「被告人も弁護士も、裁判官すら、何の罪かわからない。摩訶不思議な裁判が行なわれる」 ~新潟県弁護士会『特定秘密保護法案』緊急市民集会 2013.11.12

記事公開日:2013.11.12取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ 関根/奥松)

 「国民に重要な事実を知らせず、政府が国民を監視する社会を作る」「何をしたら罪になるかがわからない。弁護士から見ても意味不明」「集団的自衛権を容認する仕組みだ」──。

 2013年11月12日(火)、新潟市中央区の新潟県弁護士会館にて、新潟県弁護士会による「『特定秘密保護法案』の成立に反対する緊急市民集会」が行われた。金子修弁護士らが特定秘密保護法案の問題点を解説し、廃案を訴えた。また、報道、平和運動、反TPP運動、公務員労組などに関わるゲストが、それぞれの立場から危機感を表明した。

■全編動画

  • 登壇者
    新潟弁護士会会長 味岡申宰氏
    日弁連秘密保全法対策本部本部長代行 江藤洋一氏
    新潟弁護士会 特定秘密保護法案対策特別委員会 金子修氏
    新潟日報報道部記者 横山氏
    新潟県平和運動センター議長 渡辺英明氏
    新潟県農民連事務局長 鈴木亮氏
    新潟県国家公務員労働組合連合会(国公連)副議長 亀井氏
  • 日時 2013年11月12日(火)
  • 場所 新潟県弁護士会館(新潟県新潟市)
  • 主催 新潟県弁護士会

特定秘密保護法案で、戦争のできる国づくりへ

 集会は、新潟弁護士会会長の味岡申宰氏の挨拶で始まった。「特定秘密保護法案は、政府が国民に必要な情報を、自由に秘密に指定し、秘密を管理する者の身辺調査を行い、秘密を漏らすだけではなく、教唆や幇助(ほうじょ)ですら重罪の対象になる。国民に重要な事実を知らせず、政府が国民を監視する社会を作る。戦争のできる国づくりの一環だ」とし、次のように述べた。「しかし、世論調査では、この法案を本国会で成立させる必要あり、と答えた者は20%しかおらず、64%が成立させる必要はないとの回答だ」。

 続いて、日弁連秘密保全法対策本部本部長代行の江藤洋一氏が、「当初、政府は、本法案はすんなり成立すると考えていた。しかし、思いのほか国民の反対が大きかった。しかし、まだ廃案までには至らない」と、反対運動のさらなる盛り上がりを訴えた。

『その他』ばかり。あいまいすぎる特定秘密保護法案

 新潟弁護士会特定秘密保護法案対策特別委員会の金子修氏が、「特定秘密保護法案の問題点と情勢」と題してスピーチをした。「国政にかかわる重要な情報が、広い範囲にわたって永遠に隠される。防衛、外交、特定有害活動(スパイ、武器などにかかわるもの)、テロの4つが秘密指定になる。その文章内には『その他』という言葉が10ヵ所もあり、全文だと35ヵ所にもなる」。

 「現在、政府には特別管理秘密が41万件あり、それが特別秘密に移行される。『なぜ、それが悪いのか』という意見もあるが、時代遅れもはなはだしい。すでに、グローバル・スタンダードなチェック機能は、ツワネ原則(国家安全保障と情報への権利に関する国際原則)がある。いくら安全保障上の秘密と言えども、ある期間が過ぎたら情報公開されるのが基本原則だ」。

 また、「秘密の扱い者を決めるのは、官僚である。犯罪歴、精神疾患、飲酒歴、信用などの適性調査は、家族のみならず、配偶者の親戚まで含まれる。特定秘密の基準はあいまいだが、漏えい者への最高刑懲役は10年と重い。結果、マスコミの報道の自由もなくなり、国民の知る権利が侵害される」と語った。

何をしたら罪になる? 摩訶不思議な法律

 さらに、金子氏は「何をしたら罪になるかがわからない。『特定秘密の保有者の管理を侵害する行為』が法に触れるというのだが、弁護士から見ても意味不明だ」と述べ、裁判になった場合を、次のように例えた。

 「『特定秘密の保有者の管理を侵害する行為』で起訴された人を弁護する時、何の秘密の、何を侵害するのかと訊いても、検察側は答える必要がない。罪状は、被告人も弁護士も、裁判官すらわからない。こういう摩訶不思議な刑事裁判が行なわれる。ツワネ原則には、公的機関は弁護士、被疑者に情報は公開すべき、と書いてあるのだが」。

 最後に、金子氏は「これは噂だが」と前置きをして、「当初、11月15日強行採決、12月6日成立が規定方針だった。2番目のシナリオは、一部、野党の修正案をのみ、延長国会で12月10日くらいに成立させる。それも無理だとしたら、衆議院だけ通過させ、継続審議。来年、通常国会冒頭で成立という流れもあるという。廃案運動は、微力だが影響を与えている。国会議員への働きかけが、これからも重要だ」と語った。

マスコミの取材活動、脱原発やTPP反対運動も「終わる」

 新潟日報報道部記者の横山氏が、マスコミの立場から話をした。「読めば読むほど恐ろしい法律だ。この法律ができたら、今後、取材で夜討ち朝駆けはできなくなる。また、取材先が萎縮してしまうのも怖い。取材しても、すべて『言えない』の一点張りで拒否されるだろう。その理由も問えず、報道関係者は次々に逮捕されることになる」。

 新潟県平和運動センター議長の渡辺英明氏は、「日本は、下位法が上位法を上回ってしまう不思議な国。来年、通常国会に出る国家安全保障基本法案の下位にあたる、国家安全保障会議(日本版NSC)設置法と、特定秘密保護法案とで集団的自衛権を容認する仕組みだ。気がつかぬうちに、憲法9条を無効にする」と問題視した。

 新潟県農民連事務局長の鈴木亮氏は、「TPPと特定秘密保護法案」について話した。「TPP参加阻止の上でも、秘密保護法案を廃案にしなければならない。TPPが特定秘密になると、農業、食糧、医療、地域産業に甚大な影響を与える。政府が特定秘密保護法案成立を急ぐのも、TPPの地ならしだ」と述べ、断固阻止の立場を表明した。

天気予報まで秘密にされる?

 新潟県国家公務員労働組合連合会(国公連)副議長の亀井氏は、「地方の出先機関では、あまり議論されていないのが実状だが、将来、この法案が拡大されて、思想や主義主張すら侵害されるのではないか。われわれの組合運動も制限される」と述べて、こう続けた。「自分は気象庁の組合員だが、『天気予報は平和のシンボル』と言われている。戦時中、天気予報は軍事機密で公表できなかったのだ。再び、そうならないように、この法案に反対する」。

 質疑応答で、会場からツワネ原則について問われると、金子氏が「今年6月、南アフリカのツワネで、国連も関わって決めた、情報アクセスの権利についての世界的な基準だ。おそらく、政府は知っていて、隠していると思う」と解説した。

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