2013年11月26日(火)に衆議院を通過した特定秘密保護法案は、現在参議院での審議が続いている。29日には自民党の石破茂幹事長が、自身のブログで、「単なる絶叫戦術は、テロ行為とその本質においてあまり変わらない」と、国会周辺での市民によるデモを批判した。
2013年12月1日、日弁連(日本弁護士連合会)は、同法案に反対する街頭演説を新宿駅前で行った。集まった100人以上の市民は、弁護士らとともに、法案に対する怒りの声を上げた。
(IWJ 鈴木美優)
特集 秘密保護法
2013年11月26日(火)に衆議院を通過した特定秘密保護法案は、現在参議院での審議が続いている。29日には自民党の石破茂幹事長が、自身のブログで、「単なる絶叫戦術は、テロ行為とその本質においてあまり変わらない」と、国会周辺での市民によるデモを批判した。
2013年12月1日、日弁連(日本弁護士連合会)は、同法案に反対する街頭演説を新宿駅前で行った。集まった100人以上の市民は、弁護士らとともに、法案に対する怒りの声を上げた。
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日弁連会長の山岸憲司氏は、「外交上の秘密や、一定期間で国民に公開できない情報も当然あるだろう。だがその場合、きちんとした情報管理システムをつくる必要がある」と述べ、一定期間秘密にしなければならないものに関しては、その内容と目的を国民に開示する必要があると主張した。
また山岸氏は、秘密指定の範囲や理由をチェックする「独立した第三者」が必要だと訴えた。「適正に指定秘密を検証するシステムの設置が必要だ」と山岸氏は述べ、「特定秘密」の指定には第三者機関の設置を前提にしなければならないと声を上げた。
山岸氏は、特定秘密保護法案は民主主義社会の劣化を促すと指摘。国民に重罰を科す法律は、直ちに廃案にすべきだと強調した。
福島県弁護士会会長の小池達哉氏は、11月25日に行われた福島県での公聴会において、7人の陳述人全員が反対、または不満の意を示したことをあげ、「翌日(26日)に衆議院で法案が採決されたことに、県民は非常に落胆し悲しんでいる。あまりにも福島を馬鹿にしている」と、国会に対する怒りをあらわにした。
「皆さん、なぜこの法案がそんなに危険で、こんな短期間で採決されなくてはならないのか、わかりますか?」小池氏は聴衆にそう問いかけ、「分からないと思います。それは、政府がきちんと説明していないからです」と政府の説明不備を指摘した。「なぜ説明していないか。きちんと説明すればするほど、国民の反対の声が強くなるからです」小池氏がそう話すと、聴衆からも怒りの声があがった。
小池氏は、外国から信頼を得るために本法案が必要だとする政府の言い分にも、不満の意を表す。外国からの信頼を得る前に、まずは国民から信頼を得なければいけないと主張したうえで、「国民を犠牲にして外交を行うのは、政府の独裁だ。国民にとっては悪法でしかない」と強調した。
また、石破幹事長の「テロリスト」発言についても、「本法案の中にもテロリズムに関わる内容が含まれている。今回、石破幹事長が、反対の声をあげる市民をテロリストと呼んだことは、今後このような活動をすれば捕まる可能性があるということを暗示している」と話し、「大丈夫、大丈夫、と言っている余裕はない。早めに行動に出なければ、気づいたころにはとんでもない状況になっているかも知れない」と、集まった聴衆に反対運動に参加するよう訴えかけた。
同じく秘密保全法制対策本部の海渡雄一副本部長は、原発事故の情報がさらに隠される可能性があると指摘する。「これまでも放射能や汚染水に関わる情報が秘密にされてきたじゃありませんか」海渡氏はそう問いかけ、「この法案ができれば今以上に重要な情報が隠されてしまうかも知れない」と不安の意を示した。
また海渡氏は、本法案で最も深刻な問題について、「政府がどのようなことを秘密にできるということは書いてありますが、政府が自らの違法な行為を隠したりしてはいけないとかかれていません」と述べ、法案が成立すれば政府は自分の都合で秘密を指定できることになると指摘。国が違法行為を隠すことは決して許されないと批判し、主権者である国民は情報を知る権利があると主張した。
秘密保全法制対策本部事務局長の清水勉氏は、経済学者や経営学者、また大学研究員らはこの法案にもっと反対の声を上げるべきだと主張。重要な文書が秘密指定されることで、研究の仕事に支障をきたすだろうと清水氏は指摘し、国が企業や大学をチェックするようになれば自由な研究活動もできなくなると話した。
「これだけ問題があるにもかかわらず、経済学者や研究員の方たちが沈黙しているのはなぜでしょうか」清水氏はそう問いかけ、「おそらく、国からの説明が全くないからだと思います」と静かに答えた。また、経済学者らや労組らも、法案に対してもっと声を上げて欲しいと訴え、この法案の問題をより国民に広めることが必要だと指摘した。
また清水氏は、「この法案は百害あって一利なし」と述べ、「言論の自由がなければプライバシーもなくなる」と本法案の問題が国民すべてにかかわることだと指摘。「もう一度選挙して、政党を選びなおしてもいいくらいだ」。清水氏はそう話し、テロ行為をしているのは国民でなく与党の方だと強く主張した。
日弁連は、1年以上本法案に関する調査を続け、反対の声を上げ続けてきた。清水氏は、「この法案をもっとも切実に考えている我々弁護士は、国会に呼んでもらうことさえできない」と述べ、この問題について、国会で議論させてほしいと訴えた。
秘密保護法案改案実行委員の高田健氏も街宣車に上り、市民による活動をもっと広めたいと聴衆に訴えかけた。「石破氏が我々をテロリストと呼びましたが、この発言こそが、秘密保護法の危険性を表していると思います」。高田氏はそう指摘し、世論調査でも8割近くが反対していたにもかかわらず、衆議院で強行採決されたことに対し、不満の意を示した。
「国会も秘密、防衛も外交も秘密ということが許されるはずがない」高田氏はそう批判し、廃案に向けた今後の活動に一人でも多くの人が参加するよう、聴衆にうったえかけた。