韓国の外交・安全保障戦略の新展開 日韓安保協力の将来とは〜国際地政学研究所2014年度第6回ワークショップ 2014.6.20

記事公開日:2014.6.24取材地: テキスト動画
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(IWJ・平山茂樹)

 2012年末の第2次安倍政権発足後、従軍慰安婦問題をはじめとする歴史認識問題や、竹島をめぐる領土問題などにより、日韓関係は戦後最悪と言われるほど冷え込んでいる。政権発足から1年半が経過した現在も、安倍総理と朴槿惠大統領による日韓首脳会談は行われていない。

 閉塞した日韓関係を打開するには、何よりもまず、現在の韓国の外交・安全保障政策を知る必要がある。6月20日(金)に行われた国際地政学研究所の定例ワークショップでは、朝鮮半島の安全保障政策に詳しい政策研究大学院大学准教授の道下徳成氏が、「韓国新戦略の行方と日韓安保協力の将来」と題してプレゼンテーションを行った。

■ハイライト

  • テーマ 韓国~理解の一助として
  • 基調スピーチ 道下徳成氏(政策大学院大学准教授)
  • 日時 2014年6月20日(金)
  • 場所 アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)
  • 主催 国際地政学研究所 (IGIJ)(詳細

日韓関係悪化の背景 韓国の「等距離外交」と日本の「対中包囲網」との摩擦

 道下氏は、日韓関係が今日のように悪化した理由の一つに、2013年2月15日の麻生太郎副総理の発言があると指摘する。

 麻生副総理は、朴槿惠大統領の就任式に招かれた際、「米国は南と北が分かれて激しく戦った。しかし南北戦争をめぐり北部の学校では相変わらず“市民戦争”と表現するところがある一方、南部では“北部の侵略”と教える」「同じ国、民族でも歴史認識は一致しないものだ」「日韓関係も同じだ」と発言。朴槿惠大統領はその直後の3月1日、「加害者と被害者という歴史的立場は千年の歴史が流れても変わらない」と、日本の歴史認識を問題視する演説を行った。

 道下氏は、麻生副総理のこの発言が日韓関係悪化の端緒となったと指摘。「韓国としてはいきなり顔面パンチをくらわされたようなもの。朴槿惠大統領は個人的に不愉快だっただろうし、政府としても、日本側は歴史認識の問題に積極的でないと捉えたのだろう」と語った。

 さらに道下氏は、日韓関係に関する韓国外交部の考え方が変化していると指摘する。2013年度の朴槿惠政権・外交部業務報告「韓米同盟と韓中同伴者関係の調和・発展」によれば、韓国における安全保障政策の最優先の課題として、「韓米間の包括的戦略同盟の深化・発展」があげられ、その次に、日韓関係ではなく、「韓中の戦略的な協力同伴者関係の内実化」があげられている。現在の韓国にとって、日韓関係は、韓米、韓中関係の下位概念として位置づけられているのである。

 道下氏は、このような朴政権の外交・安全保障政策は、盧武鉉政権の「北東アジアバランサー論」、つまり米中と同等の関係を持つ「等距離外交」と同様の性質を持つものであると指摘した。

他方、日本の外交・安全保障戦略は、昨年末に改訂された防衛大綱に示されている通り、台頭する中国を、日本、米国、韓国、東南アジア諸国、オーストラリア、インドが共同でバランシングするものとなっている。しかし、「等距離外交」を行う韓国はこのような対中バランシングに慎重であるため、「韓国はパートナーにならない」という声が日米の一部の有識者間であがっている。このような韓国観が日韓関係に影を落としているのだと道下氏は指摘した。

「脅威」だからこそ「丁寧」さに務める韓国の外交

(…会員ページにつづく)

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