで処分すればいいのではないか」と畳み掛けた。
環境省担当者は「なぜ、中間貯蔵施設の案が出たかというと、30年後に(県外で)最終処分することになっているからで、それまでは10万ベクレル以下の廃棄物や生活ゴミなどは、(富岡町の)最終処分場で処分するという計画になった」と回答した。
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