海洋流出の拡大が懸念されている福島原発の汚染水問題に関して10月29日、日本弁護士連合会主催で学習会が開かれ、漏洩の現状と今後の対策について話し合われた。東電は、汚染水の流入を阻止するため「凍土壁」の設置を計画しているが、莫大な整備費やランニングコストがかかり実績もない対策であることから、学習会に招かれた2人の専門家はこの計画に難色を示した。
-「今後何を計画し、実施しても再発は免れない」-
元東洋エンジニアリング技術者である川井康朗氏は、汚染水問題が解決できていない理由に、東京電力の企業体質をあげ、品質管理体制が明らかに破綻していると指摘。それが顕著に現れているのが、貯蔵タンクの設計と施行の杜撰さであり、海洋汚染にまでつながる漏洩を引き起こしたタンクの設計責任の所在さえ追求されない現在の体制のままでは、今後東電が何を計画し、何を実施しても再発は免れないだろうと厳しく批判した。
川井氏は、新たなプロジェクト組織を東電の上位に設置し、政府の直接責任の下で汚染水問題に取り組むことを提案している。
凍土壁は電気代だけで年間30億円
一方、プラント技術者の会の筒井哲郎氏は、解決に向けた技術対策を提案。被曝労働が最小であること、最短で実施できること、実績のある方法であることなどを優先順位に掲げ、まず、雨水などの浸透を避けるために地表面をフェーシングする方法を紹介した。これにより、1日約400トンの地下水流入のほとんどを阻止できるという。筒井氏はその他に、汚染水を貯蔵する恒久的な10万トン級のタンク設置を提案した。
東電が2015年に運用を目指している、地盤を凍らせて地下水流入を阻止する凍土壁対策は、整備費に400億円が見込まれている上、年間30億円の電気代がかかるとされている。また、毎時4.5ミリシーベルトという高線量の中での作業は困難を極めるだろうと、川井、筒井両氏ともに、凍土壁には難色を示した。
最後に日弁連の海渡雄一弁護士が、汚染水問題がここまで拡大したのは、東電が経営事情を最優先にし、問題を先送りしてきたからだと批判。また、「できないことをできるふりをしてやり続けてきたことは大きな罪。東電はこの2年間、時間を空費してきた」と厳しい口調で締めくくった。