2014年4月20日(日)16時より、福島県いわき市内に設けられている、楢葉町小中学校仮設体育館において、環境省と楢葉町による「特定廃棄物の埋立処分計画及び楢葉町内の災害廃棄物等仮設焼却施設の設置に関わる説明会」が行われた。楢葉町の松本幸英町長、宍戸陽介副町長はじめ、福島県、復興庁、資源エネルギー庁、環境省などから多数の関係者が出席した。
環境省の計画によると、1キロあたり10万ベクレルまでの指定廃棄物を、楢葉町に隣接する富岡町のフクシマエコテッククリーンセンター(搬入口は楢葉町側)に埋め立てる、という。また、廃棄物の減容化のため、楢葉町波倉地区に、仮設焼却施設と焼却灰のセメント固型化施設を新設する計画も提案されている。
波倉地区は、2012年にも除染廃棄物の中間貯蔵施設の候補地となったが、楢葉町が受け入れを拒否している。その代替え案のように今回の計画が浮上したことで、説明会に集まった住民からは、候補地選定の経緯や事業そのものへの疑問、放射性物質への不安などが続出した。
- 日時 2014年4月20日(日)16:00~
- 場所 楢葉町小中学校仮設体育館(福島県いわき市)
「キロあたり8000〜10万ベクレルまで」を埋め立て処分に
はじめに、環境省指定廃棄物対策チーム室長の是澤裕二氏が挨拶に立ち、「中間貯蔵施設、仮設焼却施設の設置は、福島県知事の意見もあり、大熊町、楢葉町で検討することになった」と、今日に至る経緯を話したのち、出席者を紹介した。
環境省の担当者が、特定廃棄物の埋立処分計画の概要説明を行なった。この事業は、平成13年に操業を開始した、産業廃棄物最終処分場フクシマエコテッククリーンセンターの、残り容量の約74万立方メートルに、双葉郡8町村の生活ゴミ、対策地域内廃棄物、指定廃棄物を埋め立て処分するもの。
約44.5万立方メートルの対策地域内廃棄物は、旧警戒区域、計画的避難区域などで発生した災害廃棄物で、可燃物は焼却して処分する。約18.2万立方メートルの指定廃棄物は、福島県で発生した焼却灰、下水汚泥、浄水発生土、農林業系副産物のうちの、8000~10万ベクレル/キロ以内の廃棄物で、可燃物は焼却灰で搬入する、などと説明した。
さらに、「楢葉町の一般生活ゴミ(不燃物含む)は10年間、その他の廃棄物の受け入れ期間は、6年間を目処とする」と述べた担当者は、汚染物質の処分と管理方法、放射性物質汚染対処特措法に基づいた国の責任の明示、廃棄物の運搬方法、埋め立て処分の具体的な安全対策、浸出水対策、埋め立て後の管理監督の所在、住民への積極的な情報公開の確約、事故災害時の対応を、矢継ぎ早に話していった。
焼却灰はセメントで固めて埋める
楢葉町における仮設焼却施設及びセメント固型化施設について、環境省からの説明は続いた。楢葉町波倉地区の5ヘクタールを候補地に挙げ、「仮設焼却施設は、廃棄物の容量を減らすために必要。セメント固型化施設は、焼却灰の放射性物質の溶出を押さえるため」と説明した。
楢葉町からは、可燃物の廃棄物が3万6000トン、除染作業による廃棄物は9万トンが発生すると見込まれ、施設では1日120トンを処理するという。担当者は、放射線、排水、排ガス、保管についての安全性と、具体的な安全対策を述べた。また、セシウム除去のために焼却炉に二重に施したバグフィルターの仕組みを解説、その安全性を強調した。
次に、セメント固型化施設について、「焼却灰約7.5万立方メートルをセメントで固めて、埋め立て処分するための施設。これにより、放射性物質の雨水などへの溶出が低減される。固型化した廃棄物は、直接、フクシマエコテックへ埋め立て処分にする」とした。さらに、受入、粉砕、混練、養生などの作業フローや、5年間の稼働と1年の撤去作業など、スケジュールを語った。
ストロンチウムは、どうなるんだ?
質疑応答に移り、住民から「セシウムのことばかり言うが、ストロンチウムなど他の放射性物質については、どう考えるのか」と問われると、担当者は「放射性セシウムが、遠方まで多量に飛散したというデータから、セシウムを基準にして対策している。ストロンチウムなど、他の放射性物質についても測定し、放射能濃度を管理して搬出搬入などを行う」と回答した。
「それなら、ストロンチウムのデータを提示してほしい」と質問者は畳みかけたが、「セシウムとストロンチウムは挙動が違う。ストロンチウムはセシウムより飛散性がなく、原発周辺の汚染水などには含まれるが、環境中からはあまり検出されていない」など、あいまいな返答にとどまった。質問者は「ストロンチウムなどが、焼却施設やセメント固型化施設の中で、最終的にどうなるのか不安なのだ。それがわからないと、われわれは納得できない」と訴えた。
「ゼオライト吸着塔でセシウムを除去するとのことだが、ゼオライトは満杯まで吸収したら、逆に放出する」との指摘には、担当者は「ゼオライト吸着塔はギリギリまで使わず、余裕を持って交換する」と応じた。
なぜ、10万ベクレル。なぜ、楢葉町なのか
「キロあたり10万ベクレルとは、シーベルトにするといくらなのか」という質問に、担当者は「10万ベクレル/キロのものを、さまざまな処理をしてから埋める。処分場の敷地境界での追加線量は、年間0.056ミリシーベルトと算出している」と答えた。
「そうではなく、10万ベクレルは、何シーベルトか?」と重ねて問いかける質問者に、別の担当者が「線量は廃棄物との距離によって変わる。10万ベクレル/キロのものに1センチまで近づいた場合、23マイクロシーベルト毎時になる。しかし、現実的には、ずっと密着しているわけではないので…」と答えた。質問者は「前に役場から聞いた数字とは違う。バカにするな」と怒りをあらわにし、「だいたい、10万ベクレル以下という根拠は何か」と詰めよる場面も見られた。
また、この施設選定の経緯、地権者との交渉方法、事業終了後返却という土地の借り上げの是非、事業の進め方への不満、地域振興策の有無、バグフィルターのセシウム除去能力への不安など、疑問や意見が相次いだ。さらに、「このような説明会の開催は、全住民へ案内をするべき」との声も上がり、今回の廃棄物処理計画に対する、住民の不安や憤りが噴出した説明会となった。