国家機密を漏洩した公務員や国会議員への罰則規定を盛り込んだ特定秘密保護法案が11月7日、衆議院で審議入りした。ひと足早く衆議院で可決し、参議院での審議が始まった日本版NSC(国家安全保障会議)設置法案とあわせ、政府と自民党は今国会での成立を目指している。
11月13日(水)、日弁連で秘密保護法制対策本部副本部長を務める弁護士の海渡雄一氏が岩上安身のインタビューに応じた。海渡氏は、安倍政権が同法案の成立を急ぐ理由として日米の軍事的一体化が背景にあると指摘するとともに、国際社会が取りまとめた秘密保護に関するガイドライン「ツワネ原則」に明確に違反していると語った。
秘密保護法案の背後にある核保有の欲望
2007年8月10日、日米は軍事機密の第三国への漏洩を防ぐことを目的とし、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)を締結した。特定秘密保護法案の前身とも言えるこのGSOMIAは、海渡氏によれば、日米での武器共同開発、さらには核兵器の潜在的な保有を目的としたものであったという。 GSOMIAの締結後、日本の武器輸出を規制する「武器輸出三原則」の緩和が決定(2011年11月27日)した他、宇宙航空開発機構(JAXA)の事業を「平和目的に限る」とする規定をなくし防衛利用を可能とする改正法が可決(2012年8月20日)するなど、軍事技術の開発に道を開く措置が立て続けに決定している。 海渡氏はこの間の経緯について、政府内部の思惑を次のように分析する。 「宇宙研究を平和目的以外でやるということは、人工衛星を打ち上げる技術を、核弾頭を積んだ大陸間弾道弾に転用するということ。この改正法が閣議決定されたのと同じ日に、原子力基本法から『安全保障に資する』という文言がつけ加えられている。 もんじゅも再処理も、経済的利点が何もないことが明らかとなっているにも関わらず、政府はいまだにプルトニウムを扱う技術を死守しようとしている。そのことをあわせて考えれば、少なくとも潜在的な核兵器製造能力を保持することが安全保障に役立つのだと政府は考えているのではないか」
「ツワネ原則」にもとづき法案の白紙撤回を
今年6月、安全保障と国家機密へのアクセスに関する国際指針「ツワネ原則」が発表された。この原則は、国連、人及び人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構、欧州安全保障協力機構が策定に関わり、世界70ヶ国以上約500人の専門家が会議を重ねて作成した。
海渡氏によれば、特定秘密保護法は多くの点でこの「ツワネ原則」に反しているという。
例えば「ツワネ原則」では、政府が秘密を指定する場合には、そのことの合理的な説明が求められる。しかし特定秘密保護法ではそのような規定はなく、「特定秘密」に指定される対象とその理由が明らかになることはない。
海渡氏は、特定秘密保護法、さらには既存の国家公務員法や自衛隊法といった秘密保全法制全般を、この「ツワネ原則」との比較から検討し、見直す必要があると語った。
「ツワネ原則」(全文)日本語訳:日本弁護士連合会 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/statement/data/2013/tshwane.pdf ※The Global Principles on National Security and the Right to Information (通称「ツワネ原則」)全文
※国立国会図書館「諸外国における国家秘密の指定と解除―特定秘密保護法案をめぐって」 (2013.10.31)
お疲れ様です。
公益通報者保護法では公務員も対象になっていますが、内部告発者の保護はどうなっていくのでしょうか。