「あたかも自然災害に遭ったかのような東電の態度。ひとつひとつの被害に対して、真摯な反省もなければ謝罪もない。刑事事件として責任を追求していく」──。
2014年4月28日、福島市で「4.28 ふくしま集会」が開かれた。福島市民会館には120人もの市民が集まり、福島老朽原発を考える会の阪上武氏による「汚染水漏洩の実態」についての講演と、保田行雄弁護士と海渡雄一弁護士による現状報告が行われた。海渡弁護士は、漏れることがわかっていて仮設の汚染水タンクを設置したことと、2011年6月に着工できたはずの遮水壁工事を先延ばしにしたことが現在の状態を引き起こしたとして、東電の無作為を厳しく追及する方針を示した。
集会終了後、参加者らは福島県庁へデモ行進し、東京電力福島第一原発への強制捜査を要請するため、福島県警本部へ上申書を提出した。
汚染水の状況は、毎日が綱渡り
まず、阪上氏が、福島第一原発の現在の状況を解説した。「原子炉建屋内には1日あたり400トンもの地下水が流入しており、この対策に追われている。単に地下水の水位を下げればいいというわけではない。地下水を下げると炉心から高濃度の汚染水が外に漏れてきてしまう。しかし、下げないと汚染水がどんどんタンクに溜っていく、という矛盾した状態にある。根本的には、格納容器からの漏洩を止めるしかないが、その目処はまったく立っておらず、せめて、地下水をコントロールするしかないのだ」。
そのための具体的な方法として、「冷却のため、1日800トンの汚染水が生じる。これをセシウム除去装置に通して半分の400トンを戻し、残り半分をタンクに移送する。タンクは直径12メートル、高さ11メートルで、1基あたり1000トン収容できるが、2日半で満杯になってしまう。汚染水とタンクとの追いかけっこ」と話し、毎日が綱渡りの状況であることを伝えた。
飯舘村の村民から、賠償基準に「ノー」の動き
被災者への賠償問題について報告を行った保田弁護士は、「あたかも自然災害のような扱いで、被害者が追い込まれている。責任の所在が非常に曖昧になっている。東電は『自分たちは、原賠法に基づいて無過失責任が定められているので、しょうがない。あとは、相当な因果関係があるかどうかに基づいて、賠償額を決めていくだけ』という態度。ひとつひとつの被害に対して、真摯な反省もなければ謝罪もない」と切り捨てた。
しかし一方、「飯舘村の村民から、賠償基準にノーと言おうじゃないか、という動きが起こり、訴訟の準備を進めている。こういった動きは、福島県全体に広がっていくだろう。これからも、刑事事件として責任を追求していく意義は大いにある」と期待をのぞかせた。
そして、「前回は、東電を公害罪で起訴したが、裁判所は『原発事故は津波が原因』であるとして不起訴にした。確かに、公害法第3条では『事業活動で物質を排出した場合』とあり、事業活動ではなく、事故ということになる。しかし、政府が収束宣言を出したように、事故は一旦収束したのであり、現在の汚染水処理作業は、廃炉に向かっての事業活動だ」とし、裁判所の決定に異議を唱えた。
東電の「言い訳」を追求する
海渡弁護士は、福島県警本部へ提出する上申書の内容を解説した。要点として、東電の責任の第1は「漏れることのわかっているタンクを作り続けたこと」、第2は「2011年6月に遮水壁の建造を始めなかったこと」を挙げた。これに対し、東電は「放射線量が高くて作業環境がよくなかった」と釈明しているが、海渡弁護士は「少しでも作業環境をよくするために、もっとも重要な業務として、人員と資源を投入すべきだった。また、遮水壁を(放射線量の低い)少し離れた場所に築くこともできたのではないか。数ヵ月あればできる、単なる土木工事だったという声もある」と反論した。
さらに、「他のプロジェクトが進行していたため」との釈明には、「他のプロジェクトの効率を上げるためにも、遮水壁の建設は最優先の課題だったはず。『地下には、配管などの既設設備がある』とも言い訳しているが、ちょっと離れた場所に行けば、配管のない場所がある」と述べ、「東電の狙いは単なるコスト削減だった」と批判した。
集会のあとは、新浜公園から県庁までデモ行進を行い、参加者たちは「汚染水を海に流すな」「世界の海を汚すな」「汚染水対策に金をケチるな」「作業員の安全を守れ」などとシュプレヒコールをした。その後、代表者が福島県警に対して上申書を提出し、提出時の状況を参加者たちに再度報告した。