ずばり言い切ります。特定秘密保護法案の正体は、「貧ぼっちゃまくん」であると。
正面から見ると、一見立派なスーツを着ていて、隙のない姿を見せている。しかし、後ろ側にまわると、スーツは前半分だけで、後ろ姿は素っ裸、尻が丸出しになっている。小林よしのり氏の人気マンガキャラクター「貧ぼっちゃまくん」の「頭隠して尻隠さず」というこの姿こそ、まさしく「特定秘密法案」の姿そのもの。すなわち米国には背後から情報をつつ抜けにしてしまう属国の姿そのものではないでしょうか。
官邸前で、連日、激しい抗議行動がわき上がっているにもかかわらず、10月25日午前、政府は「特定秘密保護法案」を閣議決定し、同日すぐさま法案を国会に提出しました。国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案も、この日に国会で審議入りし、現在秋の臨時国会での成立を目指しています。
この法案は、1.防衛、2.外交、3.外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止、4.テロ活動防止の4分野の中から、「その漏えいが我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがある」と判断した情報を、政府が「特定秘密」に指定し、厳重に管理するというものです。
この「特定秘密」を漏らした者への罰則は非常に重く、最高刑は懲役10年。さらに秘密を漏らした者だけでなく、秘密にアクセスした、アクセスを試みた、秘密を漏らすよう促した取材者などの第三者(民間人含む)までもを罰しようとするものなのです。
これは、憲法の保障する「国民の知る権利」や「報道の自由」に真っ向から反します。
この法案が成立すれば、国民が知るべき情報を、一部の政府関係者らの判断で一方的に「特定秘密」と決定され、その情報が「特定秘密」として適切かどうか監視することもできず、恣意的な乱用が懸念されます。
41万件もの情報が施行日に「秘密」指定!
特定秘密保護法の施工初日に「特定秘密」となる情報の数は、なんと41万件にものぼります。この驚愕の事実は、自民党の中山泰秀衆議院議員が「報道するラジオ(※)」内で明らかにしたものです。
中山「これが法施行されますよね。施行された日に、一体何件が対象になるのかと、当局に僕らが質問した。秘密の表題は出さないけども、逆に件数は積極的に公開します、って言ってくれているわけです。積極的に公開するっていうならいま何件あるの?って聞いたら、『10月9日の時点で41万件』が対象の秘密だと」
断言できますが、41万件などいう大量の情報は、誰か1人の頭脳で理解し、検証し、判断できるものではありません。しかもこの件数は今後も激増していきます。
政府、というのは官僚の集合体です。官僚は、自分の担当部分しかわかりません。すべてを見通すのは不可能です。だからこそ、政府内外の知性が相互チェックのため情報を交換できるように、また、後日の検証が可能であるためにも、オープンに開かれていなくてはなりません。秘密にすれば政府内部でも必ず過ちが生じます。
また、秘密にすることで責任の所在が曖昧になると、必ず腐敗を生じます。政府とは、通常の状態でも決して清廉な存在ではありません。
「特定秘密」にアクセスできるのは、政府でも一握りなうえ、その誰も、全体を把握できない。さらに法案を担当する内閣情報調査室は、文章の廃棄についても秘密にするというのです。
こうなってしまうと、同時代の政府内部の官僚たち同士でも知りえず、意見の交換も議論も適切な修正や運用も行えず、のちの人間が検討し、学問的検証を行うこともできない。まさに国家の歴史がまるまる消されてしまい、永遠に回復しないのです。後世の人間には秘密の内容が開示されることなく、文書が廃棄され、廃棄の事実すら公表しないという徹底ぶり。何が秘密だったか、そもそも秘密があったのかさえも、永遠に分からなくなってしまいます。
反原発活動も「対象」に!?
この法案の目的の一つである「テロ活動防止」ですが、法案条文内の「テロリズム」の定義には、殺傷や破壊活動のほかに、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」する活動も含まれています。
秘密保護法の危険性に警鐘を鳴らし続けている山本太郎参議院議員は、「原発がテロ対象なら、反原発運動がテロに該当する可能性もある」と懸念を示していますが、この懸念は妥当なものです。
国民の生活に関わる原発の情報も「特定秘密」に
また、「原発」そのものが「特定秘密」になる可能性も明らかになりました。政府はこれまで、「原発とTPPは対象にならない」としていました。しかし、24日に行われた院内交渉では一転して、「核物質の保護は警備上、秘密指定されるものもある」との見解を示しました。
日本共産党の赤嶺政賢衆議院議員は24日、特定秘密保護法案に関連して「原発情報も特定秘密に指定され、入手を求める行動も厳罰に処されることになる」と法案の危険性を指摘しました。
赤嶺議員は、「原発は秘密保護法の対象ではないと政府は繰り返しているが、法案別表にある『テロ関連情報』に『核物質防護は対象になるのでは』との私の質問に、内閣府担当者は『対象になります』と応じた」と明かしています。
社民党の福島みずほ前党首も、「24日午前中に秘密保護法についての行政交渉した中で、原発のことについても警備の必要から秘密指定がありうるとの回答があった」と語っています。
「原発とTPPは対象にならない」という政府の説明は、国民を欺く嘘だったのです。それを閣議決定前日の24日に認めたのです。
「核物質防護」というのは口実に過ぎません。現在汚染水が漏れている貯水タンクの詳細箇所や、作業員たちの詳細なフロー、原発敷地内の映像や写真についても、「重要施設の配置」は「核物質防護上、秘匿されなければならない」という理屈で、「特定秘密」となってしまう可能性があります。
さらに日本弁護士連合会・前事務総長の海渡雄一弁護士は、「日本は40トンを超えるプルトニウムを保有している。仮に、政府が核兵器開発を行おうとした場合、最も重要な秘密として扱われるかもしれない。そうなると、国民が知らないうちに日本は核兵器保有国となってしまう」と、政府による原発推進の裏にある「核武装」への欲望と、ことによれば核保有が秘密裏にすすんでしまう可能性にすら、警鐘を鳴らしています。
国民のプライバシーを侵害する「適性評価制度」