【特別寄稿】がれき広域化の闘いから見えてきたもの(Ⅰ) ~破綻したがれき広域化と復興資金流用(環境ジャーナリスト青木泰)

記事公開日:2013.10.16 テキスト
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※会員無料メルマガ「IWJウィークリー第18・19・20号」より転載

「がれきの広域処理」とは、一体何だったのか。そして、400万トンのがれきと復興予算1兆円はどこへ行ったのか――。

 2013年、ひっそりと終息した「事業」の謎、からくりについて、この問題をずっと追い続けてきた環境ジャーナリストの青木泰氏に、9月20日、岩上安身がインタビューしました。

 青木氏から語られる驚愕の事実の数々。いかにでたらめなものだったか、詳細に明かしていただきましたが、内容が多岐にわたるため、「テキストでも理解したい」という声があがりました。そこで、青木氏にこの問題をテーマに、総括を寄稿していただくことになりました。

 以下のインタビュー動画とあわせ、本寄稿をご覧いただくことにより、「がれきの広域処理」の目的と、「復興税」という形で今後国民一人ひとりが負担する予算の行方が見えてきます。ぜひ、ご覧ください。

【インタビューの動画記事】
がれきの広域処理は官僚とゼネコンと広告代理店の「腐敗の絆」だった
~岩上安身による青木泰氏(環境ジャーナリスト)インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/102278

(ダイジェスト動画)

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◆◇がれき広域化の闘いから見えたもの(Ⅰ)◆◇
~破綻したがれき広域化と復興資金の流用
2013年9月25日 環境ジャーナリスト 青木泰

<概要>

 今年7月17日、H25年度も広域化は必要だと、受け入れ表明してきた大阪、富山などが前倒しして、終息することが発表された。富山は7月末に終了し、大阪は8月に持ち込みが終了し、9月中に処理が終了する。

 これで残っていた岩手県がほぼ全体が終了することになり、今年1月、先に決まっていた宮城県の終息に加え、がれきの広域化は全面的に終わった。(*1)
当初環境省が予定した400万トンの内、3%の12万トンで終了した。これは破綻と言ってよい事実である。この終了もまた破綻も大メディアは、全国ニュースとして報じていない。

 この機会に、筆者は9月20日にIWJの岩上氏にインタビューを受けて、がれき問題を総括するお話をさせていただいた。その要点や話たりなかった点を今回は、IWJのメルマガで、何回かに分けて報告させていただく。

 広域化は終わったとしても、被災地でのがれき処理は当分続き、福島原発から放出された放射性物質で汚染された草木を剪定した生活ごみや、下水汚泥の処理は、焼却処理と言う形で東日本の地域で続く。

 各地の廃棄物の処理や焼却によって濃縮された焼却灰などの汚染度の高い「指定廃棄物」が、今福島県の鮫川村などで焼却されるという問題も残っている。(8月29日に鮫川の試験焼却炉で爆発があったとの報告があった)

【IWJ記事】
2013/08/29 鮫川村高濃度焼却施設が事故で緊急停止 ――「ベルトコンベアの覆いの破断」との説明。地元住民からは「鉄砲を打ったような衝撃音」の証言

2013/08/30 【福島】鮫川村焼却施設事故を受けての村役場への申し入れと焼却施設内での環境省による原因説明

 そして森林除染によって、汚染樹木をわざわざ刈りだし「バイオマス発電」名目で焼却炉で燃やし、再び放射性物質の拡散する試みも行われようとしている。候補地の一つとして挙げられている福島県東白川郡塙町(はなわまち)で住民は、福島第一原発の事故による被曝に続く、第二の被曝が始まると反対の声を上げついに、9月20日町長は計画撤回を発表した。

 鮫川村での爆発事故や推進派町長のリコールが現実化する中で撤回させることができたといえる。

 新たな課題を見据えつつ、がれきの広域化問題を振り返り、Ⅰ:破綻したがれき広域化と復興資金の流用,Ⅱ:行政チェック機能を失ったメディア 、Ⅲ:がれき広域化との闘いが残した教訓、について報告して行きたい。今回は、「破綻したがれき広域化と復興資金の流用」について報告する。

広域化処理が終息し、破綻していたことの意味

 がれきの広域化処理は、搬入が予定された自治体住民の反対活動の結果、予定された処理量の数%の実施率にもかかわらず、終息した。これは予定していた広域化処理が完了したというよりは、破たんしたと言ってよい事実だ。

 広域化の9割を占めていた宮城県発は、すでに終息を今年1月10日に発表。しかし、その事実は全国紙で報じられていない。

◇400万トンのうち、僅か12万トンの処理で終了!?

 がれきの広域化処理は、被災3県のがれき総量2,250万トンの内、福島県を除く宮城県、岩手県のがれきの内、それぞれ344万トンと57万トン、合計401万トンを予定し、それによって国家予算を組み込んだが、実際は12万トン3%で終了した。(表1)

   表1 広域化計画量と達成量
     当初計画量     達成量
宮城県 344万トン      6万トン
岩手県  57万トン      6万トン
計   401万トン      12万トン

 
 絆キャンペーンとして銘打って、あれだけ国中を騒がせ、賛否で国論を二分したがれきの広域化処理が、全国の市町村での受け入れ(一部事務組合も含む)が、予定していた400万トンの3%の12万トン(*2)で終了したのである。

 これは計画の破たんと言ってよいが、計画が終了したことだけでなく、破綻したことも大メディアの全国版で報告されていない。

◇終息宣言を報じない大手メディア

 がれきの広域化の9割を占めていた宮城県発のがれきの広域化が、今年1月に、最後に残っていた北九州市や東京都、そして茨城県が、予定を1年間前倒しにして終了した時、環境省は、音なしの構えで、それについてのコメントも何も発表することは無かった。

 また岩手県発のがれきも、埼玉県に運ぶ昨年9月に契約したものが、同年11月の再調査の結果、わずか2か月で、10分の1になった。そして静岡県に運ぶものが、同様に9月以降の契約量が、再調査の結果7分の1になったことが判明し、次々と終了した。この時の再調査結果を明らかにしなかった秋田市、大阪府・市、富山県等も、その後それぞれ今年4月、7月、9月に前倒しで中止になった。

 すべて理由は、「再調査の結果判明した」と言うことである。しかし「再調査の結果」同じ業者が同じ個所を測定して、そのたびに大幅に下方修正されること自体通常ならばありえないことである。

◇あまりに杜撰な政府の試算

 がれきの総量の推定が、素人目には難しいと言っても、デスクワークを仕事とする役人たちが測定する訳でなく、専門の委託業者に業務委託し、測定している。

 ちなみに仙台市は、がれきの処理は、政令指定都市として独自に進めていたが、町中にがれきが飛散していた段階から135万トンと言う数量を推定し、分別資源化を進めた後、最後まで135万トンの予測量は変わることがなかった。

 専門の測量業者の測定値が、数か月の間に、何度も図り、そのたびに半分になったり、7分の1や10分の1になったりし下方修正され、発表された測定値によって、広域処理の必要性の有無が変わるのである。これは測定データに基づき政策判断を行っていたというより、政策判断に基づき、データ操作を行っていたというのが実態であろう。

 いずれにせよ、がれきの広域処理の計画が当初の3%で終わったということは、がれきの広域処理が元々必要なかったということができる。400万トンの計画の下に予算化したお金の行く先を、私たち国民は、したがってメディアは、追及する必要があった。

◇余った復興予算1兆円の行方

 今回の復興予算で3県のがれきの処理費用は、1兆700億円を計上していた。それは、被災地市町村や県での処理費と広域化処理費を合算したものであった。国は広域化処理に要する費用は明らかにしていないが、がれきの総量2250万トンに、従来のがれきの処理コスト=1トン当たり2.2万円(*3)をかけると

  2,250万トン×2.2万円≒5000億円となり、

 400万トンの広域化処理を考えているため、倍額の1兆円になったと考えられる。とすると400万トンの広域化処理が97%必要なくなった現時点では、ほとんど広域化に用意した復興予算が余っていたことになる。

 がれきの広域化が、破綻的に終わったということは、余剰となったお金の行く先を問いかけ、探るということに繋がってゆく。

 がれきの広域化が終息した、そしてそれが破綻的に終息したということを、メディアとして報じて行けば、巨大な余剰資金がどこに行ったのかをはっきりさせることに行き着くのだ。逆に終息、破たんを報じない大メディアは、この巨額の余剰資金行く先を明らかにしない環境省に寄り添うということにならないか?

環境省の復興予算の流用―手を挙げただけで補助金問題

 復興予算の流用化問題は、昨年秋ごろから、被災地の復興予算が被災地ではない税務署の耐震補強費や、原子力の研究費、九州の林道づくりに手当されていると騒がれ始めた。

 先日の新聞報道では国全体ですでに2000億円にもなっているという。本来被災地の復興や被災者の救済に向けられなければならない復興予算が、各省庁の予算として使われ、流用化されるというのは、国の土台を支えているはずの行政機関が腐り始めているということがいえる。

 この流用問題で、環境省が俎上に上り、メディアでも取り上げられ始めたのが「手を挙げただけで補助金を交付」問題だ。この補助金(=交付金)は、全国の市町村の焼却炉やリサイクル施設等の一般廃棄物の処理施設の整備(=建設やメンテナンス)費用に使われていた。

 本来一般廃棄物の処理施設は、市町村の事業として計画を立て、事業費も賄うことが、廃棄物処理法第6条と6条の二で定められている。費用として足りない分は、国や都道府県が補助金(交付金)で補填してやりくりする仕組みになっている。補助金の大半を支給する国では、環境省の前年度の本予算に組み込み、そこから交付金として支給される。

 したがってどこから考えても、復興資金をこれらの市町村の一般廃棄物の施設整備(=建設)事業に使うのは、理由が成り立たない。

 今回どのような理由で、復興資金を全国の市町村の整備費に使うことになったのか?

 がれきの広域化は、放射能汚染問題が絡み、全国の自治体が、受け入れに前向きの反応を示さなかったため、環境省は、がれきを受け入れれば、受け入れた市町村の焼却施設の整備費に補助金(循環型社会推進交付金)を出すとしていた。つまり体よく言えば補助金の餌で、がれきの広域化の受け入れを促す措置を取っていた。

 しかし各省庁運用上確保した復興予算が余ったからといって、このように省庁の裁量権の範囲で他に流用することは、法治国家としては許されない。当初この流用化が問題になった神奈川県は、復興資金枠での交付金を受け取ろうとしていたが、問題だとの指摘を受け、返還することに方針変更した。

 環境省は、昨年1月から堺市などには、復興資金枠を使って交付金を受け取るように進めてきたが、昨年3月15日になって、補助金要綱(*4)を発表した。もちろんそこでも、補助金を出して焼却炉等の建設促進を図り、がれきの受け入れに寄与することが条件となっていた。

 しかし蓋を開けると、復興資金から補助金が支給されていた自治体の内、9割は、がれきの受け入れについては、検討の手を挙げただけで、受け入れてもいなかったことが分かった。(東京新聞2013年5月13日)

しかも住民団体である震災復興プロジェクトが、情報開示請求した資料では、環境省枠で復興資金を市町村の整備費への交付金や交付税として使った総額は、これまで新聞などで報道されていた数倍にあたる約550億円に上ることが分かった。

「嘘」でしか逃れられない環境省

 この問題で、メディアを含め世論の批判の声が高まったため、今年4月19日環境省は、「今後厳密に対応する」「今までのものは返還を求めない」と発表し、事態の収拾に入った。

 明らかにこれまでの対応は「厳密」ではなかったと言う反省を示す見解だった。しかしすでにこのがれきの広域化は終息時期に入っていて、「今後」と言うのは大きな案件としてあり得ず、これまでの「反省」「総括」を棚上げした「方便」でしかなかった。(*5)これが第1の嘘である。

 一方市民団体や専門家による調査チームが86億円もの巨額を受け取った堺市やメディアでは取り上げられていない富山県高岡市などの調査を行い、手さえ挙げていない自治体に支給していただけでなく、堺市の場合、環境省が強制的に支給していたなどが分かり、国会でも追及が始まった。

 この問題を6月11日に開催された参議院の環境委員会で取り上げた平山誠議員(みどりの風)は、石原伸晃環境大臣に「広域がれき処理を表明した自治体にがれき処理しなくても復興費を支給すること自体おかしいのに、表明をしていない自治体や復興資金枠での支給を断っている自治体に支給を決める!これ誰が見てもおかしいですよね!」

 「国民が25年間所得税2.1パーセントと来年から10年間住民税1000円上乗せで賄う復興資金。」「返さなくともよいという判断は納得いかない」と迫った。

◇環境省の強制を認めない石原環境大臣

 しかし石原大臣は、「前政権が決めたこと」といいつつ「災害後の状況の中で仕方の無い措置」と他人任せの姿勢を示し、改めて環境省の役人の「返還を求めない」と言う判断で良いとした。そして堺市などで、強制の事実はない、事実に基づかない質問には答える必要はないと答弁したのだった。これが第2の嘘である。

 環境省がなぜ「強制」していないという嘘まで言って、言い逃れようとしたのか?

 もし環境省が強制していれば、市町村の自治権を侵害し、環境省に権限と指揮権を持つ国の直轄事業になってしまうからである。そうなれば市町村への補助金事業ではなくなってしまう。

◇あくまで「自治体の主体的な事業」にしたい環境省

 ところが市町村が処理する一般廃棄物の処理計画は、先に述べたように廃棄物処理法では、市町村が主体的に計画し、事業推進する事業である。市町村が取り扱う一般廃棄物、すなわちごみは、ごみとして処理するのではなく、できるだけ資源化し、ごみの量を減らすこと、ごみ減量化が共通の課題である。ごみの減量化に当たっては、各家庭から排出される時点で分別・資源化することが、一番の基本になる。

(その意味でも、市町村がごみの分別収集の方法や資源化、そして処理施設の建設計画まで独自に作り、その事業を市町村の責任で行うことが定めたこの法は、理屈に適っていた)

 国や都道府県の役割は、あくまで市町村が主体となって進める事業へのサポート役でしかなく、ごみの焼却施設の整備(=建設)の場合、国の補助金は、建設費用の4分の1から3分の1の補助金を出し(高効率のごみ発電施設の場合は、2分の1)、多くの自治体の場合、それ以外の費用は起債を立てて国から借金をし、年月をかけて返済する形になっていた。その場合も交付税と言う形で、返済金を何割か補てんする形をとっていた。

◇通常の補助金に「復旧・復興枠」を追加

 これらに要する資金は、環境省が市町村への補助金事業として環境省が、通常の国家予算に組み込んでいた。そしてこの補助金の名称を「循環型社会形成推進交付金」と言い、今回はこれに「復旧・復興枠」を設け、従来のものを「通常枠」としていた。

 今回例えば堺市の場合、24年度分の2か所の焼却炉建設費の総額が、86億円であったが、通常枠では、補助金と交付税を含め約60億円支給される予定が、環境省は、堺市に対して、通常枠ではなく、復興資金枠で受け取れば、86億円全額、堺市の費用を一銭も使わなくとも済むと誘ったのである。

 堺市の担当者は、がれきの受け入れを行っている訳でもなく、補助金にあたっての要綱を見ても受け取れないと環境省の三度の誘いを断って、通常枠での支給を要請したが、環境省は大阪府と一緒に、復興資金枠での補助金の交付決定通知を堺市に出し、この変更は出来ないと「嘘」を言って堺市に復興資金の流用化を強制したのである。(*6)これが第3番目の嘘である。

 これらは、震災復興プロジェクトのメンバーが、情報開示請求で、環境省と堺市の担当者のやり取りの経過を掴み、同時に環境省へも情報開示請求したが、環境省は担当者が、交代しPC上の記録がないと情報開示を拒んでいる。

 富山県の場合も、がれきを受け入れたのは高岡市でありながら、高岡市が現在周辺の氷見市、小矢部市とで作る「高岡地区広域圏事務組合」で建設する焼却炉建設に18億円もの金を復興資金枠でつぎ込んだ。高岡市と「高岡地区広域圏事務組合」は、明らかに異なる自治体である。

 その点を先の環境委員会で平山氏に追及されると環境省は、今は高山市で受け入れているが、今後「高岡地区広域圏事務組合」で作った清掃工場の焼却炉でも受け入れて行くと国会答弁した。しかし「高岡地区広域圏事務組合」の焼却炉の稼働は、来年2014年9月であり、がれきの受け入れは、当初計画でも2014年3月31日に終わっていて、がれきの受け入れとは関係しない。

 これが第4番目の嘘である。

 このような形で環境省の口車に乗せられて、復旧・復興枠での交付金を受け入れて、焼却炉建設の補助金に違法に使っている自治体は、このほか東京都のふじみ衛生組合(三鷹市と調布市を構成市とする一部事務組合)、静岡市、北九州市他がある。(*6)

 環境省の嘘まで交えた復興資金の流用化は論外だが、自治体として本来被災地の復興や被災者の救援、そして被曝症状の検査、子供たちの疎開などに使わなければならないお金で、自分の街の焼却施設を建設する。これは末代まで語り継がれる恥である。すぐに返済し国庫に戻すように求めることが必要だ。

他人の不幸にたかり懐を肥やす腐敗の極み

 過大に見積もった環境省のがれき処理量は、大幅に下方修正され、がれき予算を大幅に余らせたはずである。しかし環境省は、その予算を国庫に戻し、他の復興予算に手当てする道を選ばず、予算を使い切るほうに舵取りを図った。

 これまでも省庁枠で取った予算は、省庁の裁量権の下で使い切って行くという省庁の悪しき慣習がある。そうすることによって、天下先を増やしたり、自分たちの利権の確保に走ってきた。

 しかし今回は非常事態であり、被災地の不幸の前に多くの国民は、涙し、ボランティアで駆けつけ、寄付を行った。そうした中での流用化である。しかも省庁毎の「新たなファンド」作りにまで走っている。(*7:日刊ゲンダイ「官製ファンドの乱立許すな」130821)許されない。

◇「絆」で集めた血税を流用化する環境省

 東北大震災による被災地に堆積した震災がれきを片づけ、一刻も早く被災地の復興を成し遂げたいというのは国民共通の願いだったはずだ。

 だからこそ国民は、復興資金の徴収に応じ、今後25年間、所得税の上乗せし、住民税も1000円分余分に10年間、徴収することに協力しようとしている。(安倍首相は、消費税の8%への移行に伴い、この拠出分の法人税の徴収を繰り延べる提案を行っている)

 環境省は、がれきの広域化に当たって、東北大震災への国民の悲しみと、被災地への想いを、絆キャンペーンとして打ち出しながら、被災地の復興の様子に気を配ることなく、復興資金の流用化を図った。

 堺市に復興資金枠での補助金を使うように強制する過程で、環境省は、補助金は、がれきの受け入れを名目にしていること、そして被災地岩手でのがれきの処理がどのような状況になっているのかの説明もせず、もっぱら復興資金枠で受け取れば、自治体にとって有利になることを説明している。

 中央官僚たちが仕組んだ復興資金の流用、その狙いの向こうに何の理念も、未来も、夢も見えてこない。官僚たちのヒエラルキーの下に、自己の立場と目先の利害に汲々とする官僚たちの姿しか見えない。被災者、そして国民をないがしろにする姿勢しかない。

 石原慎太郎元都知事は、堕落論で現代社会の堕落を示す事案として親の死亡を隠し年金をもらい続ける事例を挙げているが、被災地の不幸にたかり、私腹を肥やす復興資金の流用化こそ現代の堕落の極みと言える。

 このような官僚機構による復興資金の流用は、環境省のそれにとどまらず、全省庁絡みで約2000億円と言われているが、まさに東北大震災復興資金大疑獄事件と言える。

◇党派の壁を越えた返還運動を

 国会でこの問題を追及する議員連を作り、山本太郎議員や川田龍平議員、阿部知子議員他多くの議員が党派の壁を越えてこの問題を追及してもらいたい。

 すでに自治体が絡んだ案件として、がれきの広域化処理に絡んで、住民監査や住民訴訟の取り組みが始まっている。広域処理の必要の無いがれきを出したり、また受け入れることによって、法令に違反した事業を行った自治体に対し、法令に違反して受け取った事業費を返還し、また賠償せよという住民監査請求や訴訟である。

 すでに大阪市と岩手県に住民訴訟が始まり、今後も復興資金の流用化を図った自治体での訴訟が取り組まれる予定と聞いている。そうなれば国会での取り組みと連携した地方自治体での動きとして進められる事になる。

 追)環境省の本来の役割は、事業活動や開発行為によって作り出される環境汚染を監視し、規制することにある。ところが311後も福島第1原発から放出された放射性物質の飛散による環境汚染を防止するどころか、汚染拡大するような対応を取ってきたのが、この環境省の監視も含めて次に問題にして行きたい。

【注釈】
1:がれきの広域化は、被災三県のうち福島県を除く宮城県と岩手県のがれきの広域処理として始まった。参考「空気と食べ物の放射能汚染」リサイクル文化社 青木泰著
*2:「がれき広域処理の受け入れ機関と受け入れ量」(環境総合研究所 青山貞一 池田こみち)より筆者が基礎自治体と1部事務組合が受け入れた自治体関係の総量を計算
*3:阪神淡路&中越地震のときのがれき処理コスト
*4:環廃対発第120315001号
*5:月刊誌「紙の爆弾」8月号―復興予算流用問題―ガレキ持込詐欺の実態
*6:環境省情報開示資料、災害復興プロジェクト情報う開示―復旧・復興枠で使った循環型社会形成推進交付金と交付税
*7:日刊ゲンダイ「官製ファンドの乱立許すな」130821

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